一緒に住んでる身近な存在とのやり取りは、恋人同士でもないのに距離感がバグっていて、毎日ラブラブ

若葉結実(わかば ゆいみ)

第1話

「ただいま~! ──おうおうヒロ君、早速、私を出迎えてくれるのかい、ありがとう!」


(家の中に居たヒロは女の子の正面から近づく。制服の女の子は嬉しそうに笑顔を浮かべながら元気よくヒロに声を掛け、靴を脱ぎ捨て、家に入る)


「ヒロ君、私の部屋で待っててくれる? 話したい事があるんだ」


(一緒に廊下を歩いていた女の子とヒロだったが、女の子は洗面所の方へ、ヒロは了解した様子で、二階へと続く階段に向かって歩き出した)


(女の子は洗面所で用事を済ませると、自分の部屋に行き、ドアを閉める)


「──ヒロ君、お待たせ。今日の朝はごめんね。私、人見知りの所があるじゃない? 人がいると恥ずかしくて、なかなか気持ち良い挨拶が出来なくなるんだよね」


(女の子がベッドに座ると、床に座っていたヒロは女の子の隣に移動し、座る。そして自分の手を女の子の手に重ねた)


「ちょっとヒロ君。許してくれたのは分かったけど、人がいないからって、そんなに積極的に体を引っ付けないでよ。デレちゃうじゃない……え? そうじゃない? お腹が空いたの? なぁんだ。それを早く行ってよ! 私が夕飯、作ってあげる」


(女の子とヒロは部屋を出て、階段を下りるとキッチンに向かう)


「えっと……ヒロ君。今日は何が良い? ──チキンスープ? OK」


「ヒロ君ってホント、チキンが好きよね! 私? 私も、もちろんチキン好きよ、美味しいよね」


(そろそろ出来そうだと察したヒロは、先に食堂へと移動する。女の子は湯気の立った出来たてのチキンスープを持って、ヒロが座っている所へ持っていく)


「──はーい、ヒロ君。チキンスープが出来ましたよ。アツアツだから気を付けてね~」


(ヒロは待ち切れなかった様で、直ぐに口に入れ、舌を出す)


「あ! 大丈夫!? 言ってるそばから火傷しないでね? 逃げやしないんだから、ゆっくり食べなよ」


「なんならフーフーしてあげようか? え? 本当にして欲しいの? 仕方ないなぁ……はい、ふ~……ふ~……」


「これならどう? いける? 良かった~。──美味しい? うん、聞かなくても分かるぐらい凄く美味しそうに食べてるね。ガツガツ食べてるヒロ君の姿、眺めてるの好きだな~」


(少しして、ヒロは何か言いたそうに女の子を見つめる)


「え? 気になるからそんなに見ないでくれ? そんな冷たいこと言わないでよ~。──はいはい、分かりました。分かったから、そんな不満な顔で見つめないでよぁ……じゃあ私は自分の食べる準備をするね」


(女の子はキッチンへと戻り、自分の夕食の準備を始める。準備が終わるとダイニングに戻り、椅子に座った。食べ終わったヒロは、女の子の隣に座る。)


「あらヒロ君。一緒に居てくれるの? いつもご飯を食べているとき、一緒に居てくれて、ありがとうね。優しいなヒロ君は」


「え? 違う? 余ったらそれ頂戴って言いたいだけ? またまた恥ずかしがらなくても良いのに」


(女の子はヒロの様子を見ながら、幸せそうに食べ始める)


「──ご馳走様~。ん? なに? 何でそんなに不満げな顔をしてるの? え? 本当に全部食べちまいやがったって? そりゃ、全部食べるでしょ!」


「太るぞって? そのセリフはヒロ君に言われたくないなぁ。だったらさ、今度一緒にデートしようよ」


「え? どこに行くんだって? そうね……歩いたほうが良さそうだし、散歩なんて、どうかしら?」


「良いぞって、やったぁ。じゃあ日曜日、一緒に散歩をしよう! さぁて、食器片付けたら一緒にテレビ観ようか」


(女の子は食器を片付けると、居間に移動しソファに座る。ヒロも女の子の隣に座った)


「──何か面白いテレビやってるかなぁ……え、ちょっと、いきなり膝枕? まぁ良いけど……足が痺れたら退いてよね?」


(ヒロは女の子に甘えたかったようで、膝枕をしてもらい、そのままの姿勢でテレビを観続ける)


「──うぅ……足が痺れて来たよぉ……でもヒロ君、可愛い寝息をたてながら寝てるし、ずっと見ていたから退けない……」


(女の子は葛藤する中、ふとヒロの手の指に目をやる)


「ん? ヒロ君、爪が伸びてきてない? 私が切ってあげようかな? わぁ! 急に飛び起きないでよ」


「え? 身の危険を感じたって? 失礼な。大丈夫、気を付けてやるから」


(女の子は棚になる救急箱から爪切りを取り出すと、ヒロの腕を持ちながら一本一本、慎重に爪を切り始める)


「──ほぉら、怖くないですよ~。大丈夫、大丈夫。ん~、大人しくしてて良い子ね~。ん? 何その顔? ふんふん、赤ちゃんをあやすみたいで、ちょっと……? ヒロ君はそういうプレーは苦手なの? ん? どちらかというと好き? じゃあ良いじゃない」


「フッフッ」


(女の子は切った爪を息で吹き飛ばす)


「はい、出来たよ。綺麗になって良かったね! さぁてと……」


(女の子はソファから立ち上がり大きく背伸びする)


「ヒロ君、私はお風呂に入ってくるね。ヒロ君も一緒に入る? ──ふふふ、だよね。まだ早いよね。じゃあ、行ってくるね」


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