第2話
「相変わらずお綺麗ですね」
会わないと誓ったはずなのに、こうしてまた会ってしまっている。
「当たり前でしょ」
「行きましょうか」
「えぇ、」
結婚のことはおいといて、とりあえず、恋人にならなってあげてもいいわよ。なんて…結局私は心を鬼にしきれなかった。
いや、いざとなったら、すぐに別れる。
それから着々と話が進み、デートをすることになった。そして、ディナーに誘われ今に至る。
「いただきます」
「お口に合いますか?」
「まあまあね」
「良かった。璦さんの好みが分からなくて。だけど悩んだかいがありました。こうやって美味しく食べてくれる璦さんを見れて俺も嬉しいです。」
あなたって人は一体どこまでいい人なんですか…
「璦さんは、何が好きな食べ物ありますか?」
「私は別に…」
好き嫌いないし、なんなら何でも食べられる。
「じゃあ嫌いなものは?」
「特にないわ」
「そうですか、」
「ところで、あなたの方が歳上じゃなかったかしら」
まぁ、私とは同い年なんだけど
「そうです」
「なのに、どうして敬語なの」
「なんとなく…璦さんには敬語を使ってしまうんです」
「私、そんなに老けて見えるかしら」
「あ、そういう意味では…」
「それなら敬語やめてもらえる?」
社長に敬語を使わせるのは少し抵抗がある。初対面からタメ口だった私が異常なんだけど。
「それなら、璦も俺の事、名前で呼んでくれる?」
「っ、」
かっこいい…急なタメ口は心臓に悪い。
「俺たち付き合ってるんだよね」
「ええ、一応」
「一応でも嬉しいよ」
「…」
それは反則だ。
その顔でそんなかっこいいこと言われたらもう…沼る。
「お願い、名前で呼んで?」
そんな可愛い顔されたら断れない。
「…」
「璦?」
いや、だめだ、断らないと。名前で呼びあうまで仲良くなってしまったら私はきっと社長のことを…
「い、嫌よ」
「1回だけ!……だめ?」
頑張れ私の理性…!
「…颯太、」
くっ、この顔には勝てなかった、、
「ふふ、可愛い」
「名前で呼んだだけなのに、そんなに嬉しいわけ?」
平気なフリをしたけど、内心はそれどころじゃない。可愛いなんて言われてドキドキしないわけない。
「当たり前じゃん。好きな人にそう言って貰えるだけで幸せだよ」
社長は惜しみなく私なんかに愛を注いでくれる。
「そうね。あなたは幸せ者ね」
…残念なことに、社長の前では、こんなにも…可愛くない性格でいないといけない。
どうしてこんな奴を愛していたんだろうっていつ正気に戻るか分からない。
社長なら顔も整っているし、お金も、権力も何もかも持っているんだから、
ただ単に、簡単には靡かない私に興味を持っているだけなのかもしれない。
離れられても、今ならまだ耐えられる。だけど、この先、ずっと一緒にいればきっと…だから、私は必死でこの関係を切らなければならない。
「送ってくれてありがとう」
「どういたしまして。おやすみ」
「おやすみなさい、」
「あ、そうだ。璦、」
「なに」
「次のデートはどこがいい?」
次…が、あればいいけど
「別に、どこでも」
「璦が行きたいところに連れて行ってあげたいんだ」
正直、そうやって考えてくれるだけで充分嬉しい。
「自分で考えれば?」
「分かった。ごめんね、呼び止めて」
「…きょ、今日はありがとう」
「こちらこそ、俺と会ってくれてありがとう」
偽物の愛だとしてもあんなにイケメンな上に優しい人に愛されたら…これが偽りなんかじゃなければ、、
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