観えるってマジ? 重要参考赤狐様な開発系魔法使いのレセプション捜索ログ 魔法使いたちの//クロスロード ――ver.→D――
tp1 レセプションは二十(はち)時から ――The beginning of the daydreamer's story――
観えるってマジ? 重要参考赤狐様な開発系魔法使いのレセプション捜索ログ 魔法使いたちの//クロスロード ――ver.→D――
なぎねこ
tp1 レセプションは二十(はち)時から ――The beginning of the daydreamer's story――
聞こえますか、
訂正訂正! たった今ほかのも全部持ってかれちゃった。すみません。そんなわけで残りはスマホしかないけれど多分、
え、心配? 大丈夫だよ。マジでホントに。
……そりゃあ、予定よりはちょい遅れるかもしれないけど、まだ
それよかさ、今日ばかりは俺もちゃんとドレスコード守るから、アイツには『あとで会場でな』って伝えといて。頼むよ。いいでしょ? ありがとう、さっすが先生。
じゃあ、両手開けなきゃ作業に支障が出るからスマホはスピーカーにしとっけど、
◇
行け、隠れてろと命じた俺の心に沿うように、午後の明るい天気雨の中で燐光を纏っていた、流線型の
回線の向こうで、俺と同じように空飛ぶスマホを従わせているはずの、面倒くさがり屋の先生から、先ほど切り上げたばかりの会話を、あとでそのまま聞かされるに違いない小鳥の姿が、心に浮かんだ。
幼馴染の少女に要らぬ心配をさせないよう、余計なバッググラウンドノイズなしの音声だけが送られていることを、景色に溶け込ませた
一秒にも満たない時間で、いくつかのアプリとのやりとりを終えた俺は、
――EAP嫌いの
言葉にしてみれば、実に簡単な内容である。成年間近な
早鐘を打つ心臓を宥めるため、爆弾の前に立ちはだかっている奴――人殺しを
その証拠に、動き回って負った擦過傷はともかくとして、今のところ怪我ひとつ負わされていないじゃねーか。あの《狐》が飛ばす《鋏》相手に。
これはきっと、先生が言った通り、いや、それ以上に俺がきっちりEAPを使いこなして「読め」ているからに違いない。
とはいえ、このままここで息を潜め続けるのは、正直言ってちょっとしんどいな。
下手に動いて補助端の二の舞にされたくない俺と、俺の手数の多さに苛立っているに違いない女。
《
げ。
そう思って眉を寄せた瞬間に、俺を守ってくれているはずのステンレスパネル製の頑丈な水槽が、ぐわんと揺れた。
相手の余裕の乏しさを示す音とともに転がり込んできたチャンスに身を
……
ここがキリになるという、いつか習った先生の教えに従って、五
その勢いのままコンクリートの床を蹴り、更に加速する俺の目に飛び込んで来たのは、俺が
しまった、鋏にばっか気を取られて奴の動きを「読み」損ねた――? じゃなくて、目眩まし!
《狐》にしては珍しい守りの姿勢と、苦手意識のある視覚での「読み」を省きがちな俺の悪癖。揃い踏みになったその二つのせいで一瞬だけ真っ白になった頭に
焦りを見せた俺をせせら笑うように、枷――生来の魔法を練るために必要な時間という
喰らったらただで済むはずのない《鋏》を前に、強張る身体。身を守るために思わず翳しかけた両手を、俺はどうにか意志の力で引き戻す。
そうやって中途半端に立ち竦む俺の目の前で、《狐》は、抱えていたはずの危険きわまりない
挙式を終えた花嫁が放り投げるブーケにも似た放物線を描いて飛んでいった爆弾に向かう、真っ直ぐな
そこで初めて女の狙いに気付いた俺が、踵を返そうとした瞬間、ようやく姿を見せたスマホの放つ最大光量が、フードから晒された女の目を
「読み」で視覚を
俺達二人の頭上を仰ぎ見るEAPからリンク経由で送られた防眩処理済みの
爆ぜた光をまともに受けて戦闘不能に陥った女には目もくれず、俺は奴の魔法が爆弾に与えた決定的な影響――起爆時刻が、レセプションの出席者が集い始める午後五時ではなく時刻不詳に変わったこと。つまるところ、爆弾の暴走――が、招くに違いないたった一つの帰結を変えるため、水たまりを跳ね上げながらひた走る。
ずっと繋ぎ放しだったのスマホの先、俺が立つこの高級ホテルの屋上の十二階層下で、今夜のレセプション会場となるバンケットルームにいるはずの先生に、今すぐの避難を大声で呼びかけながら、すでに落下を終えていた爆弾のもとへ辿り着いた俺は、魔力をこめた指先で弾くように鋏が突き立てられたままの外装に触れた。
触覚を頼りに「読み」取った爆弾の内部構造の恐ろしいまでの緻密さと、EAPが叩き出してきた四十秒足らずの猶予にいよいよ総毛立つ。
ほんの少しの逡巡の末、爆弾をバラす選択肢を一旦頭から追い出した俺は、EAPと「読み」を組み合わせた総当たりによって、爆弾の正常な動作を阻む要因――《鋏》の解体を決意する。
そして、瞬くように過ぎた三十と七・五秒後。
先生と母さんにしたはずの約束をかなぐり捨てて、俺は生来の魔力でいっぱいにした手のひらと指先で、火傷するほどの熱を帯びたスマホをぎゅっと握りしめる。
あとはただ、ひたすらに
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