第57話 虹の謠
鉄道の線路を引いたような動きで、「前進を諦めない者」がいた。無双という言葉では言い表せない男。教団はチャリオットを前進させるも「立ちはだかる胸板は厚く、逞し過ぎた」もはや、「人ではなく動物、いや獣に近い」と思う。太い血管が強調された上腕二頭筋から三頭筋を上下に振る。狂気じみた無敵さを誇り、反論は却下し接近。
「すみません。筋肉ダルマが向かってくるのですが……」
「は? 何だ、あの男は? 誰か説明してくれ」
「はい、残念なお知らせです。手遅れかもしれませんが、もう突撃されます」
「暴走は止まることはない」チーターの脚力。サイの突破力。ゴリラの挑発力を彷彿とし、全てを薙ぎ払っていく。被害者が受けた衝突に対立できる訳がない。赤色の切れ端が照準を定めずに、散り散りとなり、ばら撒かれた。大勢の敵を乗せた牙城は崩れ、要塞が粉々になる。結果、走行不能となった。
「ぎゃあぁぁーーーー」
「お助けを」
「やれやれ、コイツは無理だ」
戦場で戦い抜いたバクの鍛えられた体。大きな傷1つもない「ゴツゴツした造形は見事」である。そこで積み上げた戦闘経験。「壊れない意思を込めた」圧倒的な力の差だ。咄嗟に目を閉じるも、網膜に焼き付いた「筋肉は忘れようがなかった」予想外の状況に陥った教団員は、判断に困る刹那、ぶつかる他ない。
「前進あるのみ!!」
「爆発しなさい」両隣には10匹の狼達が群れを成していた。協力的な狩猟に特化しており、大きな獲物を目指し、一心不乱に走る。統率された動きは社会的な性質、高度な表現行動などがそれを示している。舞台が整い、紗幕が破れる。狼はしばしば死や恐怖の対象とされる。畏れを届けるため、シルカの瞳を待ち続けた。
「うちを見なさい。チャクラムで生成されし、無限狼達よ」
刷り込まれた指示に従い、背後の主人を頼る。目を細め、水晶体が薄くなる。屈折された金色が
「馬が逃げる。誰か止めるんだ!」
「お助けを」
「痛い。何だ、この狼は? 爆発したのに生きているぞ」
「洗脳してあげる」人間の足は筋肉の性質、心肺機能を高める。ふくらはぎの筋肉が大きく発達し、時速が伸びる。肺の空気量を調整する。気管支が拡張され、呼吸が楽になる。エネルギー、睡眠、頭痛を取り除き、覚醒状態に近づく。そうして、疲れ知らずの体を作り上げた。
「私の言うことを聞きなさい! 馬よ、逃げ回りなさい!」
馬の頭には「走れ、走り続けるのよ」っという言葉に支配。呪縛は叫びとなり、暴動を引き起こした。馬は本質的には運搬に不向きである。なぜなら、「帰巣本能を優先する」からだ。直感を信じて、逃げ惑い、地響きと拘束を振り切る。生物本来の使命である「自由に生きたい」との願望や切望を達成するために。セーレは、能力の使い過ぎで、膝が折れるも力の行使を続けた。
「こらー、何処に行くんだ。勝手に行くな!」
「お助けを」
「…今度は爆発……だと? どうなってるんだ。おい! お前は、"お助け"をしか言えんのか!」
洗脳、爆発、暴走が循環する。「技名はバラバラだった」が、 3人の表情にも不思議と笑みが溢れた。屈強な男性は、強い精神と仲間を守る意思を曲げずに、ひたすら痕跡を探し求めた。太陽と月の両天秤にある女性達。お互いを助長しながら、身を寄せ合う。月が崩れそうになれば、太陽が生命の息吹を放つ。そうして「両者は成り立っている」のかもしれない。
「爆発の女王シルカ様、洗脳の女王セーレ様。御2人とも何と輝いておられるのだ。それにしても、あの筋肉ダルマは何者なんだ?」
「バクだよ―――――――――――――!!」
砕けたチャリオット。その様子を茫然と立ち尽くす者。やかましい程に筋肉を見せつけるバク。戦況は優勢だが、異様な雰囲気しかない。
「シルカ、バク! 最後は…わかってるよね。合わせてね」
突如、2人の頭の中に囁かれた声。セーレの赤い瞳は「無言の圧力で文句を言わせない」面構えだった。
「む…仕方ない……最後は合わせるか。(全く、英文に拘り過ぎなんだよな)」
「…うちも同意だね……(さっきの英文だよね。まぁ、いいか)」
「Manipulated explosive rampage!!!」
爆発と同時に、運搬車に積まれた飲み水の樽が転がった。余程嬉しかったのか、セーレは少しだけピョンピョンと跳ねる。バク、シルカは彼女の可愛いらしい我儘を許容した。
「ありがとう。嬉しいわ」
一方で、樽から流れ出る水滴は虹となり、教団員の声は
「長らくお待たせして申し訳御座いませんでした。セーレ様、私です。見えざる優勢思考のサーメスです。さぁ、ご一緒に教団へ参りましょう」
顔を
「しつこい! 自分勝手な妄想ばかり、迷惑よ。1人で勝手に教団へ帰りなさい!!」
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