第21話 飲まれた飯田翔


まあ何というか。

先生に捕まってクラスメイト全員が反省文30枚という異例な処罰事態に陥った。

俺はその事に関して陸羽を逃がせたので良かった、と思っている。

陸羽だけは処罰を逃れた。


「いやー。これこそ青春だな!」

「ふざけんな。お前のせいでクソえらい目にあっただろ。殺すぞ」

「まあでも。あくまで植え付けは出来たんじゃねーか?」

「貴様という奴は」

「知ってるだろテメーも。俺がこういう奴だって事を」

「まあ知ってるけどな。屑っぷりが凄まじい野郎だって事も」

「おう。そういう事だ。笑顔、マイペースで行こうぜ」


ったくこのクソ野郎が。

そう思いながらも当山に頭を下げる。

すると当山は目を丸くした。

それから?!という感じの顔をする。


「ど、どうしたよ」

「全てお前のお陰だ。当山。こうして改めて不安じゃなくなったのも。愛を確認できたのもな」

「待て待て。まだ何もしてねぇよ」

「いや。俺は...お前のお陰だって思っているしな。全てが」

「( ゚Д゚)(・∀・)」

「お前張り倒すぞ」


勇気を持ったってのによ。

そう思いながら俺は当山を見る。

当山は苦笑しながらその顔を止めた。

それから俺を見てくる。


「クラスメイトにも例を言ってやったらどうだ」

「...ああ」


そして俺はクラスメイトを見る。

クラスメイト達は皆、こっちを見ていた。

俺は改めて頭を下げる。

それからお礼を告げながら皆を見る。


「おう。水くせぇ」

「今更かよ。アハハ」

「ったく。同じクラスメイトなんだからよ」

「...お前らに出会えて良かった」

「おう。んでこれからどうすんだよ。お前」


クラスメイトの1人が疑問そうに俺を見る。

俺は考え込みながら答える。

マジに分からない。


「どうなるかも分からん。だけど...後悔の無い様に生きてぇな」

「そうか。ならそうしろ」

「俺らは反省文だけどな。当山のせいで」

「そうだな。まあ停学よりマシだろ」


そして苦笑し合うクラスメイト。

俺はその姿を見ながら「...」となって見ていると。

当山がダンディな顔で寄って来た。

な?お礼を言って良かったろ?、的な感じで、だ。


「そうだな」

「...お前は背負い込みすぎだ」

「たまには荷物をおろすのも良いかもな」

「おう。何かあったら相談しろ。...絶対にな」

「...ああ。もし迷う事があったらお前に相談する」

「そうだな。で。話は変わるが」

「おう」

「報酬くれ」

「ざけんな貴様」


俺達も笑い合う。

それから放課後になった。

俺は陸羽と一緒に歩いていると...。

ジュースを売っている店の前に。


「...陶冶...」

「お前...飯田。何をしている」

「...見て分かる通り。ジュースを飲んでいる」

「能天気だなお前。お前のせいで今の状況は悪化するばかりだ」

「私せいじゃない」

「お前のせいだ。能天気屑が」

「...その代わりに私は貴方に会って無いでしょう」

「お前は会おうが会うまいが悪意の元凶だよ。マジに」


そして俺は飯田を睨む。

飯田は口ごもってから何も言わなくなる。

数秒してから口を開く飯田。


「私は...今回の翔也の事。私が元凶だってなっているからまあ半ばは認める」

「...」

「...私は...全てを捨てる様にするよ。身の危険も感じる」

「そうだな。お前の様な恥さらしはそうするべきだった」

「...だね」


飯田は黙ってからジュースを飲む。

それからストローから口を離す。

そして俺を見る。


「反省している」

「...遅いな。反省が」

「...じゃあどう言えば良いの」

「言葉で解決出来る次元を超えたんだよ。陸羽にも迷惑が掛かっているしな。お前のせいはある。半分」

「...」

「お前が行動を気を付けるしかない。お前の行動で全てが狂っている」


そして俺は飯田を睨み付ける。

すると飯田は「...」となってから黙る。

それから溜息を吐いてから顔を上げてからゴミ箱にカップを捨てる。

踵を無言で返した。


「待てコラ。逃げる気か」

「逃げる...つもりは無いけど。今じゃないって思うから」

「...今じゃないってのは」

「話し合いが出来ない。今の状況はそうでしょ」

「...お前は破綻しているから状況をどう変えようが同じだ」

「...じゃあ話すけど」

「...」

「翔也の事」

「ああ」


そして飯田は口ごもる。

それから顔を上げてから俺を見る。

真っ直ぐに射抜いた。

俺は?を浮かべながら飯田を見る。


「彼は洗脳されている。お父さんに」

「...母親にもか」

「そうだね。みんな頭がおかしい。...それは曾祖父から続いているみたいだけど」

「...」

「彼は確かにまともそうに見えるけど。無茶苦茶に金遣いが荒い」

「まともじゃないけどな。成程な」

「...彼は執念深いから。貴方にも攻撃を止めないと思う」

「...そうだな。今までの傾向から見ればな」

「...だから私は一次的に距離を取る事にした。全てが遅いけどね」


そう言いながら飯田は笑みを浮かべる。

疲れた様な笑みだった。

俺は聞いてみる。


「お前は反省したか」

「...それどういう意味なの?」

「お前が反省したのか。浮気について」

「...もうどっちでも良いよ。そんなの。敢えて答えるなら私は反省できない」

「そうか」


そして飯田はそのまま去って行く。

俺は人込みに紛れるその屑を見ながら空を見上げる。

すると横に居た陸羽が一歩踏み出した。

それから俺を見る。


「やっぱり屑ですね」

「...ごく微量に期待はしていた。だけど無理だな。ありゃ」

「もう飲まれていますね。飯田は」

「多分な。アイツ。つまり東郷翔也に飲まれた」


そう話しながら俺達は顔を見合わせる。

それからそのまま帰宅する為に再度、歩き出した。

そして帰宅をする。

途中で陸羽と別れてから、だ。

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