俺のバスケの先生は幽霊?裏バージョン俺は死んでいた女の子に恋をした
@kana_01
第1話 俺のバスケの先生は幽霊?
突然の短編です。夏の夜に向けて。バスケ詳しくないのでご配慮をお願いします。
―――――
小学校の時、ハンドボールをやっていた。中学の時、バスケをしたいと思ったけど、部員不足で去年廃部になっていた。
残っていたバスケ部の部員は全員三年生で今は居ないらしい。
仕方なく他の部活も回って見たけど、バスケ以上に入りたい部は無かった。だからといって俺はバスケのバの字も知らない。
ただ、バスケをしたかっただけ。何でしたいなんて理由も分からない。多分バスケに対する憧れなんだろう。
入学してから体育館の様子を見ても男女バレーの練習で体育館を全て使い切っていて、バスケのゴールは隅っこで寂しそうにしていた。
そんな時知ったのは、土曜日に体育館を一般人に開放していると噂だ。行って見ると実際に午後五時から午後九時まで解放され普段知らない人達がバレーを楽しんでいた。でも誰もバスケをしている人はいない。
俺は仕方なく体育館の用具倉庫に行ってバスケのボール少し空気が抜けている気がするがそれを持って、隅の方でドリブルの練習をしたり壁にぶつけて一人パスをしていた。
それが、四月、五月、六月、七月と続き、夜の体育館使用も慣れて来た時、気が付くともう誰も体育館の中には居なくなっていた。
「あれ、そんな時間だっけ。最後は先生が閉めに来るからそれまでやっているかな」
誰も居なくなった広いコートを好きにドリブルしたりゴールにボールを入れる真似をしたりしたけど、全然上手く行かない。
そもそも俺の身長は百七十センチを少し超えた位だ。とてもバスケ出来る身長ではない。でも好きだから。
バン、バン、バン。
あれ?音の方を見ると見た事のあるバスケのユニホームを着た背の高い男の人がドリブルしながらこっちに寄って来た。
「バスケが好きなのか?」
「はい。でもこの学校でバスケ部が無くて。仕方なく自分で練習しています」
「練習?そうか練習か。でもお前がやっているそれは練習ではない。玉遊びだ」
「そんな事言われてもバスケの事全然知らないし、誰も教えてくれないし」
「お前はバスケをどう思っている?」
「好き。それだけ」
「金を稼ごうとか。目立ちたいとか無いのか」
「そもそもこんな容姿じゃ、どうにもならないし、バスケで金を稼げるなんて、夢より遥か彼方の事だよ」
「お前はそうはなりたくないのか?」
「なりたいさ。うちは母子家庭だし、お母さんはこの時間でも仕事している。自分でいうのも恥ずかしいけど、俺を学校に通わせて貰っているだけでも贅沢と思っている」
「そうか。もう一度聞く。バスケで一流になって何億もの金を稼げるプレイヤーに成りたくないのか?」
「あははっ、身長もこんなに低いし、全くの素人の俺がそんなプレイヤーになれる訳無いじゃないか」
「夢は持たないのか?」
「夢?そんな贅沢出来る訳ないだろう」
俺は、それまで話をしていた男の人に背を向けてゴールにボールを投げた。入る訳ない。弾かれたボールを取りに行って振り向くと
「あれ、あの人どこ行ったんだ。さっきまでそこに居たんだけど」
「おい、いつまでここに居る」
「あっ、済みません」
当直の先生に怒られてしまった。でもあの人どこ行ったのかな。俺は自転車置き場に行って自分の自転車に乗るとそのまま学校を後にした。
それから一ヶ月近くその人は現れなかったけど、夏休みに入って少ししてまた、その人は現れた。いつも最後まで居る俺は、
「もう閉まりますよ」
「大丈夫だ。バスケをしたいのか?」
「はい」
「上手くなりたいか?」
「はい」
「教えてやってもいいが俺の事は誰も言わない約束が出来るか」
「俺もこんな遅くまで居るから言いませんけど」
「…そうか。では教えてやる」
それから、七月の終りと八月一杯の間。その人にバスケを教えて貰った。でも夏休み中の登校日にクラスの人が
「なあ、知っているか。体育館でお化けが出るんだって」
「そうか、昼間か朝か?」
「ばーか。お化けといったら夜に決まっているだろう」
「お前見たのか?」
「土曜日の夜に体育館でバレーをしている人が忘れ物を取りに行ったら、男の子が一人。いくつもの人魂に囲まれて走り回っているんだってよ」
「それ無理有り過ぎねえか。その人の作り話だろう。週末の体育館の解放は俺も知っているけど午後九時で終わりだし、当直の先生が戸締りしているんだぞ」
「それが、違うんだって。その話を聞いた人が、じゃあ俺が確かめてやるって言って、その噂を流した人と一緒に水曜日の夜、午後十時に体育館に行ったんだってよ。
そうしたら、やっぱり一人の男の子がいくつもの人魂に囲まれながらバスケの練習していたんだって」
「う、嘘だろう。今日眠れないじゃないか」
「夏のあれじゃないのか」
「「まさかぁー!」」
俺はそれを小耳にはさんだけど、こいつらはいつも人を馬鹿にしたり馬鹿な話をしているからいつもの事だと思って無視をした。だってその日は俺が体育館に居たから。
「祐也最近背が伸びるのが早くない」
「母さん、意味分からないよ。成長期だよ。いくらでも伸びるよ」
やがて、八月も終わる頃
「仕事で来れなくなる。もし、お前がまだバスケを覚えたいなら、また来年の七月に会おう」
「あの、七月と言っても…」
「それはお前が分かる事だ」
それ以来、週末に体育館に行ってもあの人は現れなくなった。
二学期になり
「祐也一ヶ月で随分背が伸びたな?」
「そうか。変わらないだろう」
「いやいや、どうみても十センチは伸びているぞ」
「あはは」
でも健康診断で百七十センチだった身長が百八十センチになっていた。たった一ヶ月で?
それから一年が経ち。七月も梅雨が明け、暑さがきつくなって来た時、いつもの様に最後まで体育館でドリブルの練習をしていると
「ほう、少しは上手くなったな」
声の方を向くとあの人が立っていた。
「うん、あれから自分なりに工夫して練習したんだ」
「そうか、練習を始めるぞ」
「はい」
その年の夏も八月が終わるまで毎日午後十一時近くまで練習した。お母さんが返って来るのは、零時近いから分からない。
「ねえ、祐也。去年の夏、背が伸びて止まったと思ったら、また伸びていない?」
「そうかな」
そういえばゴールが低くなった気がする。
秋の健康診断で
「はい、百九十センチよ。中学二年なのに。伸び盛りかな?」
「はい」
二年で二十センチか。育ち盛りだな。
次の年も七月から八月に掛けて男の人が現れて俺にバスケの練習をしてくれた。その年の秋は何処の高校に行くか決めないといけない。
でも母子家庭の俺は、当然公立高校だ。それも交通費の掛からない歩いて行けるか自転車で行ける距離だ。
近くに在る事はあるが、偏差値が低すぎる。四キロ先に都立の進学校があるのでそこを受験する事にした。自転車で充分に通える。
今年の健康診断で身長は二百センチになってしまった。お陰でお母さんが洋服代で悲鳴を上げている。毎年十センチ伸びたらそうなるよね。
俺はお母さんに謝ったけど、可愛い息子が大きくなるんだから嬉しいわと言って笑ってくれた。
そんな時、遂にこの学校もバスケ部が復活する事になった。出来れば一年早ければと思いながら話を聞いただけで教室に戻ろうとすると
「背が高いな。バスケに興味は無いか?」
「あります。でも三年生なので入部は無理です」
「そうか。でも遊ぶくらいは良いだろう。今日の放課後体育館に来い」
「はい」
放課後、体育館に行くと二十人以上の生徒が居た。俺に声を掛けた先生の他にも知らない背の高い人が数人いた。
ドリブルやパス、シュートの基本的なセンスを見ている様だ。俺に番になり言われた事をすると
「誰かに教わっていたのか?」
「いえ」
「そうか、おい」
「少年。ワンオンワンと知っているか?」
「聞いて知っています」
「そうか。簡単だが俺として見るか?」
「えっ、でも」
「いいから」
「はい」
俺の圧勝だった。相手の人が手を抜いてくれたんだろうか?俺がそんな事を思っていると
「お前、こいつが誰だか知らないのか?」
「はい、うちお金なくてラジオしかないんです」
「あははっ、聞いたか。世界選手権のレギュラーでUSチームのシューティングガードをゼロポイントにした奴が、ラジオしかないとは」
「失礼な事言わないで下さい。母は一生懸命仕事しているんです」
「済まない。この通りだ謝るよ。俺の家も同じだったからな」
「どうだ。俺達のチームに来ないか?」
「いえ、まだ中学生なので」
高校生になっても毎年七月、八月に体育館に男の人は現れた。高校三年の八月も終りの時
「上手になったな。これなら世界のどのチームでプレイしてもトッププレイヤーに成れる。お前程強いプレイヤーはこの地球にはいない。
今日までだ。世界で活躍する姿を楽しみにしているぞ」
「えっ?!」
その言葉と共にいつも一緒に居た五人の男の人達が一瞬で目の前から消えた。
そしておれを育ててくれた知らない男の人を知ったのは、卒業してUSのチームにスカウトされた時だった。
「あっ!」
「祐也。こいつを知っているのか?」
「はい、俺を中学一年かから育ててくれた人です」
「はは、冗談を言うな。この人はUSバスケの創始者でもう百年以上前に亡くなったジェームズ・ネイミスだ。バスケの帝王と呼ばれている」
俺の身長は今、二百二十センチだ。その人も同じ身長だ。
―――――
バスケットボールは全然知らないんですけど、夜中なの零時にいきなり頭に浮かび、その夜の内に書き上げた作品です。梅雨も明けたしもうすぐお盆ですね…。
面白かったとか、何だこれと思われた読者様、ご評価頂けると夜中なの執筆が浮かばれます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます