4-7.幽霊さんの住む温泉宿
“境界の儀”を終え、わたし達は再び車に乗り込んで揺らされていました。疲れた時の乗り物の揺れというのはとても心地が良いもので、わたしはウトウトしていました。加奈さんと沙奈枝さん、蛍さんはもう寝てしまったようです。
「っあ、そういえば……」
わたしは思い出して幽霊さんに話しかけます。
「温泉宿を開店しますけど、どんな名前にするんですか?」
幽霊さんはわたしを見つめるなり、ニヤニヤと笑みを浮かべていました。
「前に加奈が言っていた、いい案があるのよ」
「いい案……ですか?」
「えぇ、すぐに分かるわ」
そうこう話している内に、車は温泉宿に着きました。車の窓から見るに、温泉宿の電気は点けっぱなしで、窓から温泉宿の電気が漏れていました。
「お前、電気点けっぱなしで来たのか?」
「ただ点けっぱなしにしてる訳ないでしょ?」
幽霊さんは車を降ります。そんな幽霊さんを不思議そうな顔で見つめながら、お父さんも車を降りていきます。
「加奈さん、沙奈枝さん。蛍さんも着きましたよ」
わたしは3人を起こしてぞろぞろと車を降りていきます。幽霊さんとお父さんは……温泉宿の入り口で立ち止まって何かを見上げているみたいです。一体何を見ているのでしょう。
わたしは2人と同じように温泉宿の入り口の上を見上げます。
そこにはさっきまで無かった“看板”がありました。
「……幽霊さん、これを設置してたんですね」
「えぇ。いい出来でしょ? 名前は加奈の案よ」
幽霊さんは自慢げに腰に両手を当てていました。それから幽霊さんはわたし達の方に振り返ります。
「それじゃ、この私がここで宣言するわ! これより――!」
第1部 ―“幽霊さんの住む温泉宿”の開店― 完
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