第13話 セーシェルに再訪問
ブルガン??
俺たちはセーシェルに行くはずではと思もっていたら、アプリコットさんがたどたどしい日本語で説明してくれた。
セーシェルに向かい、そこで王子たちと合流後に一緒にブルガン王国向かうらしい。
アプリコットさんがそこまで説明すると、三等書記官の方が自己紹介を日本語で、しかもかなり流暢にしてくれた。
名前をドードンさんといい、三等書記官で日本ではブルガンの観光案内などを通して広報活動をしているとか。
あの北海さんの直接の上司にあたるらしく、今後何度も会うことになりそうなのでよろしくとあった。
成田の出発ロビーで、そこまであいさつを交わすと、俺たちにチケットを渡して通関に入る。
ビジネスクラスでも驚いたのだが、今度はファーストクラスでの移動になるそうだ。
まあ、外交官と一緒ということもあるし、何より産油国の王子の部下となるので、今後は王子の経費で動くから、王子基準でファーストクラスになるようだ。
王子のような人種になると、普通のファーストクラスでの移動もかなり珍しく、普通は自家用機かチャーター機での移動になるらしい。
俺はとんでもない人の部下になったようだ。
まあ、俺たちは成田のラウンジで飛行機の時間まで待つことになった。
そこで、先の度三等書記官のドードンさんからいろいろとお話を聞く。
はっきり言って、あまり聞きたくはない話だった。
今のブルガン王国での国王継承については何ら問題なく、ローレン王子の兄にあたる人がすでに皇太子候補として働いているそうだ。
俺がローレン王子の部下になることが決まっていることから、ここで声を潜めてさらに突っ込んだ説明もされた。
王位継承については過去に王兄殿下の時に無茶があり、いまだにそれが国内で分断された勢力を生んでいるとか。
まだ今なら問題にはなっていないが、最近王兄殿下を担いでいた勢力がローレン王子を担いで王位につけようとする勢力と、王兄とローレン殿下の二人を王宮から遠ざけようとする勢力との間に緊張が増していると教えてくれた。
ちょうど見本市初日に聞いた大きな音は、直接ローレン王子を狙ったテロリストの仕業だとか。
そんなことがあったために、無理やりクルーザーを買い取ってまでドバイから離れたのだろう。
あんまり聞きたくない情報だったが、そのあおりを受けて今色々と動きがあるので、俺の雇用や自分の帰国があるらしいとまで教えてくれ、身の回りに十分気をつけろと注意してくれた。
日本国内にいる限りまず問題はないだろうが、海外、特に中東では何があるかわからないので、今回同行しているというのだ。
あまりの内容に途端に気分が沈んでいく。
アプリコットさんの話では、中東では割とどこでもある話らしく、今更ですねって言われたけど、なんだよ今更って。
すると、今度はドードンさんとメイドさんが二人とも、それもそうかとか言っているようだ。
そのあと合衆国の選挙だってまともに行われていなのだし、権力の周りにはつきものですねって、今度は俺にもわかるように日本語で話してくれた。
最後に、権力周りにある暴力について、一番安全なのは日本くらいですかねってリップサービスまで忘れていないのはさすが外交官だと思ったけど、今まで生きてきた経験から考えてもそんなことを感じたことはなかった。
そういえば合衆国の前の選挙はネットでも色々と言われていたし、案外本当に今更なのかもしれない。
気分が沈んだまま酒をも飲みながらラウンジで出発まで待った。
1時間も待たずに俺たちの乗る飛行機の搭乗を知らせるアナウンスがあったので、俺たちは飛行機に向かった。
ドバイまではファーストクラスでの移動だったのだが、乗る直前に聞いた話がやたらとシリアスな内容だったこともあり、小心者の俺には持て余す。
せっかくのファーストクラスも堪能できずにドバイに着いた。
ここドバイで、アプリコットさんは別件があるそうで別れると言い出した。
俺の部下でないので、アプリコットさんの離別をそのまま了承して別れて、その日のうちにセーシェルに向かう飛行機に乗った。
日本に帰るときには時間が合わずに宿泊となったが、ドバイからセーシェルに向かうときには乗り継ぎがうまくいき、それほど待たずにセーシェル行きの飛行機に乗ることができた。
当然、ファーストクラスでの移動になるが、ドバイから向かう飛行機は若干小さくなったためか、それとも二度目のファーストクラスのために感動が薄れたためかは知らないが、それほど感動できずにセーシェル着いてしまった。
セーシェルの空港には葵さんが迎えの車をよこして出迎えてくれていた。
彼女の笑顔で、到着まで抱えていた灰色な気分が一挙に吹き飛んだ気がした。
俺たちは葵さんが用意してくれた車で、あの別荘に向かった。
別荘に着くとすぐにあの応接室に連れていかれ、俺の退職の確認とローレン王子の元で働くことの確認を取られた。
王兄殿下立会いの下、宣誓が求められたので俺は言われるがまま宣誓の言葉を述べていた。
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