第43話 未来の記憶

アースランドと身体を重ねた後、天狐は珍しく夢?を見ていた。

けれど何故か知らない場所にいて困惑する。


「こ、ここは、どこ?さっきまでアースランドさんと一緒にいたはずだけど…。」

当たりを見渡すと無数の人々が倒れている。その中には親しい人も倒れている。


「こ、これは!?アースランドさん!?どうして!?」

理解が出来ずに困惑する、しかしその亡骸を抱いている人物が叫び、泣く。


「アースランドさん!アースランドさん!しっかりして!アースランドさん!しっかりしてよ…。」


「なに、これ。ふざけてるの?こんな夢を見せて、なんなの此処は。」


「それは未来のお前だよ、冥途天狐。」

急に後ろから声がして、飛んで距離をとる。

いつの間にか後ろに立っている人がいて、なぜか僕にそっくりだ。


「誰だ!」


叫ぶとその者が口を開く。

「俺は冥途天狐。未来のお前だ。そこに泣き叫んでいるのはこの世界の未来のお前だ。」


この人は何を言っているの?未来の?どういう意味なの?よくわからない。


「何を言ってるかわからないだろうから教えてやる。お前は将来絶望を味わう。」


「…絶望?これのこと?なんでそんなことわかるの?」


「天星眼の能力だ。」


「…天星眼には未来が見える能力は無いはずだよ。」


「いずれその力が開眼する、3年後にはな。しかし悪いがお前にはこの未来をどうすることも出来ない。」


「理解できないよ、だったら先に防げばいいだけじゃないか。」


「無理だ、俺はそちらに干渉が出来ない。つまりお前に勝ち目は無い。」


「僕でさえか?」


「そうだ、お前は勝てない。絶対にな、たとえ龍の力を借りたとしても。」


「そんなこと信じろと?」


「信じろ、未来の俺が断言する。」


「相手は誰?」


「今言っても記憶を封印するするから無駄だ。」


「…ふたつ聞くよ、1つ目は君は味方?それとも敵?」


「味方だ、自分自身を敵に回すわけないだろう。そうじゃないと異世界に飛ばした意味もない。」


「どういうこと!?僕をこの世界に飛ばしたの?でもそんなことできるなんて…。」


「天星眼は歳をとる毎に強さが増していく、だから出来たことだ。それにこの眼は自身を死に導く、九尾だから少しだけ長く生きていられてるだけだ。」


「…この世界に飛ばした理由は?それと九尾だからってなに?」


「冥途天狐を死なせないためだ。あのまま生きているとタイムリミットが来て気づいたら既に手遅れになる。」


「どういうこと?」


「あの世界には天星眼の本があってそれを読むのが死の直前だった。だから俺が無理矢理過去に干渉して異世界に飛ばした。少しはなんとかなるんじゃないかと期待してな。だから俺自身がお前の中いる。」


「…やっぱり死ぬのは確定ってこと?力は使っていないけど。」


「ヤマタドナは力を使うなと言ってたがあれは無駄だ。力を使う使わないは関係ない、だが俺が味方だ。その時が来たら力になる、俺はお前を死なせない。九尾だからというのは天星眼を持つものは他にもいる、けれど皆産まれてすぐ死ぬ。身体が耐えられないからだ。」


「九尾だから身体が保てているってことね。」


「そういうことだ。」


「とりあえず、信じておくよ。それと2つ目、ここはどこ?」


「冥途天狐の精神世界だ。それとこれは未来を見せているだけだ。」


「精神世界?夢じゃなくて?」


「お前の魂だけをここに読んだだけだ。次来るときはお前が絶望する時になる。」


「ならなんで今呼んだ?」


「先に話してとさおこうと思ってな、今しか時間がなかった。それに今は力を渡せないからお前は勝てない、だから絶望してしまう。」


「力が渡せないからか。そういうことね、だから絶望しないと始まらないの?」


「俺の力が回復する時期がその時ってのもあるが、この精神世界は特殊な空間だ。条件がいる。今回だけ例外的に呼べただけだ、次会うのはその時だ。」


「条件とは?」


「お前の精神状態が著しく乱れ、互いの天星眼が共鳴することだ。」


「だからってこっちでアースランドさんを殺して絶望させるって?」


「まぁ、そういうことになる、な。」


「僕は納得できない。」


「だが、もうこれしか助かる道は無い。次ここに来る時は絶望した時だ。誰が死ぬかはわかるだろう?」


「…」


「だから今回はこの会話の記憶を封印する、せめてもの救いだ。次会う時に全て思い出すだろう。」


「…だったら僕が先に死んで全てなかったことにすればいいじゃないか!」

感情が爆発してしまう、だってそれはあまりにも耐えられないからだ。


「それは無理だ、お前を超える力がこの世界に既にいる。そうなれば全てが無になってみんな死ぬぞ?」


「…!」


「だから悪いがお前とアースランドが死ぬか皆死ぬかだ。選べ、もっともふたつの天星眼が一緒になれば話は別だがな。」


「だったら天星眼だけでも今渡してくれればいいでしょ?」


「それは無理だ、天星眼と同時に九尾の力も渡す必要がある。それに今は九尾の力が完全に失われているから渡したところで無駄だ。」


「…そう。」


「辛いかもしれないがこれが現実だ。ふたつの天星眼がひとつになる時、その目は進化するだろう。それにかけろ、俺もここまでの未来しか見えない。」


「…とりあえず未来の僕が僕のために動いてくれてるのはわかったよ、感謝するよ。」


「そう言われるとありがたい、そろそろ朝になるから記憶を封印する。その先はどうなるかわからないが自分自身を頼むぞ。」


「うん。それでもアースランドさんを死なせる訳には行かない、なんとかしてみるよ。」


「そうだといいな、じゃあな。」


「うん。」


気がつくとアースランドさんに起こされ、朝を迎える。

「おはよう天狐ちゃん?どうかしの?泣いてるの?」


「あれ、おはようございます。なんででしょうね、アースランドさんと幸せな時間を過ごせることに感動したのかもしれないです。」

涙を拭い、言葉を返す。


「ふふ、そっかあ。じゃあそろそろ起きようね、今日出発だよ?」


「そうですね、準備しましょう。」


「あ、天狐ちゃん。」

アースランドはキスをして、暫く見つめ合う。


「んっ。どうしたんですか?急に。」


「私今とっても幸せだなって思ってね。」


「僕もですよ。アースランドさん。今、幸せです。」

2人は準備し、ソアレフ領に向かう準備を始めた。



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