第16話
「てかお前がなんでここにいるんだよ」
「あ、そうそう。差し入れ持ってきたの」
差し入れ持ってきただけなのに、まさかこんな大事になるなんて思わなかった。
「は?差し入れ?」
「はい、どうぞ」
そう言って、エナジードリンクとはちみつレモン
を手渡した。
「なんでレモン?」
「はちみつレモン。疲労回復の効果があるって書いてたから」
「へぇ、調べたんだ」
なんか、ニマニマして見てくる。
ムカつく。
「まぁ?どうせやるなら完璧にやろうと思っただけで?別にあんたのためとかじゃなくて、ほら、一応彼女なんだからそれなりのことしてあげてもいいかなって思っただけだし?」
駄目だ、喋れば喋るだけボロボロになる。
恥ずかしい。
「ふーん。どういう風の吹き回し?」
「な、何よその言い方!」
せっかく優しくしてやったのに
「冗談。ありがと」
「っ、」
海斗が…初めて私の前で笑った。
笑った顔、かわい…くなくなくない。
「あれ、海斗が部室に女子連れ込んでるぞー!」
「嘘、あの海斗が!?」
次から次へと。今度は誰だ。
「もしかして、君が噂の彼女ちゃん?」
また聞かれた。
こういう時に感じる。
やっぱり海斗って人気なんだなぁって。
「は、初めまして、雫です」
そして、瞬く間に3人の男性に囲まれてしまった。
あ、この人かっこいい…
「初めまして!俺は海斗の親友の『受け取ったから、もう行け』」
はぁ?何よその言い方!
せっかく早起きして、いや、違う。今のなし。
わざわざ差し入れしててやったのに。
「ちょっと自己紹介ぐらいさせてよ。まさか嫉妬?俺以外の男の名前なんて覚えなくていいって事?!ねぇ、そういう事?!」
なんか、ちょっと翔くんに似てる。
雰囲気というかノリというか、あと顔も。
「違ぇよ」
「って、あ!海斗が美味そうなの持ってる!俺にもちょうだい」
この人、感情豊かだな。
「は?無理」
「なんで!」
「おい、察してやれよ、彼女の差し入れ他の男にやるわけないだろ」
いやぁ、こいつにそんな感情持ち合わせてないと思うけど、、
「あーそういうことか」
「別にそんなんじゃねえよ」
「はいはい」
なんか楽しそう。
仲いい友達もいたんだ。
「…良かった」
「え?」
「あ、すみません、その、、海人にちゃんと仲いい友達がいて良かったなって。そういう話してくれなくて、勝手に心配してたんですけど、杞憂でした」
私の知らない暗い世界の中でも、ちゃんと分かってくれる友達がいる。
海斗は独りじゃない。
「…別に、心配される筋合いないし」
「あ、海斗が照れてる!」
照れ、てるのか?
私にはよく分からない。
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