一人でも戦うが、一人ではないと信じている

「グ……オオ…ォォ…」


 魔物が頭から縦に真っ二つになり、切られて別れた体が左右にそれぞれ倒れる。


「パクスさん!やりましたね」


 ルトスが勝ったことによる喜びを伝えた。


「ああ。そうだな」


 …………………………………………


「ーーラエティア、そっちはどうですか」


「こっちも終わったッスよ」


 パクスとは別に魔物が発生していた所へといたベレスとラエティアが魔物を倒したことを報告していた。


 …………………………………………


「……どうやら、終わったようですね」


 精霊の地で事の結果を見ていたスピリスは終わったことを呟いた。


「あの…なんで僕は行ってはいけなかったんですか?」


 一人呟いていたスピリスに話しかけたのは、パクス達が戦っていた中精霊の地に残っていたヴィルトだ。


「精霊術師になったとしてもあなたはなったばかり。経験が足りません」


「経験なんかなくても…どうにかできます」


「いいですか、精霊術師は精霊の力を扱えるかどうかにかかっているのです。扱えなければただの足手まとい、"真の力"を解放できなくともせめて精霊との絆を築かなくては」


「…………」


 スピリスの言葉にヴィルトは黙ってしまった。


「これからのためにも精霊術師として頑張っていきましょう」


「ーー!はい!」


 スピリスのフォローによって元気を取り戻した。


 ………………………………


「お師匠様!」


「パクス様」


「師匠」


 離れていたラエティア、ベレス、ヴィルトその他ベックやフィリス騎士団の面々が集まってきた。


「いったいなんだったのでしょうか?魔物が異常に発生するなんて」


「こんなことができるのは、おそらく…神の十柱の仕業でしょう」


「神の十柱…」


 ルトスの疑問にスピリスが答え、出てきた言葉にベレスが怒りを露にする。


 神の十柱と聞いて、パクスにも誰がやったのか見当がつく。


「まさか…神の十柱の仕業とは」


「最近奴らのやることが多くなって、存在感が目立ってきたな」


「いいじゃないですか。私たちの目的は奴らを壊滅させること、むしろ好都合です」


「そうだな」


 …………その後、


 視界に入る魔物をひたすら討伐し、依頼の内容を完了。


 結局、神の使途には会えなかった。もし、会ってしまったらその場で戦うことになっていた。まさに死闘だ。


 スピリスの言う通り、まだまだ力不足。いざというときの準備もできていない。もし今戦ったら負けるだろう。


 ……異世界にきて、目標といえるものが決まった。せっかく、異世界にきたのにこんな思いをしなくてはならないのが残念だが…こうしたことで仲間と出会うことができた。


 戦う時はいつだって一人だ。周りに仲間がいても、一人で戦う。


 でも、仲間という存在がいるだけで、俺は一人じゃないと信じてる。


 ……………………


 パクスは帰りにそう思って、アウロラ王国へと帰った。

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