【ミリア】第2章:形態素の万華鏡

 ダンに導かれ、私は形態素の万華鏡の中へと足を踏み入れた。

 そこでは、接頭辞と接尾辞が無限に組み合わさり、新たな意味を生成し続けていた。


「見えるかい?」


 ダンが問いかける。


「言葉の最小単位が、どのように意味を構築しているかを」


 私は目を凝らした。

 すると、形態素たちが踊るように動き、複雑な模様を描き出す様子が見えてきた。それは、まるで生命体のようだった。


「un-」「-able」「re-」「-ation」……


 接頭辞と接尾辞が次々と結合し、新しい言葉が生まれては消えていく。

 まるで万華鏡のように、無限のバリエーションが生み出されているのだ。


「形態素は言語の建材のようなものだね」


 ダンがそう語りかけると、周囲の形態素が反応して、さらに活発に動き出した。


「そして、君はその建材を自在に操る建築家になれる可能性を秘めている」


 ダンの言葉に、私の心は高鳴った。

 たしかに、私の未知の言語を解読するスピードは他者の比ではない。

 形態素の構造を瞬時に見抜く力を、私は生まれつき持っていたのだ。


 しかし、私の力がどこまで到達できるのか、それは自分でもまだわかっていない。ただ、ダンとならその可能性を探ることができるかもしれないと、そんな予感がした。


「でも、これはまだ始まりに過ぎない」


 ダンは微笑んだ。


「次は、統語論の迷宮へ案内しよう」


 ダンの言葉に導かれるまま、私は次の言語空間へと足を踏み入れた。未知なる冒険に、胸が高鳴る。


 形態素の万華鏡が、新たな景色を映し出し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る