第2話 ―ファリスー 何故私がこのゲームを始めたのか
――ファリスside――
私、木村ナツキはゲームとは無縁の生活を今までしてきた。
実家の花屋の手伝いをしながら、ごく当たり前の生活をする、普通で幸せな日々だったけれど、そんな私にも悩みはあった。
――実の姉と性格が合わない事だ。
少しでも理解を深めようと努力してきたことは誰もが認めるけれど、姉は何故か私を敵視していた。
そんな姉が、大規模VRMMO【ファンタジープラネットオンライン】を始めたのをきっかけに、私に一緒にしようと誘ってくれた。
正直初めてするゲームがVRMMOなのは不安が大きかったが、オンラインではないのも昔から出ていて満を期してのオンライン化だった。
「回復魔法のホイミアしか知らないけど……」
「ああ、それだけ分かれば出来るわよ」
そう言って始める事になった。実際はそれさえ知っていれば出来るゲームでは全く違ったのだけれど……。
大規模VRMMO【ファンタジープラネットオンライン】はやる事が膨大にあって、それぞれ好きに生活することが出来る。
戦闘に生きるもよし。生産に生きるもよし、農業をしながら釣りをして生活するのもよし、採掘や伐採なんかも本格的だった。
それらの素材を集めて売ったり、集めてアイテムを作ったりと、本当に自由なVRMMOだったのだ。
キャラクターを作るのは凝っていて、種族は『ミアニャ』『アミニャ』が獣人系で、見た目も可愛い子が多かった。他に『ヒューマン』『エルスバン』『ドラゴニア』といて、私は『ミアニャ』と言う獣族の小さい種族で私は始めた。
『ミアニャ』『アミニャ』はどんな動物の耳と尻尾も作れて自由度が高かったのだ。
私は城のウサギの耳と尻尾のミアニャを作り、これで姉と仲良くなれるきっかけにと、パソコンにインストールして始めたのが数か月前。
――このVRMMOにはチームと呼ばれる集まりがある。
そこに最初入った私は、他の所に入るのが怖いという姉を誘いチームに所属して貰った。姉妹で同じ回復職ではあったが、次第に姉は仕事を休んで迄VRMMOにハマっていき、その差は開いていった。
姉は『ミアニャ』の種族の大きい大人バージョンの『アミニャ』の虎娘で始めていた。
私は金策にもスキル上げも忙しく、レベルはそう上がらなかった。
次第にチームからこんな声が上がっていく……。
「なぁファリス、お前ずっとレベル上げはそこそこで金策とスキル上げばっかりしてるけど」
「装備を買うにもお金はいるでしょう? それに生産職、私には合ってる気がして」
そう、私は生産職をするのが好きだった。
農家も大好きだし、素材集めも大好きだった。
その為にレベルは上げていたし、4国ある国は死にながらも周り終わっていたし、満足はしていたのだ。
すると――。
「まぁ精々生産職が出来ればチームの役には立ちますし……」
「サナがそう言うのなら別にいいが」
「ファリスにバミクロ作って貰おうっと♪」
「は? HQのロイヤルクロークだろ?」
「やだもう。欲しいけどファリスに作れる筈ないじゃない!」
「それもそうか」
「「「「はははははは!!」」」」
姉は男を落とすのがとてもうまい人で、現実世界でも何度も痛い目に遭ったのにやめようとはしない。
多分そういう病気なんだろうと私は考えていた。
チーム面子も良い人もいれば悪い人もいる。
買うと高いけど、今人気の料理をチーム面子全員に作ってポストを使って「日頃お世話になっているので」と送った所――。
「おーい。ファリスから配給品が届いたぞー」
「使える奴ならいいけどな」
「えー? このアイテムアタシのジョブじゃ使わないんですけどー」
「バザーに売ろうっと♪」
そんな風に扱われることもあった。
私は馬鹿にされながらも必死に生産職を上げ、金策をし、ある程度の物が作れるようになってチームでも地位が確立し始めた頃――姉に彼氏ができた。
あの、男を作っては変え作っては変えしていた姉に、彼氏(今は)が。
【カジ】と呼ばれた男性と姉は、二人だけのチームを作りたいと申し出てチームを抜けていった。
すると、ここまで育った私を手放すのが惜しかったのだろう。
「是非、ファリスにも来て欲しいわ!」
そう言われ「これからは姉妹仲良くしましょう?」と言われて、それならばとチームを抜けて姉と姉の彼であるカジのチームに入った。
姉とカジの要望する品を作るのは大変だったが、後払いだと言ってお金を貰う事はしなかった。
そしてある日――。
「そろそろ溜まってるツケを払って欲しいんだけど」
「は? ツケ? 私の為に働いて嬉しいでしょう?」
「え?」
「もう、そんなんだから前のチームでも嫌われるのよ。前のチームでは……」
と、姉から聞かされた内容は、『厄介者がいなくなって清々した』や『私ファリスさんに虐められていたんです』等と言う誹謗中傷だった。
私は手助けこそしたことはあるものの、イジメたことなんてなかった。
「前のリーダーに話して来る。誤解は解かないと」
「え? ちょっと待ちなさいよ!」
「行ってくる」
そう言ってチームを変えるパールと呼ばれる宝珠を変えて中に入ると「ファリス久しぶりじゃん」と声を掛けてくれたリーダー。
「あの、私がいなくなって清々したとか、イジメてもいないのにイジメられたって言われてるって聞いたんですけど……」
「は? 誰によ」
「姉からですが……」
「ああ、お前の姉度々こっちに来ては冒険してたからな。ファリスがバミクロ作ってくれないとかスゲー文句言ってたぜ」
「バミクロは作るなら素材を持ってきてくださいと頼んでます。とても個人では出せません」
「まー確かにな」
姉の欲しがるバミクロと呼ばれる装備は後衛なら憧れる一品。
作れなくはないが、素材がとんでもなく高かったのだ。
「ところで、私への誹謗中傷は事実でしょうか?」
「は? 本当に誰がに聞いたんだよそんな事」
「姉からですが」
その途端――。
「ファリス酷い! また私を陥れるつもりなの!?」
「え!?」
悲痛な叫びと共に、ホロホロと泣きながらやってきた姉と、怒りの形相のカジがいた。
「お前! またサナを陥れるつもりか!? なんて最低な奴だ! ふざけんな!」
「ちょっとお姉ちゃん、どういう事なの……? 説明して? 私は前のリーダーの所で誹謗中傷受けてるって言ったじゃない」
「そんな事一言だって言ってない! 被害妄想酷すぎるのよ! 本当に昔っからそう! 仲良くしたいって言いながら私の事を嵌めるのよ!」
「お、お姉ちゃん……?」
意味が解らず呆然とする私と、前のチームリーダーは……暫く考え込んだ末。
「サナとカジはうちのチームでも主戦力なんだ。悪いがファリス、お前の言う事は聞けない」
「どういう事ですか?」
「お前は追放する。根も葉もない噂に惑わされたんだろうが、責任を取れ」
「責任って……」
「リーダー、それは余りにも横暴だ」
「ブドウ、お前にその権限は無いだろう? 兎に角追放って言ったら追放なんだよ。一応礼だけは言っとくぜ? 色々便利に使わせて貰ってサンキューな」
そう言った途端、私はチームから追い出され、二度と前のチームに入る事は出来なかった。
目の前ではホロホロ泣く姉と、カジの怒りの言葉と投げつけられる罵倒が流れて居て……目の前が暗くなるのを感じる。
――私、また騙された?
そう思った時には後の祭りで……。
私はそのまま、姉とカジのいたチームを抜けてソロで活動することを決めた。
所が問題は更に発展するのである……。
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