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ちょす氏
とりあえず転生
光はない。
ただ、ただ、落ちていくのみ。そうか、これが海に沈んでいく人間の気持ちというやつか。
「そうそう、そういう感じっぽいよ?」
そんな俺の前に突如現れたのは、一人⋯⋯というべきか、光る人型が俺の横で肘を曲げ、手を頭に当てて添い寝するように一緒に沈んでいっている。
突然現れた訳なのだから、多分普通の生き物ではないはずだ。
「貴方、でいいんでしょうか?それとも女性の方かな?」
「ふんふん、中々面白い人間の魂だね」
「面白い⋯⋯ですか?」
「うん! だって、ここ、かなりの徳を積まないと来れないレアな貯蔵庫だからね」
徳⋯⋯。つまりは善行ということだろうか?
「記憶があまりありません」
「それは当たり前だよ。むしろ覚えていたらこっちがビックリするくらい」
わぁっ!と手を開いて高い声で笑う。
「面白い魂もいるもんだねぇ⋯⋯ここまで清らかな魂も中々ないくらいだよ」
「それはいい事⋯⋯なんでしょうか」
「もちろん! だけど、綺麗過ぎても駄目なんだよね」
「そんな事が?」
真っ白な方がいいと思うのだが⋯⋯。
「魂というのは、白も黒も必要なの。その為に人の感情がある訳で」
「あまり記憶にはありませんが、そういうものなのですね」
「そうだよ! 魂の訓練って言われているのはそういうこと! 白と黒を合わせる事で、立派な魂が育ち、様々な事に使用されていくんだ!」
指揮者のように両手を広げ、性別不明の光る人型はふよふよ大の字で声を出して笑っている。
その様子は、まさに神様の娯楽みたいなものに近い。軽々としていてさも当たり前かのように発言する所が。
「さて──」
「⋯⋯?」
「このエリアで彷徨っているのは君一人だね⋯⋯んー⋯⋯じゃあ、適当に彷徨ってる善行も多いけど悪いのも多い感じの魂を探しに行こーっと!」
そう言って光る人型は小さな点となって、ピュンと来た時と同じように突如姿を消した。
消えれば、また暗闇でそこの見えない奈落に落ちていく。しかしそこまでの嫌悪や恐怖感はない。
これも、きっと正常に働いているからだろうが。
⋯⋯そんな時期もあった。
「それじゃ折角だし、楽しんできてねー!」
「え?どういう事ですか?」
「ん? いや、ここまでの善行を積んでいるとね、アレだからね。僕が管轄している世界にご招待して遊んでもらって」
え、全然わかんないだけど?
「ふぇ〜。善行ポイントが凄まじいね。これならこうするしかないか⋯⋯」
ピッピピッと素早い操作で何やら設定をしているようだった。
「どうする? 最近の子たちはつえーしたい?」
「いえ⋯⋯」
「あぁ、今は色々混じってるからね。スローライフが送りたい魂だっけかな?」
「どちらかといえば、そうだと思います」
「じゃあ⋯⋯」
そうこうしている内に、自分の身体が薄くなっている事に気づく。
「色々設定したし、面白いギフトもあげといたから! 好きに生きてね!ミッションとかなんて全くないから!」
何か言おうとしたのだが、もう声を発する事はできなくなっていて、もがくだけで何も言う事ができなかった。
「人を殺しても、利用しても、どう使おうが何でもいいから!何故なら僕は────神様だからね」
とりあえず、僕らが想像する神様とは色々おかしいようだ。
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