部屋
九戸政景
本文
「はあ、はあ……」
俺は息を切らしながら男のクラスメートを背負って家まで帰ってきた。家には俺しかいない。親は今日からの少し長めの連休を使った旅行でしばらく出掛けているからだ。
「……ようやく二人きりになれるな」
誘拐してきたクラスメートを床に寝かせる。そしてシャツの上からでもわかる厚い胸板に舌舐りをして、ボタンを少しずつはずしていた時だった。
「ん……」
クラスメートが起きてしまった。もう少しだったのにと思いながらもボタンを外し続けていると、クラスメートはボンヤリとした様子で俺を見てきた。
「あれ……俺、どうしてここに?」
「俺がお前を拐ってきたからだよ」
「え?」
「お前が悪いんだぞ。少し女顔なのにそのがっしりとした肉体が俺を……」
「そうか、お前は俺の事をそんな風に見てたのか」
「悪いかよ!? 男の俺が男のお前を好きになるのが悪いか!?」
「いいや、悪くないさ」
「え?」
クラスメートは覚醒した様子で立ち上がると、俺を見下ろしながらにやりと笑った。
「俺も我慢しなくて済むからな」
「お、お前……」
「ここまでの事をしたって事は、親とかの邪魔が入らないようにはしてるんだろ? だったら、俺だってもう我慢しなくていい。拐ってくれたお礼にお前の親が帰ってくるまでみっちりこの部屋で可愛がってやるよ。出られないようにする道具もあるんだろうしな」
「あ、あ……」
その日から親が帰ってくる日まで俺は部屋から出られなくなった。いや、正確には出なくなった。何故なら、クラスメートが俺の事をしっかりと可愛がってくれるから出ようとすら思えなくなったのだから。
部屋 九戸政景 @2012712
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