3-12.発端
「そうもいかないって……一体どういうことよ」
幽霊の少女は突如現れた真琴に対して問いかける。その問いに対し真琴は当たり前のように答える。
『思い出してごらん。なぜあの廃墟に幽霊が集まっていたのか。ただあの化け物に呼び寄せられただけとでも? 違うね。何か強い“死”に引き寄せられたんだよ。その存在をここに“引きずり込む”ためにね』
「でもそんな人は私達の中には居ないわよ?」
『あぁ、“お前達”の中にはな。お前達は足掻いてその世界から出ようとするだろう。あぁ~あの部屋の隅で丸まってるアイツを除いてな』
「…………まさか」
その瞬間、廃墟が再び大きな地震で揺れ始める。
「またこの地震!」
『気を付けるんだ。あの化け物に気付かれたようだからな』
そう言い残すと真琴の姿は消えてしまった。
『~~~~~~~!!!』
廃墟内に響き渡る獣の咆哮。その咆哮を最後に――晃光、幽霊の少女、幽霊の男と屈強な幽霊は廃墟から姿を消した。
――一方、梢枝と加奈は。
「梢枝ちゃん……あれ……」
加奈さんが指を指した方。そこには一軒家が立っていました。住宅街に並んでいる他の家と殆ど変わらない一軒家。けれど一つだけ違う点があります。
――家の窓から光が漏れているのです。まるで誰かが住んでいるように。
「……行きましょう」
わたしは意を決して玄関の扉を開きます。
『……のね……かった?』
『……さん……かったよ……』
玄関の奥から誰かの声……話し声が聞こえてきます。わたしと加奈さんは顔を見合わせてゆっくりと家の奥へと入っていきます。
『そうなんだよ~……で……』
『また一緒に……ましょう……』
『もちろん! また一緒に暮らして、一緒に海とかに行こうよ!』
『えぇもちろん。あなたも良いわよね?』
『あぁ、お前が行きたいなら予定を作って行くとしよう』
「――!」
家の奥、リビングでは和やかな家族団らんの一場面が広がっていました。けれど、わたしはその中の一人に言葉を失ってしまいました。だってそこに座っているのはその家のお父さんとお母さんと思われる人と――。
「――沙奈枝さん?」
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