第24話
蓮の言葉に、私は少し驚いた。
自分ではそんな風に思ったことはなかったのに。
「強い…私が?」
「そうだよ。いつも周りのことを気にかけて、自分のことよりも他人を優先してきた。それって、強くないとできないことでしょ?」
蓮の言葉に、少しだけ心が温かくなった気がした。
自分のことを理解してくれる人がいるというのは、こんなにも心強いものなんだと改めて感じた。
「ありがとう、蓮」
「別に、俺はただ事実を言っただけだから」
蓮は照れくさそうに笑った。
「なんか元気出た」
「…璦に何かされたり言われたりしたら俺に言って」
蓮は、璦と私の仲が拗れたのは自分のせいだって思ってる。
遅かれ早かれこうなってたはずなのに。
いくら否定しても信じてくれなかった。
「大丈夫だよ」
「は?なんで」
「蓮が言ってくれたんじゃん。私は強いって」
「はぁ、」
蓮は少し呆れたようにため息をついたけと、その目には優しさが宿っていた。
「心配してくれてありがとね」
「でも、無理だけはするなよ」
「うん、」
蓮の言葉に、私は少しだけ心が軽くなった気がした。
「じゃあ食べるか。冷める前に」
「うん、そうだね」
私たちは再び食事に集中した。
美味しい料理と、蓮との楽しい会話が、私の心を少しずつ癒してくれた。
___
家に帰ると、玄関先で璦が待ち構えていた。
彼女の顔には怒りが浮かんでいて、私は一瞬身構えた。
「由莉!どうして蓮と一緒にいたのよ!」
璦の怒鳴り声が家中に響き渡る。
まぁ、こうなる予感はしていたけど。
私は深呼吸をして、冷静に対応しようと心を落ち着けた。
「蓮とはただ食事をしてただけ。何も問題ないでしょ?」
「問題ないわけないでしょ!どうして私に何も言わなかったのよ!?」
また訳の分からないことを…
「逆に、どうして言わないといけないわけ?」
私の言葉に、璦は一瞬言葉を失ったようだったが、すぐに怒りを取り戻した。
「だって、私のことを無視して、蓮と一緒にいるなんて許せない!」
許すとか許さないとか。
別に璦が決めることじゃない。
「どうしてあなたの許可を得ないといけないの。私の時間をどう使うかは私の自由でしょ」
「でも、私のことを無視するなんて…!」
さっきから無視無視って、
「あんたにそんなこと言える権利あるわけ?」
自分のことは棚に上げて、
「は…?」
「いっつも自分の用のある時しか連絡してこないくせに」
「うるさい!」
璦の怒りは収まらず、私はどう対応すればいいのか悩んだ。
話にならない。
だけど、ここで逃げるわけにはいかない。
「もう少し冷静に話し合えない?」
「冷静に?そんなの無理よ!由莉が私を裏切ったんだから!」
「だからっ…!」
裏切ってないって何度言わせるの!
そう言おうとしたけど、
ここで感情に流されるわけにはいかない。
「…璦。私はあなたを裏切ったつもりはない。昔も、今も、」
「そんなの信じられるわけないでしょ!」
はぁ、
イライラするな…
イライラするな…
だぁ!無理だ!
「…というか、私が蓮とどうなろうが璦には関係ないんじゃない?」
「何を…!」
私は少しだけ笑みを浮かべて、璦を見つめた。
「婚約者がいるくせに。まさか、まだ蓮のことが好きなの?」
その言葉に、璦の顔が一瞬で赤くなった。
「そんなことない!」
怒ってるのか、図星なのか、
「でも、どう見ても嫉妬してるようにしか見えないけど?」
璦は怒りを抑えきれず、拳を握りしめた。
「最低…!」
「最低?それはあんたでしょ?私は自分の時間をどう使うかは自分で決める。あなたに指図される筋合いない」
璦は涙を浮かべながら、私を見つめた。
もう、負けたりなんかしない。
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