第121話 お米を味わうにはおにぎりが最強です
和食的な食材の買い出しも終わり。
村へと帰った。
帰りは楽なもので、転移の魔法で一瞬だ。
錬金術所の隣に転移魔法用の部屋があり、一度そこへ。
その部屋に別の転移魔法陣があり、次の部屋へ。
地上への階段があるだけの部屋になる。
階段を上ると、森の中、村の外壁の近くと出る。
これは各地に設置している転移の魔法陣を間違って使われた場合の保険としてだ。
僕しか使えないような魔法陣にしているつもりだが、何かあるかもしれない。
村へワンクッション入れて、リスクを低減している…つもり。
僕一人なら直接村へ帰れるんだけど、フィオナさんとティーレがいるし。
もし、それをして、誰かに見られたら大変なので、こちらを使用した。
結構いい方法かもしれないと思っている。
「やー、帰ってきたね!」
「懐かしい感じがしますわ」
…色々あったからな…
エルリックに会った。
魔物退治を手伝わされた。
買い出しをした。
島へ観光にいった。
不思議少女と遭遇。
ときたま、あちらに続いていそうな洞窟…
なんか、色々フラグを立てまくって帰ってきた気がする…
…まあいい。
楽しかった。
今はそれでいいじゃない。
未来のことは考えない、考えたってしょうがない。
さあ、久しぶりの我が家。
森はもう雪が積もり、白く染まっている。
村の家々も屋根に雪を被っている。
雪かきされた道を歩く。
寒いが、子供たちが雪合戦して遊んでいる。
「あー、ルーカス! 久しぶり!」
「おー、ドナルド、元気にしてたか?」
「元気だ、元気! お前は元気すぎて少し落ち着きなさいってママから言われるくらい元気だ!」
子供は元気が一番だよね。
いいね、村に帰ってきた感じがする。
だから僕に雪玉を投げるのは止めなさい。
「ただいま」
帰宅。
時刻は昼過ぎ。
みんなご飯を食べ終わって少しお茶をしていたようだ。
ハーブティーの香りがする。
「ルー君! お帰り!」
「ルーカス、おかえりなさい」
エレノアさんとリネットが出迎えてくれた。
エレノアさんがトトトと使いづいてきて…
「えい」
抱き着いてくる。
そうえば、新婚さんだったよね。
彼女とはずっと一緒に暮らしていたから忘れがちだけど、ちょっとスキンシップが足りないか。
優しく抱きしめて、ヨシヨシと背中をさする。
「それズルい! 私だって心配したんだからね!」
リネットの順番待ち。
ああー…
新婚さんだね。
ハーレムだけど…
帰ってきたなあ…我が家。
「おー、クッキーだ! いただきます」
フィオナさんが早速クッキーをつまみながら、僕とティーレのお茶を淹れてくれる。
リネットが旅の結果を確認する。
「で、成果はどうだったの?」
「うん。問題ないよ。期待通りの物が買えたよ」
「それにしては日程が延びたけど?」
「それは…」
あ、エルリックの事を話すのだったら、ネルもいた方がいいかな。
ネルを研究室から拉致してくる。
昼食終わって、昼寝をしてたね…
あそこは空調が聞いているので年中快適。
地下室なのだけど意外に過ごし易い。
おい、優雅な生活だな…
「で…エルリック? 一緒に死んだ後輩で勇者だあ? なんだ、あっちが主人公かよ」
寝起きのネルは不貞腐れ気味で、でも興味があるのだろうね。
向こうの人間の話だし。
「誰だって人生の主人公だって」
「そういうのはいいんだって! めんどくせえな! で…強くて、イケメンか?」
「うーん、イケメンではあるね。ただ亀を倒せなかったからなあ…もう少し頑張ってってところ? フィオナさん、実際どうなの? 召喚者と比べて」
「そうね…私もそれほど正確に分かるわけじゃないけど、たぶん樹、私のときの勇者ね、それと同等かな。もう少し成長すればね」
なるほど、魔王を倒した勇者と同等ね。
主人公だ!
対抗馬として魔王が出てくるのかな。
どのように発生するのか、もしくはただの魔物が成長するのか…
まあ、エルリックに頑張ってもらおう。
「本格的にアッチが主人公じゃねえか。いいのかよ、ルーカス」
「僕は主人公してるつもりは無いよ。それに面倒事をエルリックが引き受けてくれるなら、それでいいじゃない?」
「ほんと、やる気ねえな」
「じゃあ、ネル、やる?」
「やるわけねえ!」
まあさ。
僕らはこれくらいでいいのだろう。
それに…
勇者がやる気を出しすぎるというのもあまり良くない。
大体が空回りして、いい結果にならなかったりする。
エルリックも結構適当だから、ちょうどいいんじゃないかと思ている。
「日本みたいな島があったあ?」
「そうそう。ネルも行ってみる?」
「…いかね。お土産くれ」
ま、期待通りの反応だ。
この引き籠りめ。
「…へえぇ…観光を、してきたの?」
おおう…
エレノアさんの目がすわっている。
これはやばい…
「…エレノアさんとリネットも一緒に行ってみる?」
「ええ、行きましょう、リネット」
「まあ、面白そうね。私、村を出たことないから、初めてだわ」
…なんとか、エレノアさんの怒りを回避できた、だろうか?
難しいよ、ハーレム。
そのうち禿げるぞ、僕。
いや、光の回復魔法でなんとかなるか。
髪が生えるとなると、光の回復魔法を求める、権力者のおじさんたちがいそうだね。
さすがに、聖女に髪を生やすだけに、奇跡を求める王様はいないと思いたい。
前世、ちなみに薄毛でもモテる国はあるらしい。
ヨーロッパでは特に薄毛がマイナスにならない。
むしろ、男性ホルモンが多いということでプラスになることも…
まあ、余談だ。
薄毛になったら、髪を短く刈り込もうかな?
さて、本題だ。
「見ろ、ネル! これが米だ!」
「ああ、米だな」
「ノリが悪いぞ」
「パンも結構好きだからな」
「日本人の心はどこへ行った!」
「転生したから日本人じゃねえな」
「確かにそうだが、冷静すぎるよ、ネル…ねえ、フィオナさん」
ネルのノリが悪いのでフィオナさんに話を振る。
フィオナさんは首を傾げる。
「私、今回の旅行で結構食べたから、欲求が満たされちゃったかも」
フィオナさん…
「ルー君、これどうやって食べるの?」
食いついてくれるのはエレノアさんくらいか…
転生者も長く生きると日本人の心を忘れるものか。
悲しいことだ…
と言うことで、早速釜でご飯を炊いてみる。
まず、米を研ぐ。
前世では精米技術が進んで、洗う程度で良くなっていた。
こちらではちゃんと研いで、糠、ゴミを落とす。
そして、浸水だ。
水に浸けて、水が米に浸透するのを待つ。
これが重要。
ちゃんとしないと芯が残った、食感の悪いご飯が炊きあがる。
そして、すでに浸水済みのお米がマジックバッグにある。
それと今回の物を交換。
3分クッキング方式だ。
釜にお米を入れ、水を入れる。
水加減は…炊飯器ってメモリがついていたからなあ…
ま、こんなもんか。
さて、火加減が重要になる。
で、どのように調整するかという話。
村の調理かまどはレンガで囲んで下に炭を燃やし、上に鉄板を敷いていて、その上でフライパン等で調理ができるというもの。
村人の多くが火魔法を使えるので、その火加減の調整は問題なし。
火魔法が下手な人は中の炭を別の容器に出せば、弱火になるし、調節は可能だね。
ちなみに、うちの調理かまどは三つの部屋を持つ、ちょっと高級品。
ご飯を炊いている横でおかずの調理もできるし、便利だよね。
ということで、ご飯を炊き始める。
中火?
いや…分からん。
適当な火加減にかける。
失敗しても、徐々に上手く炊けるようになれば良い。
勿体ないけど…
沸騰してきたら、弱火にする。
ここから…たしか15分程度?
いやあ、炊飯器で炊いていたので難しいね。
土鍋でご飯を炊くブームとかもあったけど、面倒だからやったことないし。
パチパチと音がし始める。
たしか、ここで火を止めるんだったか…
そこから蒸らし。
15分、待つ。
…恐る恐る蓋を開けてみる。
「さすが、ルー君! 食に関しては真面目!」
「まあ、ザ・ご飯だな」
「これがご飯ですか…ふっくらと、大きくなりましたね」
「ちょっと、独特な匂いがするわね…」
「ルーカス様、『おかず』がありませんが、どのように食べるのでしょうか?」
フィオナさん、ネル、エレノアさん、リネット、ティーレの感想だ。
ご飯はふっくらと炊きあがっている。
しゃもじで優しく混ぜる。
不要な蒸気を逃がすらしい。
「さて、ティーレ君。どうやって食べるかだったね」
「ルーカス様、変なキャラになっていますが…素敵です」
「おにぎり、という料理があるのだよ!」
おにぎりを料理と言うかは、人それぞれの解釈がありそうだ。
僕的にはご飯を炊いただけでも料理だと思っている。
なら、おにぎりは当たり前に料理だ。
一定以上の手がかかっていないと料理じゃないとする人もいるようだけど、僕的には美味しく食べられればいいじゃないか、という認識。
…さすがに、畑で、もいだトマトをそのままかじるのは料理じゃないか。
美味しいけどね。
ちなみに、炊き立てのご飯は猛烈に熱い。
とてもおにぎりを握れたものではない。
が、この世界、身体強化がある。
身体強化は防御力も上昇し、熱耐性も上昇する。
難しいのは力加減だが、僕は子供のころから身体強化を使っている大ベテランだ。
心配はない。
まずは塩おにぎりだ!
少し塩を手にとり、手の平に広げる。
この塩は人魚のアイリスさんが作ったもの。
塩のとがったところが少なく、甘みもほのかに感じる、美味しい塩だ。
味付けが塩のみなので、塩が重要!
ご飯は軽く握る。
ふんわりと。
握るというよりまとめる感じ。
形は丸でいいさ。
これね。
ご飯粒が潰れないでいいんだけれど、食べるときに崩れるので、注意が必要。
ということで、出来上がり!
次も素早く握り、人数分を作る。
では、食べてみようじゃないか!
うむ。
これは、なかなか!
程よい塩で、ご飯のおいしさ、甘さが引き立つ。
シンプルにして、もっともご飯の味を感じられる食べ方。
それが塩おにぎり!
「やっぱり、おにぎり、美味しいわね。何か懐かしいわ」
「まあ、悪くねえけど…」
「シンプルだけど美味しい」
「食べてみると意外に良いわね」
「そうですか! 塩だけというのもアリなんですわね!」
ネルはもっと味が必要か…
このご飯のおいしさをダイレクトにという料理の良さがわからないとは、まだまだだな。
では、もう少し進めてみよう。
ちょっと実験的な…
前世で、聞いたことのある。
味噌おにぎりだ。
しかも、焼かないヤツ!
味噌を塗っただけという、これまたシンプルなヤツだ!
味噌を生で食べるのかという疑問を持つ人もいるようだが…
良く考えてみて欲しい。
キュウリに味噌をつけて食べるじゃないか。
また、味噌とマヨネーズ、砂糖を混ぜただけのドレッシングも美味しい。
これも火を加えていない。
生の味噌は美味しいということだ。
さて、おにぎりを握り、味噌を塗る…塗りたくる。
これ…手が汚れるのが難点だね。
ちょっと嫌な顔をしている女性もいるけど、食べてみる!
これは…
口に入れた最初、味噌を味わう。
香り、塩気…
何故、塩おにぎりよりご飯の甘さを感じる?
そしてどこか懐かしさ…
初めてなのに。
「おおう。味噌のおにぎりって初めだだけど、結構、結構!」
「…ま、味噌ってうめえよな…」
「これが味噌なのね…すごいわね」
「手がベトベト…」
「お味噌汁とはまた別の味になりますね。お味噌とご飯はお友達ですわね」
やはり食べづらさがネックか…
なお、僕は定期的に食べたいと思いました。
お行儀が悪いけど、指を舐める。
指がおいしいね…
「ルーカス、あれだ! オムライス作れ!」
ネル…
作れじゃなくて、「食べたい」でしょ。
「オムライスくらい作れるだろ。どうせ、一人暮らしが長かったんだろ」
確かに前世ではずっと一人だったよ。
お金も勿体ないから自炊していたよ。
料理もそこそこ出来るようになったよ。
それはそれでいい経験なんだからな!
けっして寂しいだけの記憶じゃないんだからな!
そうだよ、確かにオムライスは作れる。
ああ、チャーハンも工夫したし、炊き込みご飯も試しまくったさ!
意外に充実した食生活を送っていたんだぞ。
こっちは沢山妻がいるんだからね。
エレノアさんとか、今はティーレとか、フィオナさんとか、食事を作ってもらうことが多いけど。
どっちが幸せかなんて……
確かにこっちの方が良いけどさ…
それはそれとして、ネルは「お子様舌」確定だ!
僕も「お子様舌」で、オムライスが好きだけどね。
デミグラではなくて、ケチャップのやつね!
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