自由研究
西野 夏葉
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蝉の声の代わりに、部屋の中の空気をかき回す扇風機の音と、たまに通る車の音だけが響いている。
ペイント機能で塗ったみたいな青さが、空に広がっていた。そこには雲ひとつなくて、今日もまだまだ気温が上がりそうだ。
「夏休み、いつまでなんだっけ。ど忘れした」
窓の桟に腰掛けた
「マジかよー。宿題なんもしてねえよ。どうすんだ」
「あんたがコツコツ真面目にやらないからでしょ」
「そうだ、
「あたしもまだやってないよ」
ちぇー、と心底残念そうに言った丈はまた、視線を窓の外の青さへと向けた。まあ本当はあたしの宿題なんてとっくに終わっていて、丈に見せてやろうと思えば見せてやれるのだが、最初からなんでも言われたとおりにお出ししてやるのも癪だ。ファミレスじゃあるまいし。
そこで丈が突然「つーか、この夏休み、なんだかんだでいっつも梨里と会ってるな」などと呟くものだから、あたしも即座に落ち着いた声色を出せず「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。
「それとあんたの宿題が進んでないのは関係なくない?」
「宿題はどうでもいいんだけど、ふと思ったんだよな。なんかめっちゃいろいろ出かけてたべ」
「まあ……うん」
およそ一ヶ月弱の夏休みは、まさに矢の如く過ぎ去った。夏期講習もあったとはいえ、休みの日には丈を誘って映画を観に行ったり、花火大会に行ったり、今みたいにどっちかの家でくだらない話を延々を続け、笑ったり驚いたり怒ったりした。クローゼットに叩き込んである水とりぞうさんみたいに、気づいたらあたしの中にたまっていたのは水じゃなく、丈と紡いだ想い出だった。
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