第20話 力の開放 九尾と天星眼
僕は力の開放を行った。
背中に魔力の塊である九本の尻尾を顕現させ、全身に黒い模様が発現する。
尻尾はゆらゆらとしているが威嚇をするように広がっている。
普段からも魔力はあふれ出しているがあれはほんの少しだけ。
せいぜい屋敷の範囲くらいにしか魔力は届かない。
だがこの姿になると魔力の圧が周囲に放たれる。
黒い模様は天星眼の能力を最大限発揮するときにあらわれるものだ。
この瞬間、この魔力は大陸にも伝わるのだった。
「な、なんという魔力だ。」
サンドレスが驚き、目を見開く。
「こんなにやべーとは…」「騎士団総出で勝てるのか?」「おい!魔力に当てられて気を失っているぞ!」「これはまるで神の…」
観客席が騒がしいがそれを無視してアースランドさんが口を開く。
「これが、本気の、天狐ちゃん?想像以上の、化け物だね。おかげで漏らしそうだよ。」
膝をつきながらこちらを見る。
「ありがとうございます。漏らされると困りますが、これが僕の全力です。」
そういうと尻尾をすべて片づけた。
「なんで、尻尾消したの?それで勝てるって思われている?」
「いえ、気を失っている人がいるので、それに、天星眼の能力は使わせてもらいますよ。」
「…それならいいよ、全力で行くね。」
そう構えるとさっきより早く距離を詰めてきた。
シュンッ!
早い!思わずしゃがみ込んで槍を躱し、そのままパンチで腹部を狙い、アースランドさんを吹っ飛ばしてしまった。
「痛ったあ…」
や、やばい、大丈夫かな…
「だ、大丈夫ですか!?」
戦いの最中なので駈け寄らず大声で確認した。
「うん、なんとかね…」
そういいながらも難なく立ち上がり、武器を構え始めた。
「でも、また行くよ、気を付けてね?」
またアースランドさんが距離を縮める。
今度は余裕をもって躱し、冷静に対処する。
…やっぱり剣より槍のほうが危険だ。突きの攻撃がメインでたまに振りかざすように攻撃してくる。それに両手で扱うしリーチがある分本来なら相手の懐には入りにくい。それに読心術がある。
「心は読まないんですか!?」
「異質な力は自分と同じ以下の力じゃないと通用しなくてね!こんなの久し振りだよ!」
そういうことなのか、だから力の開放をした僕の心が読めないんだ。僕はそういうことがなかったから勉強になった。どんなものにも必ず弱点が存在する。と。
しばらく攻撃を受け続けアースランドさんがどのくらいの強さが分かった。もう僕は十分だ。終わらせよう。
「今小刀を使う?」
少し疑問に思いながらも注意する。しかし小刀の使い方は想像と全く違っていた。
僕は小刀をアースランドさんに向かって投げつける。
「え?わぁ!」
アースランドさんが少し驚きながらも間一髪で避ける。
避けた瞬間に九尾と天星眼の複合能力でアースランドさんの後ろにある小刀と自分の位置を入れ替え、首に指を突き付ける。
「僕の勝ちで、いいですか?」
質問するとアースランドさんが答えてくれた。
「…私の負けだね。天狐ちゃん…」
こうして特訓が終わった。
そのあと皆が下りてきて感想を言い始めた。
「いやぁ!強かったね!天狐ちゃん!全く歯が立たなかったよ!」
膝の上に乗せられながら頭を撫でられる。あの、皆いるから止めてほしいんだけど。
「うむ、あそこまでとは思わなかったな!これは少し仕事内容を考えるか?」
え、ほんとに?見回りくらいならいいけど。
「そうですよ!領主様!ぜひ騎士団に来てもらって訓練を付けてほしいです!」
え、それはいやだな。別にやりたくない。
「それより私の動きどうだった?天狐ちゃん。」
話の方向を逸らしてくれた。
「ぜ、全然よかったですよ?特に槍の使い方がいいと思います。あんまり詳しくなくてすみません。」
「そうですよ!私たちびっくりしました!なんとすごい動き!感動しました!」
「ほんと?みんなありがとね~!」
「ところで天狐君、娘の強さは君にとってどのくらいだ?」
サンドレス様が聞いてきた。
「多分、十分強い、ですよね。それこそ上澄みのほうじゃないですか?…」
「やはりそうか、君みたいな規格外な存在がいるから少し基準がずれてしまったのか…」
「どうかしましたか?」
「いや、娘に危険なことはしてほしいとは思ってなくてね。」
「それは皆そうだと思いますよ。というより僕が護衛に着けばいいの、では?」
「それもそうか、君がいれば俺も安心だな!ハハハハハ!」
「僕は治癒できないんで安心はしないでくださいね…」
「私自身強いほうだからそこまで気にしなくていいよ?」
「いや、まぁそうですけど。」
お腹が空いて腹が鳴ってしまう。恥ずかしい。
「それよりお腹空いたから早く帰ろう?天狐ちゃんお腹ペコペコだって!」
「アースランドさん心を読まないでください…」
「あ、そういえばさっきの話の続きなんだけどね?」
「え、っとなんでしたっけ?」
「今日の訓練のお礼でさ、次の休みデートしようか!」
「え?」
「ちゃんとエスコートしてね?天狐ちゃん!」
デート前日の夜眠れるかな…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます