第24話 様子がおかしい姉さん
私が眠っていた部屋は最上階の一室で、ネームプレートを見る限りどうやら先生の部屋だったようだ。ドアに貼られたネームプレートには『レヴェッタ』と書かれていた。先生に案内してもらって、ここも見た記憶も通った記憶もあるが、こんなの貼ってなかったような気がする。
「さてと……このまま黙って帰るわけにもいかないし、先生を探さないと……」
居住区にはいないだろうと推測した私はまず二階に向かうことにした。最終的には一階に降りないといけないのだから、エレベーターで上下移動する手間を考えたら、上から攻めていくのが定石だと思う。
私はエレベーターに乗り二階行きのボタンを押した。五階、四階と降りていく中……エレベーターは三階で止まりドアが開いた。
エレベーターに搭乗してきた人はあまりにも予想外の人物だった。
「……やっと起きたのか。こんな時間に寝たら夜眠れんぞ。わたしは昼夜逆転しているから問題ないが、アリシャはそうではないのだろ? まあ心労状態で院長のミルクティーを飲めば、そうなるだろうとは思っていたがな」
「オクタヴィア……姉さん? なんでここにいるの? というか、なんで私がここにいるって知ってるの?」
「院長から薬もろもろを持ってきてほしいと頼まれてな。超面倒くさかったが、院長の頼みを断るわけにもいかないだろ? 一階に全部置きっぱなしで帰るのもどうかと思ってな、部屋ごとに常備薬だけ置いて回っていたわけだ。で、アリシャがいることは、ここに薬を運び入れた時から知っていたぞ」
姉さんは驚き目を見開く私に対して、淡々といつもの口調で話すのだった。
私が二階で降りようとすると、姉さんは閉扉ボタンを押し「院長なら一階だ」と言って、すぐさま私の腕を掴みエレベーター内に引き戻した。
思ったよりも力強く引っ張られたことで、私はよろけてしまい勢いよく姉さんにぶつかってしまった。
オクタヴィア姉さんは姉妹の中でもずば抜けて小柄な体型。姉さんを除く私たちの身長が百七十センチぐらいあるのに対して、姉さんは百四十センチあるか際どい。つまり……私たちがぶつかってしまうと体格差によって、姉さんを一方的に吹き飛ばしてしまうことになる。
姉さんはエレベーターの壁にドンっと激しく身体ごと叩きつけられた。受け身をとろうと思えばできたのに、姉さんは私をかばって壁に背を向けたまま衝突した。
「ご、ごめんなさい……オクタヴィア姉さん……」
「アリシャが謝る必要などない。これはわたしが
「大丈夫、姉さんが守ってくれたから……ごめんなさい」
「そうか、それはよかった。で、アリシャよ。わたしはお前からそんな言葉は聞きたくないぞ? こういう時に相手にかける言葉は?」
「ありがとう、姉さん……」
私がそう感謝の言葉を述べると、姉さんは私を抱きしめ背中をポンポンと軽く叩いた。
「うん、それでいい。ただちょっと惜しかったな。姉さんじゃなくて『オクタヴィア姉さん』と言ってくれてたら満点だった」
「なにそれ……ありがと、オクタヴィア姉さん。これで満点?」
「うん、それで満点だ。さて……そろそろ一階に到着するぞ。降りる準備をしておけ」
姉さんはそう言うと、私から離れて操作盤の前に移動した。
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