あまのざくと千と一夜
まよみ遊
DAY1)すてきなお店をみつけた
とある日のこと。
目的地へと向かう途中の道で、すてきなお店を見つけた。
以前にその道を通ったときはなかったと思うようなお店。
コワーキングスペースとカフェがあって、それでいてなんとなく懐かしい古民家的な香りがするお店だった。
ひとまず目的地へと向かい、用事を済ませてしばらくゆるゆるのんびりとした後、そのお店へと向かう。
やはり気になってしまって、どうしても寄らずにはいられなかった。
入ってみると右手側にカフェらしきスペースがあった。そこで注文をすると、店内のどこに座ってもいいような感じだった。
店内は広く、コワーキングスペースでもあり、カフェでもあり、古道具やさんでもあるようだった。
どこかのお店で使われていたのであろうレジスターや、椅子、ソファ、棚、テーブル、カゴ、籠、お皿やカップ、グラスたち、などなど。
いろいろなものが飾られている。
ふと見ると値札が付いているから、売り物でもあるらしかった。
お店の中央あたりには、最近惜しまれつつも閉店したと言われていた人気のあったとある喫茶店の看板が置かれていて、とても印象的だった。
お店のカフェスペースと、奥の方のソファスペースにはお客さんらしき人たちがいて、歓談していた。
私は小さな人と2人、窓際近くの本が置かれている棚の下にある大きめの椅子の席へと向かい、腰掛けた。
店内だけど、さらにガラス越しに、店内を眺めていた。
古い古民家からやってきたのかもしれないと思われる、丸い円座が気になった。
おそるおそる触れてみて、欲しいなあと思った。
古民家で、丸い円座に座るような生活がしたいなあと思いをはせる。
そうこうしていたら、注文したカフェラテと、りんごジュースがやってきた。
と思ったら、りんごジュースではなくてバナナジュースがやってきた。
あれ?間違われたね、と思った。
注文前にバナナジュースと言ったので勘違いされていたのかなと。
けれど、あまりにも素敵なグラスでやってきてしまったので、まちがってます!と再度声をかけるのもなんだかなあと思い、バナナジュースでいっか?と小さい人に確認し。
まあいっか!というお話になった。
ぐびぐびと頼んだお茶をいただく。
ひさしぶりの本格的な珈琲の香りと苦みにびっくりした。ラテにしているけれど、なかなかに珈琲豆の主張は強かった。
苦くない!とスマイルで一口カフェラテを飲む小さい人に驚く。
バナナジュースは甘くて優しかった。
お茶をいただいた後、店内をフラフラしていると、
よかったら2階にも倉庫がありますので。
と、店員さんに言われる。
2階には古道具の倉庫があって、1階よりももっといろいろなものが置いてあるらしい。
見に行ってみた。
椅子に机に、古い箪笥に、農作業で使うざるなども置いてある。たしかに古道具さんたちの宝庫だった。
落ち着く。
実家にもう何年も帰っていない身としては、古道具に囲まれているとやはり落ち着くなあと思った。
物たちが発している香りは実家のものとは違うけれど、やはり落ち着く。
実家のお座敷や土蔵や蚕室に居るような気持ちになった。
本当は、帰りたいんだなと思った。
いろいろ眺めているうちに、ちょっとした仕掛けのある鳥の爪楊枝入れを見つけた。
木でできていて、枝を押すと、爪楊枝を鳥がくちばしで1本ずつ、摘んでくれるようにできている。
面白い。
小さい人も気になったようすで、何回も繰り返し試している。
買おうかなと思ったけれど、社会的な私が言う。
そんなもの買ってどうするの?と。これから引掛しするんでしょ?そんなの買っていって物を増やしてどうするの!と。
自分とのやり取りは小さい人とのやり取りに変わり。買いたい、今日はやめようという問答は続く。
小さい人のぐずぐずが始まり、最後は、そろそろ帰らないと!今日はジュース飲んだんだから!という、勝手な大人のよくわからない言い分で小さい人の気持ちを押し切った。
こうやって、時々に子どもの私の気持ちを押し切っていきてきたんだな自分は、と思った。
それからも小さい人のぐずぐずは続いていたけれど、帰路につき、途中で唐揚げを食べると元気が回復した様子で、小さい人のご機嫌は良くなった。
家に帰って、ご機嫌は回復していたけれど、鳥の爪楊枝入れが欲しかったと小さい人が言っていた。
そうだね、と。
やはり私も欲しかった。
物は増えるけれど、役に立つものではないかもしれないけれど、仕掛けがある鳥さんの爪楊枝入れは欲しかった。おもしろかった。
ちょっとだけ傷があったのが、ちょっとだけ気になったんだけどもね、まあ古道具だしね。
今度、本を返しに行くときに、また見てくるね、と。そしてご縁があったらまた会えるね、と思った。
ご縁ってなにー?!と、小さい人が声高らかに話していた。
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目的地に向かったところ、道中、思いがけない出会いがあって思いがけない体験をしたよ、予定していた目的地より真の目的地みたいだったよ!ほんとはこっちが本命だった??という体験をしたよ、というおはなし。
宝物みたいなとある1日のおはなし。
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