錯綜した殺意

菊間由佳莉

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 これから述べられることは、岺和れいわ六年に発生した、「鷹部屋たかべや市における高校生殺人事件」、通称「部屋高事件」の全貌である。

 部屋高事件——この事件は何人もの若き命が失われ、且つ犯行の残虐性が世間の注目を集めた。しかしながら、事件関係者の多くが未成年であったために警察機関による情報公開が少なく、事実の多くが公になることがなかった。それだからか、これを執筆している現在、インターネット上に流布しているこの事件に関する情報の多くがでたらめばかりである。また、そのでたらめが、今なお苦しんでいる事件関係者に多大な被害を与えてしまっている。

 この事件を解決へと導いた阿賀沙あがさかおる氏もこの現状を憂いており、この事件に関する事実を公表すべきだと感じたそうである。そこで警察当局と事件関係者、並びに被害者遺族同意のもと、すべての事実を公開する運びとなった。私は氏の依頼を受け、本書を手掛けることとなった。

 今、私の机上にはいくつかの捜査資料がある。一つは警察の捜査報告書、もう一つが阿賀沙氏のメモ、最後が事件関係者の日記である。とくに最後の日記に関しては、我々部外者が知りえない場面に関する記述が多くあり、大いに参考にさせてもらった。この場を借りて感謝を申し上げる。

(追記)

 いまこの文章を読んでおられる方々にとって、これからお話しする事件はいわゆるで起きた事件である。そちらの世界には存在しない種族だったり常識があったりするので、地の文にて軽い注釈を入れさせて頂くことをご容赦願いたい。

 先に述べた通りこれを読まれる方々にとってこの事件はフィクション同然であり、そちらの世界に類似した事件、団体、人物があったとしても全く関係ないことを明記しておく。それに合わせてこちらの世界で出版した際、仮名かめいにしておいた事件関係者の名前を本当のものにしたり、関係者にとって不都合な事実を復活させておいたりしたことを明かしておこう。



 

 

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