半日だけの王子様。

第1話：浅い恋心・・・憧れ。

2話完結です。

僕にはクラスに好きな女子がいる。

名前を「高坂 優奈（こうさか ゆうな）」って言う。

彼女のことは中学生の時からいいな〜って思っていた。

高校に入って想いはさらに強くなってますます好きになっていった。

だけど気持ちを伝えられないまま二年生になった。

浅い恋心・・・憧れ。

何も言えなくて心はただ風に吹かれるススキのようにわびしく揺れ動く。

優奈のことを思うと胸が苦しくて切なくて悲しくなる。

だけど優奈にも好きな男子がいたみたいで自分の気持ちを告白したらしい。

でも、その男子には他に好きな人がいて優奈はフラれた。

僕はたまたまその現場を見てしまったんだ。

ひとりになった彼女は泣いていた。

その彼女を見て、いてもたってもいられなくなった。

僕は後先考えず、衝動的に動いていた。

「あの・・・ごめん」

彼女はいきなりの僕を見て少し驚いて、すぐにほほに伝う涙をぬぐった。

「いきなりで、ごめんだけど・・・」

「吉岡くん・・・見てたの？」

「いや、たまたまだよ、悪く思わないで」

「あの・・・あのさ、まじで、こんな時にどうかと思うんだけど」

「空気読めないやつって思わないでほしいんだ」

「お願いがあるんだけど！！・・・いい？」

「なに？」

「半日でいいんだ・・・今日、僕と付き合ってくれないか？」

「少しの時間でいいんだ」

「つまんないと思ったら途中で帰ってくれてもいいから・・・」

「どうかな？」

僕は手を合わせた。

「吉岡くん・・・」

彼女は考えていた。

そして言った・・・。

「いいけど・・・どうせ暇だし・・・」

「もういいんだ、どうでも・・・」

「そんなことないから・・・」

「今日、授業が終わってからでいい少しだけ僕に時間をくれる？」

「いいよ」

「じゃ〜授業終わったら声かけるね・・・」

優奈は少しうなずいただけで僕に背中を向けて教室に帰って行った。

よかった・・・あんな状況だったから断られると思った。

きっと、優奈はフラれたことがショックで気持ち的にナーバスに

なってたから僕の誘いをオッケーしたのかもしれない。

悪く言うと、投げやりとかヤケクソってやつ？

たぶん普通に告白してたほうが「ごめんんさい」だったかもしれない。

でも、そんなことどうでもいいんだ・・・デートさえできたら・・・。

授業が終わると僕は優奈の席へ行って彼女を誘った。

もしかして心変わりしてるかと思ったけど彼女は素直に僕に応じてくれた。

少し離れて校門を出た。

とりあえず、彼女を連れてバスに乗って商店街へ。

まずは喉を潤すためにファーストフードでドリンクをふたりぶん買った。

「ほら、これ飲んで？・・・気分がスッキリするから」

彼女は黙って僕からドリンクを受け取って飲んだ。

「ほんと・・・あ〜美味しい・・・」

「よかった・・・喉が潤うと人って気分がよくなるんだ」

「うん・・・少し元気が出た」

「この先にゲームセンターがあるから少しだけ寄って行こう」

「嫌なら言ってね・・・無理強いはしないから」

「いいよ・・・気晴らしになりそうだから・・・」

で、僕と優奈はゲームセンターに入った。

まあ、今日いきなり優奈を誘ったから、それほどお金に余裕があったわけ

じゃないから羽目をはずさない程度に優奈と遊べたら。

このあと、ご飯も食べに行かなきゃいけないし・・・。

だから、ふたりで楽しめそうなクレーンゲームを選んだ。

僕はあまり得意じゃないけど優奈は以外と得意そうだった。

「あのね、私の家の近所にスーパーがあって、そのスーパーにもクレーンゲーム

があるの・・・」

「だから、お母さんとお買い物に行っ時、やってるから・・・」

「あ〜なるほどね」

それで上手いんだ。

彼女は大いに盛り上がって両手にぬいぐるみを抱えて嬉しそうにしていた。

ご飯を食べる前に、まだ少し時間があったからアニメイトやトイズに

入ったり見て回るだけにして時間を潰した。

僕の気のせいかもしれないけど優奈は少し気分がよくなってきているように

感じた。

最初に商店街に入った時より笑顔が増えていた。

時間はもう夕方・・・もうさほど僕に与えられた時間は残っていない。

今日だけの半日デート・・・たった一度のデート・・・明日にはお互い普通の

友達にもどってしまう。

そう思うと、ちょっとだけ切なさが込み上げて来た。

だめだ・・・僕がしっかりしないと・・・。

つづく。