第129話 時代劇ってこんな感じでいいんだよね?

「で、どうすんだい、兄ちゃん」


タカさんが面白そうにしている。

なんか、その余裕が気に障るなあ…


「タカさんがどうにかしてくださいよ。自分の国の、街のことでしょう」


「おらあ、しがない浪人さ。義理と人情は持ち合わせてるが、権力と金はねえ。お上をこき下ろして、酒が飲めればいいのさ」


いやあ、いい趣味、いいご身分ですね!

動けや、あんた!

強いんだから。



「ルー君、どうするの?」


うちの妻が心配しているので、僕が処理しますよ。


「…ゲンジさん、借金はいくらですか?」


ゲンジさんの借金の額…

僕、払えるんですよ。

結構お金持ちだったりするんです。

この冬、街で魔獣を売ったり、錬金術強化の練習用で作ったいらない武器を売ったり。

あとは、ティーレの実家でちょっとお小遣いをもらったり…

お金が増えました。

でも、村ではそれほど使う必要がないんですよ。

と言うことで…


「この店売ってくれませんか、その金額で」


「ルーカスさん、それは…」


ハルさんが驚きの声を上げる。


「ああ、ゲンジさんとハルさんはそのままここで働いてください。雇われになりますが、まあ、店を取り上げられるよりはましでしょ。で、お金が溜まれば買い戻しても良いし、そのまま雇われ店主でも良いですよ」


「何で…俺の店なんかにそんな…」


「料理が美味しいからです」


ゲンジさんの料理は美味しい。

それが無くなるのは困る。

まだリネットも連れてきてないし、ミラベルさんもか。

自分でも簡単なものは作れるけど、やっぱりお店で食べるのもいいよね。

なんか同じレシピで作っても同じ味にはならないんだよね。


「ただ、今後一切博打は無しですよ。やったら解雇します」


まあ、人生やらかすことはある。

挽回するチャンスは必要だ。

ただ、やらかしを繰り返すのはダメだ。

反省して、真面目に働いてほしい。


「ありがとうございます! 私が父をしっかりと監督して、決して博打はさせません!」


ハルさんはゲンジさんの頭に手を乗せ、お辞儀をさせる。

90度。

ハルさんが頼もしい。

彼女を悲しませないようにゲンジさんには頑張ってほしい。



「なかなか強引にいくもんだね」


「悪いですか?」


タカさんが笑う。


「いいじゃねえか。俺は好きだぜ。で、これからどうする?」


素直に金を返したからって終わりになるのか?

まあ、ならないだろうね…


「賭博は違法ですか?」


「ああ、違法さ」


「ゲンジさんは捕らえられる?」


「いや、いいんじゃねえか。俺は岡っ引きじゃねえし、何も聞いていねえし、見てねえよ」


…ふーん。

この人、権力に近い人じゃないかと疑っているんだけど…

時代劇だとそんな感じだよね。

まあ、いいさ。


「ちょっと強引に行こうと思います。組織を潰しておきましょう」


「おい、おい! 穏やかじゃねえな」


「あ、タカさんも手伝ってくださいよ。僕、組織の場所しらないですから」


「なんで、俺が?」


「この国の問題を外の国の人間に投げないでくださいよ。見てないで、手を動かしてください!」


「…あん、面倒くせえ…ま、しょうがねえか」


まったく…

強い癖に何もしない気なんだから…

いや…

僕が何かしてしまっているから、見守る立場を演じているだけかもしれないな。

僕がいなければ、動いていたかもね。


さて、面倒なのでサクッと終わりにしよう。


エレノアさんはアルベルタに護衛をしてもらう。


タカさんに案内をさせ、サクジを引きずって賭博場へ。

大通りからだいぶ奥に入ったところ。

目立たない屋敷。

その中、数人の男達…ほぼ裸の女性たち…

煙る部屋。

…変な匂いがするな。


「…こりゃあ、麻薬か…」


タカさんがつぶやく。


「この国は麻薬は合法?」


「違法だよ」


ダメダメだ。

この組織は、普通に捕まって終わりだろう。


「多少、手荒な真似をしてもいいですか?」


「ああ、もういいや…許す」


タカさんに許されました。

では、開始しますか。



麻薬は体に悪いので、光魔法のリジェネを発動。

ついでにタカさんにもかけておく。


「おい、こいつは…」


「ただの回復魔法ですよ」


と言うことにしておく。


部屋に踏み入る。

和式の家なので靴を脱ぐ文化のようだが、まあ脱ぐ必要はないだろう。

礼儀知らずでいこう。


「すみません、ゲンジさんの借金を返しに来ました」


そして、サクジを突き出す。

まだ精神が回復していないサクジは床に倒れ込む。


「なんだてめえは!」


一番奥のボスらしきヤツが吠える。


「だから、ゲンジさんの借金を返しに来たんですってば」


「舐めてんのか! サクジをやっておいて、金を返す気ねえだろ!」


おお、まともな意見。

だけど、僕は一応お金は返そうとしている。

借金をしたのは事実だし、それは返済しないといけないよね。


「おい、野郎ども! このふざけた野郎をやっちまえ!」


まあ、相手が受け取る気がないのなら、返さなくてよいかな。

…あれ?

これって、タダでゲンジさんの店を貰っていない?

良くないなあ…

まあ、いいか。

そういうこともあるってことで。

そして、向こうから手を出してきたんだ。

僕は自己防衛しただけ。

過剰防衛になるかもしれないけど、まあ、しょうがないよね。


「兄ちゃん、お人好しっぽいが、結果がえぐいことになってるぞ」


タカさんが何か言っているが無視だ!



それでは精神魔法で行こうか…

この国では人間に使っても合法らしい。

そして、麻薬なので、それでイってしまったということにできるかもしれない。


男達が日本刀で襲い掛かってくる。

まあ、身体強化もされていない相手だ。

実力差は明確。

一瞬で、襲ってきたすべての男たちに精神魔法を撃ちこみ、無力化する。

つまらないものだ。


さて、残りは二人。


ボスと、侍か…


「先生! お願いします!」


…先生ね。

…定型すぎる。

人斬りだだろうか?

笑っている。

人を斬れることが楽しいのだろうか。


先生は刀に手をかけるが、抜かないで構える。

ああ、居合か。

身体強化もしているし、武器強化もしている。

腕は確かなようだ…


ただ、何故、僕との実力差が分からない?

この人も麻薬で頭にモヤがかかっているんじゃないか?


先生の攻撃範囲に踏み入れる。

その瞬間に先生の抜刀。

その刀をギリギリでかわす。

僕には結界もあるし、これぐらいの攻撃なら見切れる。


攻撃終わりの腕を斬り落とす。

これで今後人斬りはできない…

いや、隻腕でもできるか。

残った腕も斬っておこう。

多少生活に支障が出るが、自業自得と言うことで。


残ったのはボス。

親分のみ。


「ひぃぃ…命ばかりはお助けを!」


命乞いをする。

親分としての威厳は?

…僕は一人も殺していないんだけどね…


精神魔法を入れて終わり。


問題はこいつらをどうするか、だ。


「じゃあ、タカさん。後はよろしくお願いします」


後処理はすべてタカさんにお任せ!

僕はこの国のことを知らないし、出来る人に任せるのが良い。

全て僕がやる必要はないと思う。

きっとその方が良い結果になるはずだ。

人間一人の力でできることなんて限られているんだ。

自分一人ですべてできると考える方がおかしい。

そして、僕はなるべく楽をしたい。


「チッ…面倒事押し付けやがって」


「タカさんだって、ゲンジさんの料理食べられなくなるのは嫌でしょう」


「兄ちゃんもずいぶんイカレてやがる…人間の人生と料理とを同じレベルで語るたあな」


だってしょうがないじゃないか。

僕はゲンジさんに初めて会った。

思い入れがあるのがゲンジさんの料理くらいなんだから。


こっちの賭博場の方はもっと思い入れなんて無い。

潰れようと、どうでもいい。

鉱山送りでも、島流しでも、打ち首でも。


「しょうがねえなあ。まあ、十手持ちに知り合いがいるから、そいつに頼まあ」


ほらね。

思った通りタカさんは顔が広い。

これで解決!



…そういえば、今言うことじゃないけど…


「タカさん、サヨちゃん女の子知ってます?」


「…サヨ? ありふれた名前だからな…」


「おかっぱ頭の10歳くらいの少女なんですが」


「……まあ、それでも沢山いらあな。で、サヨがなんだって?」


「ああ。この前会ったんですが、不思議な子供だなって思って。両親とかどうしてるのかと」


「兄さん、人さらいじゃねえだろうな」


「そんなことしませんよ。それに、もし僕がそうだとしても『人さらいです』って答えますか?」


「…ま、俺も自分の目には自信を持ってんだ。兄さんはそんな奴じゃないねえ」


「そうです。そんな面倒なことはしませんよ」


「…ま、そういう人間だよな」


タカさんに僕はどう映っているのか?

結構ひどい人間になってないか?

ま、それも自業自得か…

武力でもって、問題を解決すればね。

…人助けをしたのにね。

割に合わない。


まあ、いいさ。

旅先で少し暴れたって、問題ない。

評判がどうでも関係ない。

旅の恥は搔き捨て?

ちょっと違うかな。



さて、エレノアさんとの新婚旅行を続けよう。

うーん…タカさんとは今後も会う気がするなあ…

どうでもいいけど。

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