青い日記

夜長月④ in 2024

9/1　お題≪ささやかな≫

ささやかな詛（のろ）いを君にかけてやる僕は『不幸な子供』の悪魔

9/2　お題「しくじったこと」

返答に困って愛想笑いして会話が途絶えて手遊（てすさ）びして

9/3　お題≪もう二度と≫

もう二度と疼かぬ肌の蕭然と結婚とは何か考える

9/4　お題「掴む」

手掴みでケーキ貪るワンルーム　貴女のようになりたかったな

9/5　お題「足りない」

足りなさを聴せず夜ごと泣き叫ぶ赤子を許す私を赦す

9/6　お題≪大荒れ≫

大荒れの海が王子を攫う底もうひと眠りする人魚姫

9/7　お題≪ちょっと待て≫

ちょっと待て　そんなつもりは　違うのに　失敗がトドメ刺す心臓

9/8　お題「永遠」

桃夭（とうよう）の彼女が契る風化より愛執こそが永遠と知る

9/9　お題「盗む」

四つ葉つくクローバーでなす蜂蜜を盗んだような打算したキス

9/10　お題≪浴びながら≫

幾度目の罰浴びながら然し未だ僕は此の世で命匿う

9/11　お題「金魚」

過呼吸が仰ぐ水面に穴をあけ溺れる金魚　飼われる女

9/12　お題≪おもいきり≫

おもいきり齧る恋愛至上主義　砂糖蜜漬けのロリーポップ

9/13　お題≪ねえ中也≫

ねえ中也　冤枉（えんおう）がいくら吹雪くもまだ鳶色の嫌悪が滲む

9/14　お題「孤独」

蠱毒ごと孤独癖だと言寄せて子供心の鼓動に説こう

9/15　お題「ひらがなだけの短歌」

さんたさん　くるまでずっと　おきてるの　しんじるもん　よそじになっても

9/16　お題「つづくもの」

欠ければ満ちたく　満ちれば光りたく　光れば欠けたいと願う月

9/17　お題「ふわふわ」

しだらなくしかし掴める綿埃　汚穢にも多種あると知る泥

9/18　お題「夜空」

悔し涙を受け止める藍靛（らんてん）の貴方の胸に煌めく夜空

9/19　お題「虫の声」

すいっちょん　秋雨近く肌寒い　けれども窓は開けてちょうだい

9/20　お題「残念」

あゝ計算し尽くされた運命が残念そうに微笑んでいる

9/21　お題「エンドロール」

人魚姫は空の娘になったとさ　エンドロールに刻まれぬまま

9/22　お題「別れを意識した瞬間」

お別れは腕尽くで裂く切れっぱし　貴方は飽きた　私は疲れた

9/23　お題「そっくり」

溺愛にそっくり化けた犠牲だけ捧げる喜劇　笑ってほしい

9/24　お題「美しさを感じた瞬間」

飾らずとも彩らずとも輝いた幸せ　だけど少し恐い

9/25　お題「妄想」

短歌界革命起こし数々の賞を総嘗め　ついでにモテる

9/26　お題「孤独を感じる瞬間」

前髪を切りすぎ三十路のオン眉誰も触れてこない　優しいね

9/27　お題「まっさら」

曇りと呼んでいたまっさらな白を仰いだ　別れ話の後で

9/28　お題「崩れる」

靴擦れをする子はいつも生き急ぎリズム崩れる道化のワルツ

9/29　お題「やわらかいもの」

新雪の肌へとシフォンブラウスを　今日だけはやわらかくなりたい

9/30　お題「めくる」

穏やかな陽射しめくってチクチクと迎え待つ仮病の保健室

9/30　お題「友情を感じる瞬間」

君が為泣くなどできぬ私だが夜がな夜っぴて笑わせたいの