第2章 異能力開花編

第16話 到着。そして発色

「着いた····」

誰かがそうポツリと口にした。

ぼく達は目指していた【異能力開発研究所】にようやくたどり着いたのである。

少し寄り道はしたけれど、そこで大きな『何か』を得られた気はする。

ぼく達はこれから【異能】を手に出来る。

不安や期待、様々な気持ちを抱えながら、ぼく達はゆっくりと扉を開けた。



するとそこには人気ひとけが無くも広々としたエントランス。天井にはお洒落なシャンデリアが飾られ、室内見るからに高価なプラチナの像、壁には立派な動物の頭の剥製がいくつも飾ってあった。

豪華なしつらえに圧倒されながらも、ぼく達は正面の階段を登り、受け付けへと向かった。

受け付け嬢と思われるおさげで眼鏡をかけた女性に祐葉は声をかける。

「すいません、ここで自分が持つ異能力を開花出来ると知ってここへ来ました俺たち5人全員、自分の異能力を知りたいんです」

「かしこまりました。それではご案内致しますね。柚月ゆづきちゃーん」

「は、はい!詩枝南しえなさん」

「ご挨拶申し上げます。私はこちらの【異能力開発研究所】の受付嬢をしております詩枝南しえなと申します。以後お見知りおきを。そしてこちらが本日皆さんをご案内させて頂く柚月ゆづきちゃんです」

「あの...初めまして。柚月ゆづきです。どうぞよろしくお願いいたします!!」

詩枝南しえなさん物腰柔らかくとても丁寧にぼく達に挨拶をしてくれた。

案内人であるという柚月ゆづきさんは少し緊張しながらもぺこりと深くお辞儀をして挨拶してくれた。

「じゃあ柚月ゆづきちゃん、後は宜しくね」

「は、はい!詩枝南しえなさん!」

詩枝南しえなさんはそう言うとまた軽くぼく達に礼をして、椅子に座った。

ぼく達は柚月ゆづきさんの案内のもと、更に上の階へと登った。


「ちなみに、ここではどういった形で異能力を測ることになってるんですか?」

「あ、雪姉ぇそれあたしが今聞こうとおもってたのにぃ〜」

「恵里菜と疑問に思った事が被るなんて、ちょっとびっくり...」

「ねぇ〜それどういう意味ぃ〜?」

2人のやり取りに柚月ゆづきさんは「あはは...」と若干苦笑いを浮かべながら答えてくれた。

「え〜と、こちらでは皆様に私共が用意した紋章の前に手を当てていただきます。その紋章は無色透明ですが、紋章の前に手をかざすことで色が変化します。そしてその色は人によって異なります。その色を元に、大まかな系統を知ることが出来ます。」

そう説明を受けながら歩いていき、ぼく達は球体状のホールに案内された。

「何これ····」

「すげぇ······」

皆言葉を失っていた。そこにはゆうに直径4mは超える、無色透明の水で描かれたかのような大きな紋章がそこに広がっていた。

「えっと、ではやり方を説明します」

柚月さんはそう言い、紋章の前に手をかざした。

すると、紋章が柔らかく光ったかと思ったら徐々に銀色に染まって行った。

「こんな風にどなたでもここに手をかざせば何かしらの反応が起きて色がつきます。私の場合は銀色です。詳しい内容は皆さんの色が出揃ってから説明いたしますね」

柚月さんそう言って脇へとよけていった。

いよいよ判明する。ぼく達がそれぞれの【異能】が。

そして順番に手をかざすことにした。


まずは祐葉。右手をゆっくりと伸ばし、紋章に向けて手をかざす。すると紋章が柔らかい光に包まれ、青色へと変わっていった。

「これは····」

「はい、祐葉さんは青色ですね。では次の方」

「なんか、あんま好きな色じゃないんだがな。もっとこうリーダーっぽい赤色とかが好きなんだけどなぁ」

「確かに祐葉って赤が好きなイメージあるなぁ〜」

「赤はアンタのこと嫌いかもしれないけどね」

「おいどういう意味だ雪嶺」

ぼくも正直意外だった。祐葉の言う通り、てっきり赤系統の色が来るものだと思っていたから。

次は雪姉ぇ。手をかざすと再び紋章は光に包まれる。

「この色は······」

「雪嶺さんは灰色ですね。では次の方どうぞ」

「そう····」

また意外だった。雪姉ぇもパーティーのまとめ役的存在。こんな色が来るなんて······。

次は澁鬼くん。手をかざすと、紋章は紫色になった。

次に恵里菜。手をかざすと、紋章は真っ黒に染まった。

「これって恵里菜の心がどす黒いとかじゃないわよね?有り得そうだからちょいと怖いけど」

「雪姉ぇどういう意味ぃ〜? ジー」

ハッキリ言って、ぼくはどれも皆にはそれぞれ似合わない色だなと思った。だけどそれは皆も同じなようで、自分の出た色に全員ちょっと不満そうだった。

「では最後に佐斗葉さん、こちらへどうぞ」

ぼくは胸の鼓動を必死で奥底へと押し込み、ゆっくりと手をかざした。

そして紋章は柔らかい光を帯び、ゆっくりと色がつき始める。

「これは...オレンジ色......?」

「佐斗葉さんは橙色ですね。はい、それでは皆さんお疲れ様でした」

先程まど脇にいた柚月さんがぼく達の前に立つ。

オレンジ色、正直ぼくはこの色はあんまり好きじゃない。何でかって言われたら難しいんだけど。

どうやら全員あまり好きでは無い色が出たようだ。これは多分偶然なんかじゃない。何か意味があるのかな?

「今回皆さんが出た色にはもちろん意味があります。この色には、皆さんの深層心理に深く関係しているんです」

「深層心理?それと異能力と何の関係がある?」

「異能力はタダで手に入るものではありません。皆さんは自身の心の真髄を理解し、それを皆さんがお手持ちの武器に理解した真髄を映すことで初めて【異能】が発現するのです」

「心の····真髄······?」

ぼくは話に着いていけなかった。いや、ぼくだけじゃない。他の皆も同じようなリアクションを取っている。

「何なんだよ。その理解すべき心の真髄って」

祐葉の質問に対し、先程までのあたふた度合いなんて露ほども感じられない神妙なおも持ちで柚月さんは答えた。


心的外傷PTSD、つまりトラウマです」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


パーティーメンバーの色を整理。


佐斗葉→オレンジ

祐葉→青

雪嶺→灰色

恵里菜→黒

澁鬼→紫





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