令和 姥捨て山

遠藤

第1話

20XX年

この国の少子高齢化問題は解決策を見出すことができず、いよいよどうすることもできない状況に陥っていた。

相変わらず子供を当たり前に産み育てることができない環境は変わっておらず、老人に無駄とも思えるほどの延命治療が施され、ベットに横たわるだけの”生きている”とは言い難い状態の老人が溢れかえっていた。

そんな老人達を支えるために、若者には思いやりという重税が両肩に重くのしかかり続けている。

こんな現状に、若者はこの国に希望を抱くことができず、海外へ出ていくものが増えていった。

やがて、この国に残る者の中に過激思想が蔓延していく。

老人が居なくなればこの国は蘇るとSNSを中心に広まっていった。

そんな中、その過激思想を掲げた党が発足されてしまった。

日本再生党と名乗る団体は猛烈な勢いで支持を得て、選挙で次々と当選し始めたのだった。

やがて日本再生党は弱小政党をも飲み込み衆議院で過半数の議席を獲得するまでに至り、ついには与党となってしまった。

党が掲げた公約はたった一つ。

それが「老人問題の完全解決」だ。

党首の伊佐美ケンゾウは言う。

「この国の全ての問題はこの老人問題にあると言っても過言ではない。老人問題解決無くして少子化問題もその他の問題も、さらには自立した国家になることも不可能である」と。


与党となった日本再生党の勢いは凄まじく、衆参のネジレなど糞くらえとばかりに、次々と法案を通していった。

やがてとんでもない法案が国会に提出されてしまった。

それは、何の役にも立たない老人を山に捨てるという姥捨てだった。


内容は

「65歳以上の寝たきりとなって回復の見込みがないモノを、自然の摂理に従い大地に還す」

というものだった。


国会のみならず、日本中を巻きこむ大論争が巻き起こった。

世界中が興味を持って日本を注視した。


過激すぎるとの声が多数だったが、それでも、どこか”いたしかたがない”との空気感が日本中に広がっていた。


党首の伊佐美ケンゾウは国会の演説で声を張り上げた。

「他に方法はありますか?現状を打開する方法があるのですか?もう一刻の猶予も許さない状況にまで追い込まれている。他国の若者を大量に受け入れたとしても、この国を救うことはできないだろう。皆さんはこの国を消すつもりですか?日本人を消すつもりですか?もう、どうすることもできないところまできてしまっているということをなぜ認めない?ごまかしはきかないんだ。見てみなさい!この国にとって最も大切な若者の命が毎日失われてしまっている。原因はなんですか?わかるでしょ?どこにあるんだ明るい未来は?こんな現状に、生きたいと思わせる希望はどこにある?迷っている時間なんてない!今決断できなければこの国は近い将来完全に終わる。そんな姿を一人の日本人として黙って見過ごすわけには絶対にいかない」


反論の声は小さく、政府は緊急事態宣言を発令、ついに姥捨て法が超法規的措置として施行されてしまうのだった。



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