3-6.地の底

「う……ううぅん……」


 わたしは重い体を持ち上げます。さっきまで目の前には加奈さんが居て、沙奈枝さんがわたしの身体を抱えていたはずです。でも今は――。


「加奈さん! 沙奈枝さん!」


 …………。


 二人からの返事はありません。わたしは周囲を見渡します。そして周囲を見渡したわたしは思わず身体が固まってしまいます。


「な、何で……ここに……」


『あぁ~ったく……やってらんねぇ……あんなヤツの娘なんて……』


 わたしの目の前を声の主は通り過ぎていきます。


 ぼさぼさの髪によれたシャツを着たいかにも不潔そうな女性。顔のところどころにはメイクをした後がありますが、毎日落とさずに寝てしまっているんです。わたしはそれを誰よりも知っています。


 ここは――。


 ――わたしの家。





 ――一方、晃光と幽霊の少女は。


「一体どうなってんのよ……」


 晃光と幽霊の少女、そして正体不明の幽霊の男はあの廃墟で再び目を覚ました。が、幽霊の少女は窓の外を眺めるなり、言葉を漏らした。


 幽霊があちこちに蔓延る深夜。ただ蔓延るだけではない、彼らはそこに住んでいるのだ。


「どうやら俺たちはあの世に近付きすぎてしまったな」


『ホント、お前たちはとんでもない事をしでかしてくれたね』


 その声は晃光のものでも、少女のものでも、幽霊の男のものでもなかった。だが、晃光には嫌になるほど聞き覚えのある彼女の声だった。声のした方に三人が振り返ると、そこにはガタイのいい男の幽霊が発信器を持って立っていた。


『それで、これからどうするつもりだい?』


 夜空には一番星がキラキラと輝いていた。

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