名義販売人の名取さん!
Mr.Six
プロローグ
貴方は、もし名前を変え第二の人生を送れるとしたらどうしますか?
貴方の忌まわしい過去を全て買い取ってくれる人がいるとしたら?
誰にも知られることなく、もう一度やり直せるチャンスがもらえるとしたら?
その望み、この名取が解決して見せます。
ぜひこの『名取名義販売事務所』までお尋ねください!
電話092-〇〇〇-〇〇〇〇―――
静寂が訪れる住宅街、街の活気は落ち着き始め、小さな光がポツポツと蛍のように灯り始める。
3階建ての屋根を突き破るかのようにそびえたつ電柱にはボロボロの張り紙が1枚張られている。
張り紙の前には1人の男性がもう何時間も立ち尽くしていた。
彼はSNSの被害者だ。
やってもいない、身に覚えのない事件の容疑者だと疑われ、
名前や住所を特定された。
信じていた妻や子供にも逃げられた。
仕事も失った。
彼に残された者は何一つなかった。
そんな彼でも死ぬことはしなかった。
死にたくなかった。
できることならもう一度、
人生をやり直したい。
SNSに壊された人生、
もう一度……
そう思っていた彼の目に留まったボロボロの張り紙。
そこにはこう書かれていた。
『名取名義販売事務所』―――
名義を販売?
名前を買ってくれる?
名前を売ることができる?
どういうことだ?
だが、もし本当に名前を変えることができるのなら―――
もし人生をやり直せるのなら―――
男はそのままの足でとある警官を訪ねた。
犬飼美晴(いぬかいみはる)、事件で唯一助けてくれようとした女性警官だ。
頼れるのはもうこの人しかいない。
警察署に向かうと、警官から白い目で見られた。
結局事件の犯人は別にいたのにこの有様だ。
もうデジタルタトゥーが消えることはない。
なら、せめて……
犬飼美晴は事情を察してくれたのか、一緒にボロボロの張り紙のある場所まで付いてきてくれた。
驚愕した顔をする犬飼美晴、警官である彼女も知らないなんて……
だが決めたんだ!
第二の人生を歩めるのなら、
こんな名前……売ってやる!
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