フォーチューンクッキー実験論

人生において初めてフォーチューンクッキーを貰った。友人曰く、開けたときに出た紙に書かれた文言が占いになっているとか。


初めてなもので、開け方がわからない。屈強な見た目ではないし、かじって開けるのが正解だろうか。しかし、占いの紙まで食べてしまったら意味がない。


そのまま端をつかんで割る?それなら問題ないかもしれない。しかしクッキーを砕いてしまうかも。それは力量の調整次第か。食べる相手に力量の調整を求めるとは。これを作った人間も考えたものだな。


思惑に沿ったか否か。端をつかんで割ってみる。思いの外さっくりと割れてしまって、逆に困惑している。きれいに割れた中から出てきた折りたたまれた紙切れ1枚。ほう、折りたたまれた物が出てきたか。想像ではくるくると巻かれた物がでてくると思っていたんだけど。


占いの文言を読む前にクッキーをかじる。うん、美味しい。ほんのりとバニラエッセンスのいい香りがしてくる。この店のはミルキーな味で、食感を楽しむためか程よくかために焼き上がっている。中の文言を守るためかもしれないが。食感が楽しい。あっという間に食べ終えてしまい、なんだか物悲しくなってきた。フォーチューンクッキーってそういう楽しみ方もあるのか。


さて、そろそろ中の文言が気になってきた。クッキーも占いも楽しめる。これを作った人間はきっとできるやつだったんだろう。


そういえば…人間はすぐ流派を作りたがるが、このフォーチューンクッキーに関しての流派を作った人間はいるのだろうか。例えば、そのままかじってすぐ中身をみる派、クッキーを食べていたら全てのものを食べていた派…ちょっと表現が…ふむ。まあ、想像の話…だから。深堀の必要性が皆無であるに等しい。私が確認すべきはフォーチューンクッキーを食べるにあたっての私的なプロセスではない。


私の目的はフォーチューンクッキーを食べるうえでの過程とその擬似的な心境だ。


さて、そろそろ、外に出され放置されていた占いの文言を読もうか。どれどれ…


「これで思考及行動実験を終了。AI番号250631、お疲れ様でした。」


…ああ、そう。

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