美少女の霊を二人、家で養ってみた結果

@kamokira

第1話 

※全話書き上げたら同タイトルでなろうにも掲載します。

※以前書いていた

「俺の家に来た美少女が、1週間でいなくなるらしい」

の書き直しです。


ゆるーく書いていきますので、最後までお付き合い

してくださると嬉しいです!


ーーーーーーーーーーーーーー



教室の中を明るく照らす日差し、

 遮光カーテンによって遮られた紫外線。

 

 室内は22度に設定された冷房が効いているのもあり、

極めて快適だった。


 特に、夏休みの夏期講習に駆り出さる俺のような成績不良児は、

煌々と眩しい陽が照りつける中、学校まで片道35分を要し

聞いても眠くなるだけのおじさん教師の授業を拝聴しに行くから、

『涼しい』というのは極めて大切な要素なのだーー


「えぇ、、太平洋戦争ではこのように、ミッドウェー海戦の敗北を機に、

日本軍の戦況は徐々に悪化していき、その後に続くガ島(ガダルカナル島)

で補給路を断たれた陸軍の兵士たちはーーー」


 眠いーー


 一学期の歴史総合の期末テストで赤点を取ってしまった俺は、

既習範囲の授業をもう一度教えてもらうために学校に来ている。


「えー..。では、、日本本土への空襲が可能となるきっかけとなった、

米軍に占領された島の名前ーー矢場(やば)君、答えなさい..」


 50代の割に、白髪で頬はこけ、全体的に骸骨のような印象を受ける教師


 授業を真面目に受けていないと判断されたのか? はたまたこの赤点の奴らしかいない教室の中でも俺が飛び抜けて頭が悪いのか?


 教師はまるで、知性のない可哀想な人間に憐憫の眼差しを向けるかのように

俺の方を見て、ゆったりとした優しい口調で語りかけた。


「....サイパン島」

「そうですよ矢場君、正解です」


「はい..」


 俺は正直、歴史総合という時間に価値を見出せない。

教育課程とともに名称が変わったとはいえ、やる事は同じーー

ある程度頻出の用語をおさえ、ペーパーテストでそれを出力する作業ーー


 かといって俺のように暗記を怠り一夜漬けでテストに

挑めど、範囲が広すぎたためどうにもならなかった。


 俺は戦争が嫌いだ。

たくさんの人が殺戮されるのが可哀想だからとかではない。

単純に、覚えさせられる用語が多いし、カタカナばっかで分かりにくい。


 キーンコーンカーン


 学校の鐘の音と共に、夏期講習は2時間ほどで終わった。



 授業も終わり、各々が帰路へ着くーー


 この夏期講習のクラス内に、俺の友人は存在しない。


 だから、いつも一人で帰宅するーー

俺は人と密接な関わり合いを持つのが嫌いだった。

友達なんていなくても、必要最低限の事は一人でこなせるし、

協力しないと困難な課題とかには、今の所ぶち当たっていない。

だから、赤の他人と馴れ合うつもりなんて毛頭ない。


 そういう思考で、俺は高二の今に至る16年ーー

人生を不毛な娯楽で消費しながら歩んできた。


 頑張った所で無駄ーー

人生の優劣は全て生まれ持った遺伝子で決まるーー


『白線の内側までお下がり下さい』


 無機質な駅の機械音声の指示に従い、安全のために

後ろに一歩下がる。


 ファンーー


 という音と共に、俺の前には緑色のラインが引かれ、

最近流行りのネットゲームの広告写真が貼られた悪趣味な

山手線の列車が通過し、徐々に速度を落としていった。


 現在時刻は午前11時30分ーー


 夏休みという事もあり、いつもなら会社のお昼休みで

大変混雑する平日のこの時間帯も、悠久の休息に興じる

サラリーマン達の不在により車内は閑散としており、

いつもは満杯の座席の一番角の席を確保する事が出来た。


 電車のドアが閉まるーー


 太陽光を反射したビル群の白い光が、目を細めさせる。

薄汚れた空気、人の香水と汗が入り混じった不快な匂いーー

そんな場所とお別れをするかのように、電車は動き始めた。


 俺は1年前から愛用している無線イヤホンを耳にかけ、

最近お気に入りのJ-POPミュージックをスマホを媒体にしてかける。

ジャカジャカと聞こえてくる楽器の音色、一流のボーカル

外界と遮断された自分だけの世界に没頭出来る音楽が好きだ。


 内向型の人間の俺にとって、こうした自分だけの世界を作れるか

否かは、極めて重大な話だから。


 ♢


 半目を開いた状態で仮眠を挟み8分くらい経過した。

最寄りまで丁度折り返し地点あたりに差し掛かったこのタイミング。

人の入りは相変わらず少ない車内だが、隣に誰かが座っている。


 他にも席は空いているのに、何故ピンポイントで選んだのか理由は

定かではない。そして、あいにく前を向いている俺は、その隣の席の人間が

どんなやつか分からない。


 肩と肩が触れ合っている事から、

かなりの距離で密着されているのが考察でき、正直邪魔臭い。

それにフェロモンか何かの匂いらしいのだが、とにかく女性特有の

甘い香りが鼻腔を刺激してくる。


「あの..」


 するとその時だった。声優さんも顔負けの美声で、隣に座る何者かは

声を発した。頬に息がかかったから、多分俺の方を向いている。

つまり、俺に話しかけたという事か..?

見ず知らずの人とあまり話したくない気持ちをグッと堪え、

俺は自分から見て左手、例の女性がいる側を向く。


 そこにいたのは、何物も通過さねぬようなきめ細やかな肌、

平行二重に俺の顔の像を結んだ黒の瞳、そして地毛かはたまた染めたのか?

日本人としては珍しい少し茶色がかった髪を持つ美しい女性だった。


 類推するに、年の頃は俺と同じ高校生か、もしかしたら年上かもしれないが、

声のトーン、落ち着き具合からして、恐らく後者の可能性が高い。


 彼女の着ているの服は制服ではなく私服で、かなり大人びた印象を受ける。

ベージュ色のトップスに白のズボンというシンプルな組み合わせも、

派手さより落ち着きを重視した感じがして、判断要因の一つではある。


 そんな彼女が、俺に何の用があるのかは定かではないが、

キュッと唇を硬く結んだ後に、こう言い放った。



「あ、あの!! わ、私と結婚してくれませんか!?」





 ん??


 刹那の動揺、見ず知らずの美女からの唐突なプロポーズ

テレビ番組のドッキリ企画かと疑いあたりを見回すも、カメラは見当たらない。


「あ、あの。本気なんです! お願いします!!」

「えっと..」


 彼女の真意は分からぬが、熱意だけは伝わってきた。


 『一世一代をかけた本気の』という枕詞もつきそうなものだ。

しかし俺は、こんな接点もない女性に告られたとて、すぐに”はい”と

頷けるほどの性欲は持て余していないし、自分の時間を制約される

結婚というものに、特に憧憬の念も抱いていない。


「いやです」

「えぇ!? 何でさー!?」


 即答すると、女性の顔はみるみる紅潮していき、

信じられないと言わぬばかりに声を荒げた。


「あの..。返事したんで、ネタバラシならこのタイミングで..」

「ネタバラシ?? 何の事よ!?」


 ここにきて、彼女の告白はテレビの企画でも何でも無いことを悟る俺ーー

そしてそれらを踏まえ『結婚してくれ』と言って聞かない彼女。

車内には俺と彼女以外にも数人が座っており、

さっきから彼らの視線が痛い(特におっさん)


 確かに、普通の人ならオッケーするのだろうか..?

俺がおかしいのだろうか? 乗客の奇異の視線は、突然告白してきた

彼女にではなく、それを即座に拒否した俺に向けられている(気がする)。


 別にお断りするという行為自体は問題ないはずなのだが..。

だとすればいけないのは断り方だろうか? 確かに他人とはいえ、

いきなり『いやです』だなんて、少しは相手への配慮が欠けているか?


 そうだ..。もしかすると彼女は余命数日の難病患者とかで、

死ぬ前に一目惚れした誰かと結婚しよう的な、そういう奴かもしれない。

しかし本当にそうだろうか? 身体のどこかが悪そうには見えない..。


 肌が白いのが気になる点ではあるが、俺の祖父が癌で亡くなった時の、

あの死に際の病人特有の青白さとはまた別の感じだ。


 肌対策を几帳面にこなした賜物? だろうか..。

さて、このままでは気まずさは消えない。何か話しかけよう。


「あの..。結婚しようって、本気で言ってますか?

冗談とかは抜きにして??」


 俺は不審者相手に、自身の持ちうる最良の礼節を持って、彼女と対峙


「はい。誓って..」

「そうですか? じゃあ重ねて質問ですが、どうして僕を?」


「え、えっと..」


 すると彼女は演技でも何でもなく、本当に恥ずかしがる素振りを見せた。

”発情した”なんて言うのは良くないけど、そんな感じだ。


 精神年齢はかなり幼そうだが、見てくれは一人前の女性ーー

さっき性欲は持て余していないと言ったが、思春期真っ盛りの手前、

並の女性より豊満な彼女の胸に、

ちょっとばかし興奮してしまったのは許して欲しい。


 さて、そんな彼女が何を言い出すか?

数多いる男の中で、お世辞にも高スペックとは言えない俺を選んだ理由。


「そ、それはね..」


『次は〜 高輪ゲートウェイ』


 彼女の声が出かかった時、電車の運転手さんの音声が車内に響いた。

彼女とそうこうしているうちに、俺の家の最寄りまで後一駅の

ところまで差し掛かったようだった。


 そして、”丁度いい”とも同時に思った。

というのも、この電車がそろそろ到達する高輪ゲートウェイ駅ーー

クソダサい駅名ではあるものの、有名建築家がデザインしただけあって、

中々洒落ているこの駅の中には、雑談も出来るカフェがある。


 このまま車内にいても俺はどのみち降りるし、さっきから他の

乗客たちの視線はますます鋭くなってきいて落ち着かないーー


「降りましょう」


 電車のドアが開くと同時に、彼女に言い伝える俺ーー


「うん!」


 という活気あふれる声と共に、彼女は自分の後に続いた。

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