緋石の鬼

黒川橘佳

序章 紅

目の前が紅に燃えていた。

熱い。

熱い熱い熱い。

視界は真っ暗で何も見えず、耳鳴りの中に怒号が響いている。

何を言っているのか、何を言われているのかわからず、知りたいと思う。

知りたい、これはなんだ。

どうしてこうなってしまった。

瞼を開く。

暗かった視界が、真紅で埋め尽くされる。

燃えていた。

煌々と炎が燃えていた。


「あ」


口から意味のない母音が出た。


「あ」


どうしてこうなった。

なぜ。なぜ。なぜ。

それから、頭のどこかで別の自分が叫ぶ。

熱い。逃げろ。逃げろ。

いや違う。

————————助けて。



瞳に映るのは、炎のような、緋色の旗。

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