第27話


「それって、」

私は心の中で期待と不安が入り混じる。


海斗の言葉が何を意味するのか、胸が高鳴るのを感じた。


「あの勢いでそんなこと言われたら…勝たないと呪われると思って焦った」


なんじゃそりゃ!

私は魔女か!


期待した私がバカみたいじゃない!


「は!?何よそれ!」


私は驚いて目を見開いた。


それを見た海斗が、


「ははっ!おもしれぇ顔」

と笑いながら言った。


おもしれぇ女ならぬおもしれぇ顔だと…!?

ちょっと待って、それってただの悪口じゃん!


私は一瞬ムッとしたが、海斗の照れ隠しだと気づき、少し微笑んだ。


うん。照れ隠しってことにしておこう。


「もう、失礼しちゃうわ」

私は小さくため息をついた。


彼の言葉に少し傷ついたけれど、その裏にある優しさを感じ取った。


「でも、本当にありがとう。お前が応援してくれたから、最後まで諦めずに頑張れたん」

海斗が真剣な表情で言った。


海斗って急に真剣な表情をするから、心臓が持たない。もっとかっこいいって自覚持って欲しい。


私は、照れしまって思わず目をそらした。


「うん、私も…応援してよかった」


心の中で、彼の言葉が響き渡り、私の頑張りが報われた気がした。


一瞬の沈黙が流れた。


けど、その沈黙は心地よいものだった。


海斗の隣にいることが、こんなにも幸せだなんて。

あの時は思ってもみなかったのに。


「来週の土曜日空いてるか」

突然の質問に、驚いて


「え?」

思わず聞き返してしまった。


「その、今日のお礼に飯でも奢る」

海斗が少し照れくさそうに言った。


「え、いいよいいよ」

私は慌てて手を振った。


この前だって、結婚祝いのプレゼント探しについて行っただけなのに、ご飯ご馳走してもらったし。


なんか貰いすぎな気がする。


「俺と出かけるの嫌か?」


嫌なわけない…!

って言ってしまいそうになったけど、どうにか我慢した。


「そうじゃなくて、そんな大したことしてないのに、申し訳なくて」


私は、海斗がそんなことを言ってくれるだけでも嬉しいのに。


「いいから。空いてんだよな?」

海斗が真剣な表情で確認する。


「うん、空いてるけど…」

少し戸惑いながらも答えた。


「じゃ、そういうことだから。また学校で!」


海斗が笑顔で言い残し、去っていった。


私はその場に立ち尽くし、心臓がドキドキと高鳴るのを感じた。


彼の言葉が頭の中で何度も繰り返され、自然と笑みがこぼれた。


来週の土曜日…それって、デートってこと?


心の中で何度もその言葉を反芻しながら、私はその場を後にした。



海斗との時間が、これからも続くことを願いながら

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