第14話 手紙
ぼく達は尾根から更に歩き、元いた町と、目的地である研究所の間の地点辺りまで着いた。
道中全員無言だった。重く、肺や心臓が押しつぶされそうな空気がぼく達を包んでいた。
「ここで休みましょう」
雪姉ぇが呟くと全員足を止め、その場に座り込んだ。やるせない思い、どうしようもない悔しさでぼくは心がいっぱいだった。きっと皆も同じ気持ちかもしれない。言葉は無くとも感じ取れるものがあった。
澁鬼くんはまだ雪姉ぇの背中で寝ている。そんな彼を雪姉ぇはゆっくりと下ろし、地面に横たわらせた。
時刻は朝、大きく光る半円がぼく達を照らし始めた。
ぼくは澁鬼くんのお母さんからもらった朝ご飯用の袋を渡せれていたことを思い出す。
閉じられていた袋を開け、中を見てみると、1枚の手紙が入っていた。
差し出し人は澁鬼くんのお母さんからだった。
ぼくは、手紙の存在を皆に知らせ、声を上げて読んだ。
「佐斗葉さん、祐葉さん、雪嶺さん、恵里菜さん。
あなた方がこの手紙を読んでいる頃にはもう、私たちはもう、この世界にはいないでしょう。
丁度1ヶ月前、湖の近くで夫が襲われ、その衝撃で水を
「うっ......うぅぅぅ......」
ぼくは、最後まで手紙を読み切ることが出来なかった。気がつけば景色は歪んでかすみ、嗚咽が漏れていた。
「うぅぅぅ...あぁ......うぅぅぅっ...!!」
「ぅぅぅぅぅ...ああああぁぁ!!!!」
「......ッッ!!」
「...クゥッ......!」
ぼくらを照らしていた半円はいつの間にか大きな円を描いていた。
そしてまだ眠る澁鬼くんを照らしていた。
それはまるで、彼の母親のように、温かく、優しく、柔らかく、彼を包んでいるようだった。
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