火竜と氷竜の日常

@akki_0925

第1話 「出会い」

それは、その出会いはきっと必然だったのだろう。

そこに佇むは人により感情はとうに消えかけ、あの頃は無邪気に笑っていた青いロータスの花飾りを頭に付けた死にかけた氷の竜の少女…。

人間に協力的であり社交的、そして親切だった彼女は人に裏切られ…ありえもしない罪状をかけられてしまったのである。

それは、国家に逆らったという意味も分からない死刑宣告。

しかもそれは竜人であるだけで、だ。

彼女はすべてを諦めてしまったのだろうか、手を揺らせば視線や耳に入るじゃらじゃらと繋がれている手枷の鎖。

首に手を当てれば魔力や力を封じる首輪もついているため引き千切る事すら出来ない。

只々、死ぬ日々を待っていたそんなある日…。


今日はやけに静かだ、なぜだろう?と少女は重い鉄格子の先から周りを見渡す。

「看守が居ない…」

そう、いつもはいるであろうあの横暴な監視員が居ないのだ。

気味悪がるその雰囲気や静けさに不気味さを感じてしまった竜の少女は鉄格子を掴み黄昏れる。

どうせ、遅れているのだろうと腹を括っていれば数刻…。

何やら、今度は外が騒がしくなってきた…今度は何?と少女は振り返った。

ドカーンと鳴り響く爆発音、また遅れて響く大嫌いな人間たちの断末魔。

鉄格子の先にある重い扉が、爆発と煙とともに金属音を立てながら倒れる。

「探したぞ…お前だな?捕えられた竜姫フィルレインっていうのは…?」

煙からまだ姿が見えない…その先から声がして、彼女は久しぶりにその名前を呼ばれた。

しかし、一言意味が分からなかった…「竜姫?」とフィルレインは頭を傾げる。

「いいからまずは、こっから出るぞ…臭くてかまわねぇからな」

と、煙が風によってゆっくりと晴れればその姿が見え始めた。

自分とそう歳も変わらないであろう火竜の少女に無意識ではあるが口が開き「貴女は誰?名前は?」と問いかけていた。


「あたしか?あたしはエイナ」

来訪者のフードを身に纏い、剣を握り締めた火竜の少女はそう答えた。

「エイナ…そう、でも…」

彼女の名を呟くが、そっと己が首に手を宛がえば生憎この首輪があっては鉄格子を壊すことも大好きだった氷も使うこともできない。

「ちょっと離れてろよ…」と悲しげに暮れている彼女を見れば右手に持つ剣を下に下ろし左手を掲げれば放たれる弱々しい火竜のブレス。

それは、代々火竜の血族でもあり、末裔でもある侮蔑と呼ばれるものたちが得意とする最初に取得し死まで永遠を共にする初歩の魔術。

打ち破られたその鉄格子に呆気に取られているのも束の間「いきなり何を…」なんて呟いていれば、

「めそめそすんな、姫以前に竜だろうが…お前」と言いながらエイナはその首輪を叩き斬る。

先程、エイナが口にした「竜姫」という言葉がどうも引っ掛かる…だが、何故自分があんな意味の分からない罪状で閉じ込められていた理由もわかってきた、しかしその姫になったという心当たりはまるでない。

その意味を探って黙っていれば「なんだよ、今度はだんまりか?いいから出るぞ」とエイナはため息をつきながらに、

「これ、お前の槍だろ?受け取れよ」

と言われた彼女が持つ手の先には、刃の先に竜を象った長槍。

「ありがとう、エイナ…」と槍を握り、この日、この時彼女は柔らかく静かに笑った。




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