第101話 久しぶりの革細工。
準備するべきものとはすなわち、鞍である。
当然モチの分は既にあるので今回作るのはゴマのものだ。
「うっし、綺麗になった」
木桶のふちに雑巾を掛けて腰を伸ばす。
しばらく使ってなかったから革細工作業台に埃が積もっていたので綺麗に拭き上げた。
作業内容は作業台の前でクラフトブックを開いて鞍を選択するだけだ。
しかしそれではあまりにも作業過ぎる。
そんなんじゃ心は豊かにならない。
作業ゲーって心を消費するからな……ちゃんとこういうところから大事にしていかないと愛着というのは湧かないものだ。
準備ができたらクラフトブックを開く。
「こういうちゃんとしたクラフトも久しぶりだな……どれ、現在のクラフトレベルでも見てみるか」
ページを捲り、一番最初のページを開く。
そこにはクラフトレベルが表示されている。
「最後に見た時は50くらいだったけど……」
現在のクラフトレベルは80だった。
大して上がっていない……。
というのも当たり前で、そもそもここ最近はクラフトができていなかった。
それでも80まで上がっているのは素晴らしいことだ。
水路や剣等のカスタムクラフトもできるようになったのもクラフトレベルが上がったお蔭だ。
解放ボーナスに関しても、このレベル帯まで来ると入手の間隔は広がっていく。
確か次のボーナス内容はアイテム素材のランダム入手だった気がする。
100で解放だからそれなりにレアな素材であるはずだ。
「早くレベルが上がるといいな……その為にはもっとクラフトしないとな」
その為にもまずは鞍から始めるとしよう。
革細工作業台のそばにいることで革細工クラフトのページが追加される。
そこを開くと色々な革細工が表示された。
簡単な物で言うと、革紐がある。
これはそのまま使える紐だ。
そして他のクラフト品の素材にもなる。
革を切っただけのものではあるが、これがなかなか丈夫で使いやすい。
その次に簡単なのが恐らく鞘だろう。
剣をクラフトしても鞘までは作れない。
だからこうして鞘を作る必要があるが、必要だからこそ制作レベルは低いし、素材も簡単だ。
クラフトレベルが上がったことで作る剣の形も増えたが、同時に鞘の形も増えている。
この間の旅から愛用しているククリナイフの鞘も、実はここで作った物だ。
こうして見るとすべてのクラフトは繋がっているのだと改めて思う。
その先の景色がどんなものか、今から楽しみだ。
「さて……」
ページを鞍のところまで捲る。
必要素材は革と革紐と鋲だ。
鋲は鉄を1つ消費するこで一気に20個作れる。
革細工には必要不可欠な物だから消費も早い。
時間がある時に大量に作っておくのがオススメだ。
「今手元にあるのは80個か……十分足りるな。とっとと作ってしまおう」
鞍を選択し、作成の項目を指先で叩く。
すると鞍の絵の前に残り作成時間が表示された。
「10分か……」
では10分間だけボーっとするとしよう。
丸椅子に腰を下ろし、腕を枕にしてみる。
この拠点から少し離れた東屋の下はとても静かで居心地が良い。
もちろん、賑やかなのも好きだ。
その賑やかさを、少し離れたところから眺めるのも心が満たされる。
ボケーっと眺めている景色というのは、普段の忙しい生活からでは見えないものを見せてくれる。
「ん……」
ウニが切り株テーブルで爪とぎしているのが見えた。
テーブルもそろそろだいぶ乾燥してきた頃だし、皮くらいならもう剥がれそう……あ、剥がれた。
ベリベリッと大きく剥がれた木の皮にウニが驚いて距離を置く。
しかしまた木の皮に爪を立てて剥がしにかかる。
気持ち良いくらいに剥がれていく木の皮。
それが楽しかったのか、何度か剥がすウニ。
しかし急にどこかへ駆けていってしまった。
どうしたんだろうと思いながら眺めていると、今度はキクラゲとクロミツを連れて戻ってきたのだ。
「あぁ、教えてあげてるのか……」
こんなに面白いものを独り占めする訳にはいかない、と。
ウニは崖下でモチに噛みついた子だ。
今思えばあれは父親と同時に兄弟も守ろうという勇気ある行動だったのだろうなと思う。
彼らは三つ子だが、きっとウニが一番お兄ちゃんなんだろうな……そんな気がする。
ウニに呼ばれた二人も加わり、みんなでベリベリと木の皮を剥がして散らかしていく。
作業スピードは3倍になり、あっという間に全部なくなってしまった。
面白いものがなくなってしまったと、立ち竦む三人。
その遊び散らかした後を、植林場の方から歩いてきたゴマが見つけた。
駆け寄り、何か怒っている様子だ。
どうやら壊したと思っているようだ。
キョロキョロと辺りを見回したゴマが俺を見つけ、そのまま三人を連れてこちらまで歩いてきた。
「ニャアン」
ゴマは『子供たちが壊してしまった。申し訳ない』と謝る。
ついてきたウニ達はしょんぼりした様子で俯いていた。
「大丈夫だよ。あれはそのうち全部剥がす予定だったから、むしろやってもらって助かったよ。ウニ、キクラゲ、クロミツ、ありがとうな?」
俺の言葉にウニ達が顔をあげ、ぱぁっと笑顔になった。
ピョンピョンとその場で跳ねて遊び始める。
困ったような顔をするゴマの頭を優しく撫でた。
「お前は気を張り過ぎだよ。もっと楽に、適当に暮らしてもらって構わないんだからな。気遣いは大事だけど、遣い過ぎたら疲れるぞ」
「……ニャアン」
「ん。ついでにこれを装備してみてくれ」
ちょうどクラフト時間が0分になり、ストック欄に鞍が表示された。
それを本から取り出し、慣れた手つきでゴマへと装着していく。
少しベルトを締めて調整して、無事に鞍はゴマに装着できた。
「もし何かあった時は助けてくれよ? 俺もいっぱい頑張るからさ」
「ニャアン」
「よし、じゃあちょっと乗せてくれ!」
伏せたゴマに跨り、鐙に爪先を通す。
ゆっくりと立ち上がったゴマがウニ達に大人しく待ってなさいと声を掛けて、走り出した。
あっという間にトップスピードにまで速度を上げ、一気に植林場を抜けてアルゴ草原まで走ってしまう。
「モチと同じくらい速いなぁ!」
「ニャアン」
「とっても凄いぞ! さすがゴマだ!」
自分を倒したモチと同じくらいの速さと言われて嬉しかったのか、草原を走り回るゴマ。
こうして何の理由もなく走り回ることも少なかったのだろう。
日が傾くまで走り回ったゴマは満足そうな、清々しい顔をしていた。
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