情動

@Amanoru

ここは、愛。光の当たる角度の影響で、7色以上の変化をする泡と、ヒョロヒョロと短冊のように靡きながら空を泳ぐ小さな、白く細い流線形な輪郭の魚、それらが無量大数存在している。そこに地面は無いが、愛と未来を隔てるように、端から端まで所々に丸く薄灰の影をつけた、物体に干渉されることのない虚の雲が、ビッシリと凪の海のようにある。空は光を嫌わず、恣にさせている。はるか上から真っ直ぐにゆっくりと差し込む光は、満遍なくすべてを照らす。そこに暮らしはなく、規律も自由もない。あるのは本能だけ。泡と魚が本能のままに交わって意思が生まれたとしても、意思は重く、愛には荷が重いので、敷かれた雲を突き抜けて下へ行ってしまう。別の言い方をすると、意思は下へ進む本能をもつ、その速度が速いため愛の外へ出てしまうのだ。

そしてまた1つ意思が生まれ、その途端に速度を上げた。下へ下へ。

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