3-7.再び相まみえる怪異
「どうして……なんで、またここに……」
見慣れた玄関。見慣れたリビング。見慣れた部屋。玄関から見える範囲は綺麗だけれど、リビングとかの部屋に入ればごみ袋がそこら中に散らばっています。だから、思わず鼻を塞ぎたくなるような臭いが家中に広がっているんです。
そう、ここはわたしがよく知る場所。
わたしが住んでいた家。
『なんで……死んでもあんたの顔を見なきゃならねぇとか……』
「おかあ……さん……」
『お母さんだぁ? あんたの母親なんかどこにもいねぇよ!』
お母さんはリビングの机をバンと叩きます。やつれた姿で真っ黒な気を放ち、身体中から溢れる怒りや憎しみはあの時と同じです。わたしは思わず一歩後退り、服の裾をギュッと握りしめます。
『見えないモノが見えて触れられる子供なんて……誰があんたと関係を持ちたがる?』
トン、トンとお母さんの足音が近づいてきます。わたしは顔を右下に向けて、ただじっと暗い床を見つめます。
『あんたと関係を持ちたがるヤツなんてね……みんな自分のことしか考えてないヤツなんだよ』
お母さんの顔が俯いたわたしを覗き込むように近付きます。目はカッと開き正気の人間とは思えないような血走った眼をしています。わたしは後ろを向くようにしてお母さんから目を背けます。
『まさか、あんたはアイツらに家族と思ってもらってるって勘違いでもしてるの? バカだね……バカバカ。あんたは大バカ者だよ』
唾を吐くようにお母さんはわたしの目の前で大笑いします。
ギュッとわたしの腕をお母さんは掴みます。
『何であんたみたいなヤツが生きて、あたしがここにいんだよ。死んでんのはあんただろ?』
腕を掴む力が徐々に強くなっていきます。
『幽霊が見えて、幽霊に触れられて、誰からも必要とされない、道具としてしか見られない存在。あんた……とっくに死んでるだろ?』
「違う……晃光さんは……加奈さんは……沙奈枝さんは……」
『みんな、あんたを道具としか見てねぇよ! いい加減目を覚ませよ。何でたった一日出会っただけのヤツを養子に迎え入れんだよ。あんたに利用価値があるからに決まってんだろ?』
「違う……違う……」
『こっちに来い。あんたに相応しい死に場所に連れて行ってやる』
その声はわたしの耳元で冷たく囁かれました。
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