次会う時は愛してるを伝えよう
はらぺこチワプ
プロローグ1
そこは暖かい光が降りそそぎ、四季折々の花が一面に咲き誇るどこか丘の上。空は雲ひとつなく晴れており、優しい風が吹いていた。
そこに小さな影が2人。
「あっ、また泣いてる!こんどはなにしたの?」
幼い少女が言う。
「ぅっ、みずき..」
幼い少年は体育座りをしており、しゃっくりをしながらぽつぽつ話す。
「さっき、父上に剣の稽古をつけてもらったの..だけど、ぼくのたんれんが足らずに、また同じ間違えをしてしまって....ぼく父上に嫌われたらどうしよう」
すると少年はぽろぽろと泣き出し、少女はあわあわした。
焦った少女は鍛錬の意味を理解できなかったが、泣く=悲しい=元気づけなきゃ!と思い、いそいそと花畑の中を模索し始めた。
⁂
「あった!!」
しばらくしてお目当てのものが見つかり、少女は大事そうにそれを掘り出した。そして少年の元まで届けに行く。
「はい!あげる!!」
「グスッ、お花?なんで根っこごとなの?」
少年は泣きながら、根っこもひっついてる花をもらった。
「そう!ききょうっていうんだよ、根っこまでなのはそこまでが命だから!」
「?..みずきは優しいんだねグスッ...この花ききょうって言うんだ、なんでくれるの?」
「ききょうの花言葉知ってる?」
フルフルと首を振る少年に、ためにため
「変わらぬ愛なんだって!ママがいってた」
「変わらぬ愛ってなに?」
「う〜ん、みずきも難しいことは分からないけど、ずっと大好きってことだと思う!!」
少女は腰に手をつきドヤ顔で言った。
「ずっと大好き..」
「さっきパパに嫌われちゃうかもって心配してたけど、大好きって気持ちがなきゃ一緒に練習してくれないと思うんだ」
「だから、大丈夫!" "が心配することはなにも起きないよ!」
「....ありがとうみずき」
少年はいつの間にか涙が止まっていた。頬を染め、嬉しそうに少女に礼を言う。
桔梗の花を持ちながら言うその姿は、まるで天使の様に愛くるしくこの世のものではないほどの輝きがあった。
少女はそんな少年を見て顔を背け、指ををいじり始めた。なぜなら内心ドキドキしたからだ。
「" "って女の子みたい」
「!!なんでそう思うの?」
「だって、かわいいもん」
「...ぼくはみずきの方がとってもかわいいと思う」
そう言う少年は照れくさそうだったが、目線は少女の目を離さなかった。
「ぅ、うるさい!」
少女はボワっと赤くなり、手で顔を覆った。
実際少年の見た目はとても中性的で麗しい。サラサラした輝く紺色の髪、瞳は優しい茜色をしており、まるで全てを許してくれそうな柔らかい顔立ちをしている。
「ほんとだよ、特にぼくはみずきの目が好き。このききょうの花と同じ色しててとってもきれい」
少女は深い紫色の瞳を持っており、まるで水晶の様で、誰もを魅了する目をしていた。
少女は皆んなと違う瞳が気に食わなかったが、今初めてこの色で良かったと思った。
「ほんと...?じゃぁ、これから会えなくなっても、そのききょうを見てみずきのこと、思い出してくれる...?」
「えっ...」
少年は驚き瞳を揺らした。
「なんで、みずきもう会えなくなってしまうの?」
「うん...」
「なんで、やだよ」
少年は目に涙を溜め今にも泣き出しそうな顔をした。
「...明後日遠くに引っ越ししちゃうんだ」
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
「言おうと思ったけど...」
「...うぅ、ぜったいやだ、ぼくみとめたくない!!」
そう言う少年は走って逃げてしまった。
少女は少年とこのまま会えないのではと思い焦ったが、背を見つめながら
「明日もここでまってる!!」
と全力で言った。
⁂
次の日、少女は1人丘の上で人を待っていた。
するとザクザクと、後ろから地面を踏む足音が聞こえてきた。
「" "!!」
少女は嬉しくなり名前を呼びながら振り向く。するとそこには、泥だらけの少年がいた。手には見たこともないキラキラした花が。
少年は少し申し訳なさそうな顔をしている。
「みずき、昨日はごめんね、」
少女は首を振った。
「ううん、私のほうこそごめんね、それよりどう」
少女が見た目がボロボロになっている少年に質問をしようとすると、少年はそれを遮って不安そうな目で見つめてきた。
「みずき、離れていても忘れないでいてくれる..?」
「!!、もちろんだよ!!」
少年は安心した顔をし、全身の力が抜けた様に見えた。
「これ、ききょうのお返し」
そう言う少年はキラキラした花を両手で少女に渡した。
「うわぁー!キレイなお花!なんて言うの?」
「分からない、、でもみずきが好きそうだと思ってがんばって取ったよ、もちろん根っこもね」
少年は恥ずかしそうにはにかんだ
「ぷははは!!だからそんな泥だらけなのね!いつもキレイな格好してるのに、でも、ありがとう、大切にする」
そう言う少女は花を抱え、こぼれるような笑顔になった。
「もう、顔に泥がいっぱいついてるよ」
少女はハンカチで少年の顔を拭った。
「みずき大丈夫だよ、それよりもっと泥んこになるぐらいあそぼ!」
少年は笑った。
そこから2人は日が暮れるまで遊んだ。おしゃべりをしたり、花で冠を作ったり。
そこは2人だけの世界であり、誰も近づけないほど幸せな空気が溢れていた。
そんな楽しい時間にも、別れの時は近づいてくる。
2人は互いに泣きながら向き合っていた。
「次はぼくがみずきのところへ会いに行くね」
少年は目を手で擦りながら言う。
「うん、待ってる!ぜったいにきてね!」
すると少女は少年の右ほっぺにキスをし走って行った。
⁂⁂⁂
ピピピピ...
どこからともなく電子音が聞こえてくる。
「うぅ...」
ベットの上には1人の女性。まだ、夢の中にいたくて、目覚めと葛藤をしている。
ピピピピ...
「うぅん、もう!」
女性は勢いよく起き上がるとスマホに手を伸ばし、アラームを止めた。
すると母から一通のメールが来ていることに気付き、ため息をつく。
そしてボフッと布団に戻った。
女性は今日見た夢を思い出していた。どこか懐かしい気がして。
「あの子の名前なんだっけ」
ぽつりとこぼした言葉は、部屋の静寂にかき消された。
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