第14話
「終わったー!」
「お疲れ様」
今日は花の金曜日。
「今日久しぶりにご飯でも食べに行かな
い?」
今日は…
「あー、ごめん。今日は約束があって...」
「そっか、なら仕方ない」
「ごめんね。今度は私が誘うから」
「分かった」
普段なら蓮の誘いに断ることはないんだけど、今回はそれだけ重要で大切な約束があった。
「璦から誘ってくれるなんて珍しいね」
「そう、かもね」
「嬉しいけど...そんな深刻そうな顔してどうしたの?」
この瞬間が永遠に続けばいいのに。
___
遊園地の後、お父様から呼び出された。
もちろん予想はしてた。
「なぜ呼ばれたか分かるな」
「分かりませんけど」
ムカつくから分からないフリをしてやろう。
「璦が社長のことを気に入ったそうだ」
だったら何…?
「それで?」
「婚約破棄する」
は…?
「今、どれだけ馬鹿なこと言っているのか分かっていますか」
元はと言えばあんたのせいでこんなことになってるんだけど。
私は、あんたの都合でどんだけ振り回されないといけないの。
「仕方がないだろう」
仕方がないねぇ、
んなわけないだろうが!
「私が璦のフリをしていたことがバレたらそちらも都合が悪いはずです」
「もちろん分かっている」
ほんとかよ。
「だったら、」
「既に対策は考えている」
「対策…?」
「これは全てお前がした事だ」
「は、どういう…」
「お前が社長を気に入って、お前が勝手に璦に成りすました」
だから…つまり、全責任を私に押し付けると。
「呆れて、ものも言えない、」
「姉なんだ。璦のために少しぐらい協力してやってもいいだろう」
姉…?
璦のため…?
「元はと言えば、彼氏のいる璦のために、偽装お見合いをしたんじゃないですか。それなのに、今度は璦のために身を引けと?」
それも、私を悪役にして。
「何、そんなに怒ることでもないだろう」
「は、」
怒ることじゃない?
いいように利用されて文句も言えないの?
「分かった分かった。そんなに結婚したいなら他にいい相手を探してやるから。とにかく社長からは手をひけ」
「私は結婚したいわけじゃない」
社長だから、社長とだから一緒にいたいんだ。
「我儘を言うな。あと一ヶ月待ってやる。その間に身を引くか、それとも俺が話をつけるか。どちらの方がお前にとっていいか考えろ」
「待ってください」
「もう話すことはない」
何?勝手に呼んで、一方的に話して終わり?
私の話はどうでもいい訳?
ダメだ。こんな奴と話しても埒が明かない。
私は、一体どうしたら…
いつか必ず本当の事を、話さないといけない日が来ることは分かってた。
私はその事から目を背けてた。
真実を知った社長が、それでも私のことを好きでいてくれる確率は極めて低い。
ただでさえ離れるのが苦しいのに、このまま付き合ってしまったら、どんどん好きになる。
これ以上好きになってしまう前に、別れるのが妥当だろう。
あいつに全責任を押し付けられるのは癪じゃないけど、社長を騙していたのに変わりはない。
あいつにバラされるよりは自ら身を引く方がいい。
社長が私のことを嫌いになっても、社長に直接嫌いだと言われない限りは生きていける。
だけど、一ヶ月。あと一ヶ月だけ、遠くからでも社長のことを眺めていたい。
もう二度と、私に笑みをこぼす社長を見れなかったとしても。
そして、一ヶ月が経ったら、会社も辞める。家も出る。
社長と璦が結ばれるところなんて見たくない。
私にはこの方法しか残されてない。
「私たち、もう会うのはやめにしましょう」
今日私は社長に別れを告げることにした。
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