最強狐は異世界でメイドになっても戦うことはあるようです。

第76話 未来天狐

意識を失った後、天狐は見た光景が脳裏に焼きつき発狂する。

「あああああああああぁぁぁあぁああああああ！！！！！！」

「落ち着け、天狐。」

「あああああああぁぁぁあぁああああ！！！」

「はぁ、おい落ち着け！」

誰かに精神安定の魔法をかけられ、意識が元に戻る。

「落ち着いたか？」

「…ここは、あのときの。」

「そうだ、俺だ、冥途天狐だ。」

「そっか、このときなんだね。絶望するときって。でも皆死んじゃって…。」

「確かにつらいだろうな、だから今から取り戻しに行くぞ。」

「でも、どうやって？」

「時間を巻き戻せばいいだけだ。」

「…そんなことができ、るの？」

「何のためにここに呼んだと思っている、力を渡すためだぞ。」

「そういえば、そうだったね。」

「力を渡すのは二つだ。」

「二つ？」

「一つ目は九尾の力、俺の魔力をすべて還元し、倍の魔力になる。」

「…」

「二つ目は天星眼の力だ。俺が制御することによって完全なものとなるから死ぬことはなくなる。」

「…そうだったんだ。」

「二つの天星眼が合わさるとき、進化する。それに俺や今までの天星眼保持者の戦闘経験値が入るからな。完璧になるはずだ。」

「そっか。」

「ああ、今から力の譲渡を行う。手を出せ、」

「ん。」

未来天狐が天狐の手を握り、力のすべてを注ぐ。

天狐はこの力を感じていてどこか暖かい。

「これで力の譲渡は終わりだ。目を覚まして能力を使え、この眼が教えてくれるはずだ。」

「ありがとう。俺。」

「気にするな、さっさとあいつをぶっ飛ばしに行くぞ。」

「ああ。」

―ここは、そうだ。早く時間を巻き戻して皆を救いに行かなきゃ。

天狐は目を覚ますと倒れているアースランドやサクヒノラに口付けをする。

待っててアースランドさん、ヤマタドナ、サクヒノラ、皆。今度は死なせない。

キン！

眼を使い、エルフの里が襲撃される日まで戻った。

「本当に、戻れた。」

「どうしたのですか？兄様。」

―サクヒノラだ、生きている。

天狐はサクヒノラを抱きしめ、キスをする。

「に、兄様！？どうしたんですか？」

「ううん、なんでもない。ちょっとしたくなっちゃって。」

「ふふ、兄様はおませさんですね。」

「悪いね、でも明日もあるし今日は寝ようか。」

「はい、今日も膝枕してもらってもいいですか？」

「うん、だけどちょっと待ってね。用事を済ませてくる。」

「用事ですか？」

「ああ、少し面倒な相手がいる。ここでおとなしくしててくれ。」

「わかりました、お気をつけて。」

「ああ、行ってくる。」