えらそうな抹茶
沙耶
第1話
今日のおやつは抹茶パフェにしよう。ボールに生クリームと砂糖を入れて、抹茶が入った透明の保存容器のふたを開ける。すると、どこからか声が聞こえた。
「……をお菓子に使うつもり?」
キョロキョロ周りを見渡すが誰もいない。幻聴だろうか。気を取り直して抹茶を掬おうとすると、また声が聞こえた。
「ちょっとあなた! 私をお菓子に使うつもりかと聞いているの!」
保存容器の中から聞こえたよね、今。抹茶がしゃべってる……? なにがなんだかわからないけど、怒られたくはないので慌てて答える。
「え、えっと、そうです。パフェを作るのに使おうと思って」
「パフェ!? 私はお茶になるために生まれてきたのに。なんでお菓子に使われなければいけないのかしら」
なにこのえらそうな抹茶。買った時のパッケージにはお菓子にも使えますって書いてあったはずなんだけど。でも反論したら面倒くさいことになる匂いがぷんぷんする。よし、あきらめよう。
「わかりました。じゃあ今度お茶にするときに使わせてもらいますね」
適当に答えているのがバレないように少し悩んだそぶりをしてから答える。
「あら、物分かりがいいのね。そういう子は好きだわ」
上から目線の抹茶に好かれてもなぁと内心思ったが、素直にお礼を言っておく。
「ありがとうございます。では、また」
これ以上何か言われたらたまらないので、さっさと保存容器のふたを閉めた。
えらそうな抹茶 沙耶 @SayaPhotoba
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