初めて湧いた情

春本 快楓

プロローグ(中学1年生 9月9日)

 体育祭の閉会式が終わり、僕は友達を探していた。この後、打ち上げをしようと提案するつもりだった。僕は、体育祭自体よりも、打ち上げの方が楽しみなまでであったのだ。

 自分のクラスの教室の扉の前へ辿り着くまでは。

 

 今日の打ち上げ、どこ行く? 焼肉? 寿司?

 

 焼肉でよくね。せいやは寿司が良いって絶対言うだろうけど。あいつ変に逆張り好きだからな。

 

 せいやは誘わないでいいよ。あいつのノリ、よく分からないんだよ。

 

 たしかに。なんか、一人だけ調子がおかしいよね。

 

 疲れを癒す打ち上げなのに、疲れる奴呼んでどうするんだよ。

 

 僕はこの時、教室に足を踏み入れる訳でもなく、その場から去ることもせず、ただひたすら、拳を握りしめながら突っ立っていた。

 あいつらが教室を出て、僕を見た時の表情は今でも忘れられない。

 

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