第131話 エレノアさんと人魚の村…
そして…なぜか人魚の村だ。
アイリスさんとユーニスの住むところ。
僕が塩と魚介を仕入れる村…
エレノアさんが着たいと望んだ…
何故?
海の側。
波の音がやけに大きく聞こえる。
村にはあばら家が並ぶ。
さびれた村だ。
だが、人魚なので、もしかしたらこれでいいのかもしれない。
海の中でも生活できる種族だ。
人間と同じような家が必要ないのかもしれない。
僕はこの村に月一くらいで訪れ、魚介類の購入をしている。
代りに村の野菜を渡している。
物々交換みたいになっている。
商売の規模はそれほど大きくないと思う。
それでも僕が買い付けをするようになって、村人たちも少しだけ以前より快適に暮らしているらしい。
盗賊もいなくなったしね。
そう、アイリスさんが嬉しそうに笑っていた。
そのときにアイリスさんの自宅にもお邪魔する。
ユーニスとも仲良しだ。
だが、「パパ」と呼ぶのは直っていない。
それはちょっとなあ…
近隣住民に、要らぬ誤解を産むかもしれない。
そんな村に、エレノアさんか…
大丈夫だろうか?
「ここが人魚の村なのね…ほんとに人間と変わらないのね。知らなかったら、人間と思っちゃうわね」
村には老人と子供がいる。
働き盛りの年齢は、先の盗賊団事件で数を減らしている。
なかなかに大変そうだ…
ただ、彼らはたくましく生きている。
魚を貝を獲り、海藻を採取する。
食べるだけなら問題ない。
余った分を街に売り、細々とした生活用品を買う。
貧しいながら生きている。
それは子供たちの笑顔が答え。
…人魚は元々男性が少ない種族らしい。
…人口を増やそうと積極的に他種族の男性を襲うのがねえ。
人魚、肉食女性が多いんだよね。
人魚の女性は美人なので、コロコロと人間の男性が捕まるらしい。
が、この村が貧しいので、男性が定住することは珍しいみたいだ。
僕が魚介を買いに訪れると複数の女性からお誘いを受ける。
いや、応えないよ。
不倫はダメだ!
アイリスさんとそのお母さんからの圧も強いんだよね…
メーリーアからの圧力もあったりして…
水属性は肉食女子が多い。
「あ! パパだ! おかえり!」
他の子どもと遊んでいたユーニスが僕に気づく。
トトト、走ってきて抱き着く…
エレノアさんがいるけど、子供には優しくしないといけないよなあ…
そして、ユーニスは可愛い。
「ユーニス、こんにちは。元気だったかい?」
「うん! 元気! パパはまたすぐ帰っちゃうの?」
「ああ…忙しいんだよ」
「もっと一緒にいたいよ!」
寂しそうに目を潤ませる。
…いやあ、この年齢から男を手玉に。
年上キラーか…
しかし、僕には妻がいる。
「ごめんね、ユーニス」
冷や汗ものだ…
隣にエレノアさんがいる。
そう、今日は妻が一緒なんだよ、ユーニス…
「…へえ…ルー君、ユーニスちゃんにパパって呼ばせてるんだ…」
「ち、ちが…これはね、ユーニスが…」
「あ! ママだ! ママー、パパが帰ってきたよ!」
ユーニスはアイリスさんのところに走っていく。
アイリスさんの手を握り、こちらに引っ張ってくる。
「この人がアイリスさん…美人ね…」
彼女はあの事件のときより、ずいぶん健康的になり、そして美人度が増している。
肌のツヤ、髪のツヤが良くなっている。
柔らかく、優しそうな笑顔…
そして、未亡人の色気、かげ…
これは、大概の男が落ちるだろう…
「おかえりなさい、アナタ。ご飯にしますか、それとも私にしますか?」
…そして、とても積極的な女性…
エレノアさんを見つけて、早速の先制攻撃か…
再度言っておくが、僕は手を出していないからね!
やっぱりエレノアさんを連れてくるところじゃなかったよ!
心臓がキュッと縮む。
寿命がガリガリ削られていくわ!
「…ほんと…人魚って積極的なのね…」
エレノアさんは…
なぜか苦笑。
…怒られるんじゃなくて良かった…
アイリスさんの家にいる…
胡坐をかいて座っている。
膝の上にはユーニス…
とても可愛い女の子で、僕に懐いている。
純粋で、無邪気。
本音は、もう僕の子供でいいんじゃないか、と思うくらいだ。
良いんだけど…
今はちょっと…
「初めまして、エレノアと申します。ルーカスの妻です」
「遠いところをわざわざ、お越しいただき、ありがとうございます。ルーカスさんから手を引けという話でしょうか?」
直球なアイリスさん…
だけど、エレノアさんは優しく答える。
「そうじゃないのよ。私は別にアイリスさんがルー君の奥さんになってもいいと思ってるの」
え、エレノアさん…
何故、妻を増やそうとする?
「…どういうことでしょうか?」
ほら、アイリスさんも不思議そうな顔をしている。
ユーニスは僕はパパだよね、ママのパパだよと、別の不思議そうな顔をしている。
「アイリスさんも中途半端な立場じゃ大変でしょう。ルー君は私以外にも複数の奥さんを持っているんですよ。私を含めて5人。なら6人になってもあまり変わらないかなって思うんです」
「…しかし、エレノアさんには利益はないですよね」
「得ではないですけど、別に良いじゃないですか。何となく、毎月、夫が愛人みたいな美人の女性のところに通うより、スッキリするし」
「ルーカスさんは、残念ながら私に手を出したことはないのですよ…」
「まあ、ルー君はそうよね。でも、ユーニスちゃんもその方が良いと思うし、アイリスさんはルー君の奥さんになるのは反対? それとも複数の奥さんの中の一人になるのは嫌?」
アイリスさんはエレノアさんを見つめる。
僕の上のユーニスを見る。
ユーニスは良く分かっていないけれど、ニッコリと嬉しそうに笑う。
アイリスさんは、ふ、と息を吐き、そして…
「エレノアさんは強い女性ですね。私の負けです。私もあなたたちと同じ、ルーカスさんの奥さんになります」
…妻が増えた。
妻が妻を増やした?
何でこうなる?
人生は不思議…
もしかしたら、エレノアさんのこの度の目的はコレだった?
いや…途中も楽しんでくれていたはず。
温泉も良かったし、火の蝶も喜んでくれた。
そうだよね。
「パパはパパだよね。だから、ママはパパのお嫁さんだよね?」
ユーニスが首を傾げる。
「うん…まあ、そういうことでいいか…」
ユーニスの頭を撫でる。
猫のように目を細める。
子供の髪の毛って細くて柔らかくて気持ちがいい。
一緒に娘もできたってことだね。
初めての子供か…
僕の子供じゃないけど、可愛いものだ。
「ですが、私たちはここで暮らすことしかできません。森では暮らせません。ルーカス様は森で農家を営んでいるんですよね。こちらでは生活できませんよね?」
「うん。ごめん。僕が住むところはここじゃない」
僕は森の村で生きていく。
そう決めているから…
「ルー君は移動魔法が使えるから、夜だけこっちに来ればいいのよ。今までより頻繁にここに来るだけ」
…エレノアさん?
僕の意見が全く入っていないんですが…
「ね、ルー君。それでいいでしょ」
「…はい。それでいいです」
ああ…
きっと、妻には逆らえないのね。
みんな同じさ…世の中の夫たちは。
きっと女性の方が状況が良く見えていて、現実的で、だから彼女たちに従った方が合っているんだ。
だけど、僕にも引けないところはあるはず!
そのときはちゃんと意見をする!
それは…少なくとも今じゃあない。
そういうことだ。
ユーニスが、「やったあ! パパともっと遊べる!」と喜んでいる。
アイリスさんが「パパがいても、夜は早く寝なさい。そうしないと妹ができないからね」と言う。
うーん…
夜を二人だけで過ごしたいか…
水系の女性は夜が強そうだよなあ…
…大丈夫か? 僕。
これは幸せか?
前世の僕だったら、リア充野郎、死んでしまえ、と言わないまでも、思ったことだろう。
しかし、当事者になると色々と大変なんだぞ、前世の僕よ。
ハーレムはお話の中だけで十分。
現実はダメだ。
僕の家は、ほぼ女性か…
男性は僕一人。
村に帰って、クリフ君とブライアンさんと新郎会を開催しよう…
たまには男同士でつるむのも、息抜きにいい。
忘れてた。
水の精霊メーリーアはこれで満足だろうか?
彼女はアイリスさんを推していたから。
しかし今回の旅には付いてきていない。
「遅いですわ。でもいいでしょう。子供は一番早くつくってください」とか言うのだろか?
僕とアイリスさんの子供、嬉しそうに子供の周りを飛ぶメーリーア。
また、それも一つの幸せの形か…
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