君と夏の日を
羽弦トリス
君と夏の日を
今週、45歳になる。
もう、オジサンですな。変な咳はするし、口臭はキツいし。
そんな、私でも青春時代がありました。多感な時期。
こうして、目をつむると青春時代を思い出します。
さて、目をつむってみましょう。
1996年、夏。
春に同級生の女の子から、熱烈なアタックを受けて付き合う事になった。
可愛くて、頭の良い女の子だった。
私はまだ、高校生なのに友達とキョンシーごっこをしていた馬鹿。
その女の子と夜に公園で話した。
進学の話し、周りのカップルの性的会話。
あれは、6月。
公園のトラックを手を繋いで一周歩き、別れた。
7月。夏祭りに行った。彼女には遠い場所の会場だったので、1人で行く。
そこに、同級生の女の子が。
2人並んでかき氷を食べた。
「まだ、ずんちゃんとキスしてないの?」
「うん。まだ、付き合って半年だし」
「じゃ、わたしで練習してみる?」
今の私なら、舌技の限りを尽くしてキスするだろう。
だが、純粋な私は彼女の提案を断った。
「羽弦君って、真面目なんだね。浮気なんて皆んなしてるよ。妹なんか中学生なのに上手くやってるよ」
「へぇ〜。僕はいずみしか眼中に無いから」
「ねぇ、たこ焼き買ってよ!」
「良いよ」
翌月曜日、彼女のいずみが怒っていた。
「羽弦君って、ミカと夏祭りで一緒にたこ焼き食べたみたいだね」
「うん。美味しかったよ!」
「そんなの、理由じゃない。2人きりなんだよね?それって、浮気じゃないの?」
「じゃ、僕は何をすれば良いの?」
「……キス」
「あぁ〜、今の時期、良く釣れるからね」
「は?」
「鱚の事だろ?魚の」
「あんた、馬鹿じゃないの?人間同士のキスだよっ!」
これは、いよいよ、大人の階段の〜ぼる〜だ!
8月、いずみと初めてキスをした。
まだ、歯槽膿漏じゃ無かったから、口臭はしない青年だった。
いずみは顔を紅くして微笑んだ。
キスが終わったら、間もなく初エッチをした。
射精できなかった。回を重ねて出そうになり、初射精は顔射だった。
遠慮するほど大胆な結果。
ある日、私はNS1でいずみはスクーターで遊びに行った。ミラーを見てもいずみの姿が見えない。引き返した。
いずみは額から、流血していた。
スクーターで大きな石で滑り、事故を起こしたのだ。
友達のお父さんがいずみを病院へ連れていった。
ヤクザみたいなオジサンが現れた。いずみのお父さんだ。
毎晩電話掛けてくる男がいると、怒っていた。
私の事だ。
いずみは一泊入院した。
休憩室で野球を観ているお父さんに、
「羽弦です。いずみさんと面会して宜しいでしょうか?」
「あぁ」
私は、回復したいずみと会話した。直ぐに帰った。お父さんにお礼を言って。
数日後、いずみが言った。
「お父さんが、羽弦君が彼氏なら許す。って言っていたよ」
と。
短い夏は終わった。
今から19年前に、いずみと別れ、直ぐに彼女は結婚した。
私も結婚した。
制汗剤でシーブリーズを使っている。青春時代の匂いである。
この匂いで昔を思い出す。
スマホも無い時代に、恋愛した我々。
あの頃は、何ともロマンチックだったなぁ〜。
終
君と夏の日を 羽弦トリス @September-0919
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