お短編ですわよ

初心者ビギナーのファースト

魔法少女になった誰かとその代償

女の子が誰もが夢見る魔法少女はいる。私はいないと思っていたけどいるって知ったら夢見たくなっちゃった。


一人寂しくお弁当を食べる。私はひとりぼっちだったから、お弁当を食べる相手はいない。だれかとたべようたべようって焦っていたけど、今はもう慣れが来た。


何回も何回も私には「慣れ」がきた。でもそれが来ても心の隅にある皆の当たり前を羨む気持ちは一切変わることがないから嫌なんだ。


今日もひとりぼっちかぁと思いつつ無表情でお弁当を食べていた時、私の前にふわふわとした何かが来たんだ。


「そこでなにしてるの?もしよければ…はなしをききたいな。」


人じゃない、大きな大福が少し溶けて中身が見えてしまったような…かといって小さな翼があるから鳥のような…なんとも形容し難い何かが私のところに来る。


溶けてるから地面に足をつけられないけど…と私の隣に来た。そんなことは気にしない。私は楽しい話をしようと口を開けようとした。しかし、何を話していいかが分からない。


考え込んでいると、そのふよふよとした生き物が言ったの。


「きみにはそしつがある。こない?ひとりなら…」


「いきたい。一人じゃないなら。」


私はひとりぼっちだった。たとえ知らない存在でもそばにいてほしい。来ないかと言われれば行くに決まってる。まずははなしを聞いてみることにした。


「ほいぷるたちはまほうしょうじょなの。」


魔法少女…?いつかは夢に見たあの?いたのか、この現実に。私は夢を見ていたのかと思った。ということはこの子は魔法少女の隣りにいるマスコット…


「でもほいぷるはまほうしょうじょをさがしてるの。そしつのあるにんげんをさがしてる。」


「魔法少女って何をするの?」


「ほいぷるたちにおそいかかってくる、なたらのつどいをたおすの。」


そんな敵聞いたことがなかった。ナタラの集い?どういうことだ?


「ほいぷるたちはみんながあんしんしてくらせるように、ひみつにしてたの。」


秘密…なんたる響きだろうか。私たちの平穏の裏に、魔法少女が動いているという事実がまず輝かしかったのに


「秘密…ねぇ、私を魔法少女にしてみてよ」


私もその世界に踏み入るなんて、我儘かな?


「かがみ!なたらのつどいをみつけちゃった!たおしにいこう!」


「おっけー、ほいぷる!変身しちゃおう!」


あの日以降私は魔法少女になった。


沢山の敵を倒してきた。どの敵もアニメに出てくるような敵で、大きいのもいれば小さいのもいる。陰湿なものも入れば、堂々とするものもいた。


私は砂糖の魔法使い。煌びやかな白砂糖のお化粧をして、黒砂糖の仮面をかぶる。変身ポーチは鋭いスピアに変わり、持つことでより美しさを際立たせた。


「そう言えば…ほいぷる。私達に仲間っているんだよね?」


今日もナタラの集いを倒してから変身を解いた。以前仲間がいると聞いていて、つい気になって聞いてみた。


「いる…たくさん。けど、ほいぷるはあわないほうがいいとおもう。」


ほいぷるは珍しく心配していたけど、私は会いに行きたい。ひとりぼっちだったから、沢山の友達を作りたい。


「ねえほいぷる。私は秘密を絶対に守るから、他の子達にも…会わせてくれない?」


毎日幾重にもお願いしてきた。今日まででもう30回はお願いしただろうか。それが響いたのか、拙いながら返事が返ってくる。


「いいけど……ぜったいないしょだよ?」


当たり前だ。



「しょうかいするね、このこが"みーてぃ"で、このこが"りんな"。」


びっくりした。1個下の学年の子も魔法少女になっていたなんて。みーてぃをみると、ほいぷるとは違い、がっしりとした大福?というべきか。溶けてはいないが、赤いボディに白の線が入っている。


「ほいぷるがまほうしょうじょにできるなんてしらなかったよ!」


「でもなれるいつざいみつけてくれてあんしんした!」


ほいぷるはどうやら照れているみたい、顔を俯かせていた。そんなんじゃ顔は見えないよ!


するとみーてぃが声を出す


「あ、なたらのつどいをかんち!りんな!いこう!」


「行きましょう!速攻叩きのめしてくれますわ!!」


そう言えば…この子達はどんな感じに変身するんだろ…気になっていてもなたらのつどいを見つけたからには私もいかねばならない。


変身ポーチを使い変身する。しかし、目の前に映ったのは、


手足が異様に長く、一部人の形を保てていない、ムカデのような見た目をした「りんな」だった。


絶句した。私は気が狂いそうになった。あれが魔法少女…??あれが?あれはなたらのつどいではないのか?しかし今日和っている暇はない。


「こっちにいるよ!先輩!ついてきて!」


顔が人間の可愛らしい顔なのに、体はムカデのように長く、手長足長様のようであった。器用に体を使い移動する彼女を見て、私もいかねばと思った。


足元に魔法陣を描く。これは跳躍魔法の一端に過ぎないが、きっとこれでどうにかなってくれるだろう。意を決して飛んだ。


正直、魔法少女は皆可愛いものだと思ってたのに。


あんなにも怖ろしい姿をしているのに、人々は戦う彼女をまるで普通の魔法少女を見るかのように応援している。


私も必死になって戦った。魔法を使う私に対して、彼女はほぼほぼ肉弾戦だ。敵のこぶしと彼女の長い手がぶつかる音がする。


刹那、彼女は敵を大きな体で押し潰してしまった。辺りには血なのか彼女の魔力なのか、赤くておどろおどろしいものが流れていた。


「倒せたね!魔法を使うって難しいな!」


やめて。その姿でこちらに来ないで。そう思ったがなんとかにへらと笑いを浮かべた。


使命を終えたのか、体が戻り、みーてぃと、りんなに分かれる。


「今日はありがとうございました先輩!良い学びでした!」


と言われたが正直このあとの会話を思い出せない。何返したっけ。余計なことしてないといいな。



「なたらのつどいをみつけちゃったよ!かがみ!いこう!」


魔法少女になってソロ活動を仕出した時、ふと思ったことがある。なんでナタラの集いの根本を叩きにいかないのだろうか。


根っこを抜けば、草が生えなくなるように、根っこを叩けば敵も現れなくなる気がするけど。


町中でみんなが愛する魔法少女に変身する。すっかりこの姿も「慣れ」がきた。嬉しい反面他の魔法少女に会いたくないという気持ちがあった。あったからダメだったのかもしれない。


撃ち抜かれる。

撃ち抜かれたのは腕だ。腕であればと思ったが…


私は今、体が砂糖でできていることを完全に忘れていた。


まずい、まずい…。自分の体が崩れて地面に落ちていく。止められない。触った先から落ちる。


まずい。いやだ。どうにかしてよほいぷる。助けて。死にたくない。


魔法少女がただの砂糖になっていく。

崩れた先から魔法の効果は薄れていく。最後に見たのはほいぷるが


「やっぱりまほうしょうじょのしかくはなかったんだね。」


といったところだった。

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