第29話
「んー」
その夜、私は海斗のために何をプレゼントしようかと考えながら、部屋の中を歩き回った。
青色が好きだという情報を頭に入れつつ、海斗が喜びそうなものを思い浮かべた。
「何がいいかな…」
私はつぶやきながら、インターネットで色々なアイデアを検索した。
時計、アクセサリー、スポーツ用品…
どれも良さそうだけど、何か特別なものがいい。
考えてみれば…
海斗のこと何も知らない。
好きな食べ物も、音楽も、服装もなんにも。
ふと、私の目に留まったのは、手作りのブレスレットのキットだった。
青色のビーズが美しく輝いていて、これなら海斗も喜んでくれるかもしれないと思った。
「これだ!」
私は思わず声を上げた。
手作りのプレゼントなら、私の気持ちも込められるし、何よりも特別感がある。
次の日、学校が終わった後、私はそのキットを買いに行った。
家に帰ると、早速作り始めた。
ビーズを一つ一つ丁寧に通しながら、海斗のことを思い浮かべた。
「喜んでくれるかな…」
私は少し不安になりながらも、手を動かし続けた。
完成したブレスレットは、青色のビーズが美しく並び、シンプルだけど上品なデザインだった。
土曜日が近づくにつれて、私はますます緊張してきた。
海斗にプレゼントを渡す瞬間を想像するたびに、心臓がドキドキと高鳴った。
そして、ついに土曜日がやってきた。
家まで迎えに行くって言ってくれたから、
私は家の前で立って海斗を待った。
鞄の中には丁寧にラッピングしたブレスレットの箱が入ってあった。
「雫!」
海斗の声が聞こえ、私は振り返った。
彼が笑顔で手を振りながら近づいてくるのを見て、私の緊張は少し和らいだ。
「お待たせ」
海斗が言った。
「ううん、私」
私は微笑んで答えた。
二人で歩きながら、私は心の中でプレゼントを渡すタイミングを計っていた。
駅に向かう道は穏やかで、午後の柔らかな光が私たちを優しく照らしていた。
「今日はどこに行くの?」
「秘密」
と海斗は笑顔で答えた。
その笑顔を見ると、私の緊張も少しずつ解けていく気がした。
駅に着くと、私たちは電車のホームに向かった。
電車が来るまでの間、海斗と並んで立ちながら、私は鞄の中のブレスレットの箱をそっと確認した。
いつ渡そう…
食事が終わった後がいいかな、それとも…
「どうかしたか?」
海斗が心配そうに尋ねた。
「え?あ、なんでもないよ」
私は慌てて答えた。
「本当に?」
海斗が疑わしげに見つめる。
「うん、本当に」
私は笑顔を作った。
電車がホームに到着して、私たちは乗り込んだ。
車内は混んでいて、座ることができなかったので、二人で立ったまま窓の外を流れる景色を見ていた。
私は再びプレゼントを渡すタイミングを考えた。
喜んでくれたらいいなって、
海斗の喜ぶ姿を想像して、温かい気持ちで満たされていたのに、
「...っ、」
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