第11話

藤堂は橋本隆二の死の謎を解くために、彼の関係者を一人ずつ洗い出し、詳細に調査することにした。以下はその主な関係者と調査結果である。


**1. 妻 美智子**


- **職業:** 専業主婦

- **調査結果:** 美智子は家族を第一に考える典型的な専業主婦であり、夫の仕事にはほとんど関与していなかった。彼女は事件当時、自宅にいたと証言しており、アリバイは確認済み。夫の将棋趣味については理解しており、時折一緒に将棋を楽しんでいた。


**2. 長男 翔太**


- **職業:** 大学生(経済学専攻)

- **調査結果:** 翔太は大学で経済学を学んでおり、父親の事業を引き継ぐつもりでいた。事件当時、友人と共に大学の図書館で勉強していたことが確認されている。父親の会社については一定の知識を持っているが、直接的な関与は少ない。


**3. 長女 優子**


- **職業:** 大学生(法学専攻)

- **調査結果:** 優子は法学を専攻しており、将来は弁護士を目指している。事件当時、大学の友人と一緒にいたと証言しており、アリバイは確定。家族の問題には比較的距離を置いているが、父親の仕事については興味を持っていた。


**4. 橋本建設株式会社の幹部**


- **副社長 佐藤 一郎**

- **職業:** 橋本建設株式会社の副社長

- **調査結果:** 佐藤は橋本の右腕として長年会社を支えてきた。事件当時、社内の会議に出席していたと主張しているが、社内での評判は二分されている。最近、橋本との間に意見の相違があったとの情報もある。


- **経理部長 田中 明**

- **職業:** 橋本建設株式会社の経理部長

- **調査結果:** 田中は橋本の信頼を受けて経理を担当していたが、最近会社の資金流出が問題となっており、その責任を追及されていた。事件当時、社内の資料整理をしていたと主張しているが、不明瞭な点が多い。


**5. 将棋クラブのメンバー**


- **クラブ会長 山本 健太**

- **職業:** 元学校教師

- **調査結果:** 山本は橋本と親しい友人であり、将棋クラブの会長を務めている。事件当時、クラブで橋本と対局していた。山本は橋本が何か重大な秘密を抱えていたことに気づいていたが、その詳細は知らないと証言している。


- **メンバー 鈴木 次郎*

- **職業:** 自営業(飲食店経営)

- **調査結果:** 鈴木は橋本の将棋仲間であり、彼の死にショックを受けている。事件当時、家族と共に店の営業をしていたと主張している。橋本との間に特別なトラブルはなかったと証言している。


**6. 首里の犯罪組織の関係者**


- **組織幹部 山童**

- **職業:** 不明(裏社会のフィクサー)

- **調査結果:** 山童は首里の犯罪組織の一員であり、橋本と何らかの取引をしていた可能性がある。彼は非常に狡猾であり、藤堂の調査に対しても一筋縄ではいかない存在。


**結論:**


藤堂はこれらの関係者の情報を元に、事件の真相に迫ろうとした。橋本の死の背景には、会社内の権力闘争や裏社会との関係が深く絡んでいることが徐々に明らかになってきた。特に、副社長の佐藤一郎と経理部長の田中明には疑惑があり、さらに山童との関係も調査の焦点となった。


藤堂はこれらの情報を元に、橋本隆二の死の真相を解明するため、さらなる証拠収集と関係者の尋問を進める決意を固めた。


 藤堂は関係者の調査を進める中で、新たな手がかりを得た。それは「悲報島」と呼ばれる場所だった。悲報島は首里市から離れた孤島であり、かつては刑務所として使用されていたが、現在は廃墟と化しているという。藤堂はこの島に何か重要な手がかりがあると感じ、調査に向かうことを決意した。


島に到着すると、藤堂はその不気味な雰囲気に圧倒された。廃墟の中を進むうちに、藤堂は古い将棋盤と駒が置かれた一室を見つけた。その盤面には「送りの手筋」が示されていた。「送りの手筋」は、相手の王を追い詰めるための重要な一手であり、まるで橋本が最後に対局した際の盤面を再現しているかのようだった。


藤堂は、この場所が橋本と山童の組織との取引現場であったことを確信した。送りの手筋は橋本が山童に対して何らかのメッセージを送るためのものだったのかもしれない。さらに調査を進めると、藤堂は古い帳簿やメモを発見し、それが橋本建設と山童の組織との不正な取引を示す証拠であることが分かった。


その証拠を手に入れた藤堂は、首里市に戻り、関係者を再び集めた。藤堂は橋本建設の副社長佐藤一郎と経理部長田中明に対して、これらの証拠を突きつけた。二人は初めは否定していたが、藤堂の執拗な追及と証拠の前に観念し、ついに真実を語り始めた。


佐藤と田中は、橋本が山童の組織と手を組んで不正な取引を行っていたことを認めた。しかし、橋本が突然取引をやめようとしたため、組織は橋本を排除することを決定し、佐藤と田中もそれに従わざるを得なかったという。彼らは橋本を裏切り、その結果、橋本は命を落とすことになったのだった。


藤堂はこの情報を警察に提供し、佐藤と田中は逮捕された。山童の組織も一斉捜査が行われ、多くのメンバーが検挙された。しかし、山童自身は姿を消しており、その行方は依然として不明だった。


藤堂は橋本の家族に真実を伝え、彼の死の背後にあった謎が解けたことを報告した。家族は深い悲しみの中にあったが、藤堂の努力に感謝し、少しでも心の平穏を取り戻そうとしていた。


事件は一応の解決を見たが、藤堂はまだ終わりではないと感じていた。山童の行方を追い続け、首里市の平和を取り戻すために、彼は新たな決意を胸に秘め、次の一手を考え始めた。

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