第46話 天界の中立派
戦況はローゼス優勢であったが、問題は女王ルーナの容態である。心臓に、神器による傷やら、呪い、今回は暗黒魔法で大きなダメージを受けており、改善自体困難な状態であった。
ジルドレイの血液の供給を受けるが、もともと吸血は、治癒を目的とはしていない生命力自体の補給であるため、生命維持は出来ても、傷自体は治癒しない。
過去3回の天界の侵攻は、見かけ上は全てローゼスの勝利であったが、天界としてもルーナ殺害は阻止されたものの、かなりのダメージを負わせる事に成功しているのだ。
一方天界においても、意見は統一されておらず、地上浄化作戦を良しとしない、ポセイドンやアテナらは、アンブロシアに詰めて天界の動きに目を光らせていた。
そんな情勢の中で中立派のヘスティアやアルテミスらが動き始めていた。彼らはルーナを殺害せずに天界に幽閉すると言う考えであった。
中立派の彼らとしては、ルーナが現状で天界に仇なす存在とは思っていなかったのだが、国力を急激に伸ばして来たローゼスとルーナに対して野放しにする訳にも行かなかったのだ。そんな情勢の中、次に天の使いとして地上に現れたのは、温厚な性格のヘスティアであった。
前聖戦では一時ルーナの母メルティアも幽閉されて酷い目にあっている過去があったので、余談は許さないが今回は天界の意向を伝えに来ただけであるとの言い分であり、護衛も最低限であったことから、ルーナは迎え入れる事にしたのだった。
「ルーナ女王、初めてお目にかかります。灯火の女神ヘスティアです。先ずは突然の来訪に応じて頂き感謝します。」
ルーナは非常に状態が悪い中、なんとかヘスティアに相対していた。
「貴女も私を殺しにきたの?」
「警戒させて御免なさい。私はルーナ女王貴女と交渉しにきたの。」ルーナは必死に胸の痛みに耐えながらヘスティアと対峙していた。
その状況を察したヘスティアが話し出す。「てみじかに話しますね。」
「ルーナ王女、貴女は力を持ちすぎました。神族がラグナロクを警戒する程に・・・」
ルーナは胸を掻きむしりながらも話し出す。
「天界は、なぜその様な事を考えるのでしょうか?確かに、母メルティアの予言によって貴女方が地上浄化作戦の時期を虎視眈々と狙っていると聞いています。ただ浄化の名を借りた殺戮を認める訳にいかないんですよ。その為に強くなる努力してきたのです。こちらから天界に仇なそうとしている訳ではありません。」
「個人的にそう信じてはいるのですが、神は傲慢にして臆病でプライドが高いのです。貴女はすでに一柱、アーレスを冥界に送ってしまいました。タダでは済まされないのです。」
「なんて勝手な・・・アーレスは自分から勝手にローゼスに何度も攻め込んできては、倒れただけですよ。私達は防衛すらしてはいけないのですか?」
「尤もな言い分ですが、それが神なのです。そこで、中立派である私達から提案があるのです。ルーナ女王、貴女を天界で軟禁させて頂きたい。」
「バカな!私だけ捉えたからと言って、まだアンブロシアが残っています。ある程度平等な交渉であれば受け入れますが、私を幽閉すれば次は妹のセイラの討伐をするのでしょう?」
「そうですね。アンブロシアにもセイラ皇女を引き渡すように要求する事になりますね。」
「完全な不平等条約ですが、天界の考えも一様ではありません。私達中立派は貴女達との戦いは危険だと感じています。だから、もしも貴女達姉妹が投降してくれるのであれば、地上浄化反対派のアテナやポセイドンと合流しても良いと思っているのです。」
「では、主神であるゼウスやアポロン、ハーデスらを抑えられると言うことですか?」
「抑止にはなるでしょう。」
「では、私達姉妹を失った地上を貴女達が護ってくださるのですか?」
「・・・約束します。」
「でも私が納得してもアンブロシアのセイラも納得するかもわからないのですよ?」
「だから、貴女にも協力して欲しいのです。その証拠に天界に来ていただけたら、そのボロボロになったお身体を治して差し上げます。」
「・・・少し考える時間を下さい・・・」一旦交渉は中断となった。
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